第12話 盾の騎士 ※
私の名はシェイル・エルバーン。歳は17。
エルバーン男爵家の三男にして、友を庇い愛を守る、誇り高き盾の騎士を目指す者だ。
私の家は代々、騎士の家系。
国のため、民のために忠義を尽くす誇り高き騎士になるため、幼き頃より教育を受けてきた。
努力が実り、防御力トップの成績でレイフォール魔導士学園を卒業。
高い能力が認められ、学園長様が直々に選び抜かれたエリート卒業生で構成される新パーティ「神童の集い」のメンバーに選ばれた。
騎士の道からは遠ざかるものの、「冒険者として世界を見て回ることは、必ず良い経験になる。学園長様の期待を裏切らぬよう心して任務を遂行しろ」と父上にも背中を押していただいた。
学園長オルター・バーセン様はかつての魔王を討ち果たした伝説の勇者パーティ「光の使者」の元メンバー。神に認められし、大魔道士オルターの名を知らない者はこの世界にはいない。
そんな英雄が作り上げたパーティだからこそ、「神童の集い」は勇者パーティの再来とまで評され、その存在は国内外に広く知れ渡っていた。
だからこそ、あの不祥事は国民の期待を大きく裏切る最悪な結果を招くことになる。
Sランク冒険者の能力偽装。
アミル・ウェイカーの追放は、国民に大きな動揺と失望を与えた。
「ロイド! 一体どういうこと⁉︎」
「な、なんの話だ⁉︎」
ここは神童の集い専用の事務室。
本来なら、どんな新しいクエストを引き受けるか検討するミーティングの時間なのだが。
今朝は女性メンバーの御二人が完全にお怒りモード。リーダーであるロイド様の机を叩き、詰問していてミーティングどころではない。
「アミル君が能力偽装だなんて、有り得ないでしょ⁉︎」
青い髪を揺らし、おっとりとした顔を曇らせているのは、子爵家の御令嬢レイシア・ハートン様。
知力に長け、さまざまな補助魔法、ひいては回復系魔法を得意とした白魔道士だが、旅の中で経験値を稼ぐなか、多岐に渡るスキルを習得し過ぎて今は万能職人となっている。学生の頃から博識で、よく難しい質問をしては教員の魔法使いたちを困らせるお人だった。
パーティ内で唯一の平民であるアミルを気遣い、よく声をかけていたのが印象的だ。
だからこそ今回の不祥事は到底受け入れられるものではないのだろう。いつも温和で、天資英明なレイシア様がここまでお怒りになられるのは、初めてのことだった。
「アミルの力は私が保証するから! 今すぐに王宮に掛け合って、処分を取り消してもらって!」
赤い髪をツインテールに結んだ小柄な女性が、伯爵家の御令嬢ミリアルディア・オートレード様。魔力に長け、攻撃魔法を巧みに操る黒魔道士だ。
幼い頃より社交会などでお会いしているが、好奇心旺盛でよく執事を泣かせていたのが印象的だ。
親しい者にはミリィ様と呼ばれていおり、私もご厚意に預かり、そう呼ばせて頂いている。
態度がハッキリと一つの方向にしか無い御方なので、よくキツイ人と勘違いされるが、彼女以上に仲間を想い、率先して前に出る黒魔道士はいない。
アミルに関しては以前、「アイツがいると安心して魔法が詠唱できるから楽なのよね」と仰っていたから、今回の追放は納得できないものがあるのだろう。
……ん? 私の評価?
当然、彼は優秀な援護要員だ。努力を怠らず、功績をひけらかす事は一切しない。誰かを助けても、それをさも当然と言わんばかりに振る舞い、私が感謝の意を伝えようとした時には、既に別の援護射撃を始めているような、騎士の精神を感じる男だと思っている。
Sランク冒険者となっても決して奢る事なく、平民としての立場を弁え、我々にも態度を低く保つ姿勢には好感が持てる。
今回の能力偽装の罪は、何かの手違いだと私は確信している。
「ねぇ! 聞いてるの⁉︎」
それにしても御二方。相手は公爵家の長男、些か話し方に配慮が足りないのでは無いだろうか。
「なんだ、またアイツの話か……。俺も話を聞いた時には驚いた。まさか能力を偽っていたとはな」
「だからそんなの有り得ないでしょ⁉︎ アミルの力は共に旅をして来た私たちが一番良く知ってるじゃない⁉︎」
「……はぁ。王宮の決定に逆らえるとは思えないが、お前が恋人に対して向けるような可愛い顔をして「お願い致します、ロイド様」と哀願できたら、掛け合ってやらないこともない」
「なっ⁉︎ 何言ってるのよ、こんな時に⁉︎」
「公爵家の長男でも、王宮に意見するのはそれなりにリスクがあるんだ。見返りがないとな」
「お、お願いします……」
「ん? 聞こえないぞ?」
「お、お願いします。ロイド様」
「……やれば出来るじゃないか」
ミリィ様はモジモジしながら哀願の声を出した。赤面した顔がいつもとのギャップを大きく感じさせる。
「アミルの件は俺が王宮に話す。だが、すぐに解決出来る話ではない。少し待て」
今回の手違いで、神童の集いは大きく信用を失った。何が原因で、誰の仕業なのか徹底的に調べなければならない。もしもそれが故意なら、尚のことだ。
王宮内の決定となると、王族の嫉妬か、はたまた陰謀の余波に飲み込まれたか。
どちらにせよ、公爵家以下の我々には立ち入ることの許されない領域の話だ。ここはロイド様の御威光にお任せするよりないが……。
「そんなことより、新しく遠距離攻撃を得意とした者を勧誘せねばなるまいな」
アミルの代わりが務まる者など居るはずも無いのにそんな事を言うロイド様は、やはりアミルを毛嫌いしているとしか考えられない。
ロイド様がどこまで本気で王宮内に掛け合ってくださるのか、些か不安ではある。
「はぁ⁉︎ なんでそうなるのよ!」
「アミル君の代わりなんて居るわけないじゃ無い!」
「だから、直ぐには解決できないって言ってるだろ? アイツが戻ってくるまでの間だけだ。それにもしかしたら、案外アイツよりも有能な奴も現れるかもしれないしな」
「ロイド様、まずは事態の把握と、アミルの安全を確保することが先決なのでは……」
「俺に意見するつもりか? シェイル……」
「い、いえ。滅相もございません。失礼いたしました」
この態度の違いよう。自分よりも身分の低いミリィ様とレイシア様が、敬語も使わずに詰め寄っても何一つ怒らないのに、私には殺意の目を向けてくる。
私が思うに、ロイド様はミリィ様とレイシア様に好意を抱いているような気がしてならない。
女性の御二方は、まるで気にも留めて無いようだが……。
「リストを用意した。由緒正しい、貴族たちばかり。さぁ、この中から使えそうな奴を選べ」
ご丁寧に資料まで用意しているあたり、最初から新しいメンバーを引き入れる気でいたのだろうな。
「選べって、もうほとんど他のパーティに入ってたり、別に就職している人たちばかりじゃない」
「俺が呼べば、誰だって喜んで来る。なんたって俺様は「神童の使い」のリーダー、公爵家の長男なんだからな! はっはっはっはっ!」
好きに呼んで、気に食わなければ簡単に追放するつもりなのだろうか。
職場やパーティから引き抜いた者が、元の居場所に戻れるのか、疑問しかない。
他人の人生に大きく関わる事だというのに、ロイド様は意にも介さず高笑いする。
なるべく無所属の人を選ぶのが得策だろう。当然、アミルよりも見劣りする者になるのだろうが。
果たして神童の集いはこれからどうなってしまうのだろう。
アミル、いま君はどこで何をしてるんだい?
無事であることを祈っているよ。
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