第11話

「起きて、司! 朝よ!」

「はいはい」

ミクルの声がドアの外からする。

司は起きたままの姿で、ドアを開けた。


「何よ、まだ寝間着なの!? だらしないわね」

「今日は何だ?」

まくし立てるミクルの声に、ウンザリしながら司は答えた。

「今日から、司にも訓練があるのよ」

「そういうのは前日に言っておいてくれよ」

「悪かったわね!」

ミクルは全然悪気のない様子で言った。


「ちょっと待ってくれ、着替えるから」

「あ、これ、着替え。昨日渡すの、忘れてたわ」

ミクルはそう言って、司にチノパンとTシャツの様なものを渡した。

「あの、俺の着替え見たいの?」

「馬鹿じゃないの!?」

ミクルは司に向かって、怒鳴りつけるとドアをバタンと閉めた。


司は渡された服に着替えて、剣と盾を装備した。

服のサイズはぴったりだった。


「おまたせ」

「遅い!」

ミクルは司の格好を見て、呟いた。

「まあまあ、似合うじゃない」


「あ、ミクルさんに司さん、そろそろ朝のミーティング始まりますよ」

ユーリは鎧をまとっていた。

そういえばミクルも戦闘用のローブを身にまとっている。


「城では毎日、兵士の訓練が行われています」

ユーリが言った。

「司も参加することになったのよ」

ミクルが言葉を続けた。

「なんで俺まで」

司は一人で呟いた。


「司は一般兵と同じ訓練から始めるのよ」

「はいはい」

「はい、は一度だけ!」

「はい」

司はミクルの言葉に素直に従った。


王宮の広場に行くと、兵士達はもうすでに整列していた。

兵士達が格子状に並んでいる正面の真ん中が空いていた。

「ほら、あそこ、司の場所」

「え!? 一番目立つじゃないか!?」


「早くしたまえ! 新人君!」

騎士の総長、ラリーが司に声をかけた。

「はい!」

司は、空いている場所に駆けていった。


「私たちは、いつも通り一緒に戦いましょう」

「そうですね」

ミクルとユーリは目を合わせて頷いた。


司の受けた訓練は、地味なものだった。

腕立て伏せに、剣の打ち合い、スクワットなど基本的な体力の増強に当たるものだった。

それでも、毎日訓練している他の兵士達にはかなわなかった。

「どうした、新人? もうギブアップか!?」

「まだまだ大丈夫です」

司は何とか他の兵士達に追いつくことが出来た。


「よし、今日はここまで」

「ありがとうございました!」

午前中一杯体を動かした所為で、司は体中に痛みを感じていた。


「司、終わったわね」

「ミクル、ユーリ。二人は特別メニューなのか?」

「ええ、私たちにかなう者はいないから、二人で訓練することになっちゃうのよ」

ミクルはそう言うと両手を広げてため息をついた。


「ねえ、午後から東の丘に行かない?」

「ちょっと司さんには早いんじゃないですか?」

ミクルの提案にユーリが異をとなえた。

「東の丘?」

司が二人に尋ねると、ユーリが答えた。


「ミニドラゴンの巣があるんですよ」

ミクルも頷いている。

「ミニドラゴンね、面白いじゃん」


司は微笑んだ。

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