第7話
あれから二年経った。僕もそれなりのテクニックと経験を積んだ。桐原は少しだけ歳をとった。僕も少しだけ身長が伸びた。固定客が何人かいて月に十から十五人の人間と関係を持った。女性もいたし、男性もいた。僕のソレを挿入することもあったし僕のお尻に相手のソレを挿入することもあった。要するに、経験豊富な人間になった。
そんなある日、一件の新客の連絡があった。二年前のあの日渡してもらった携帯に連絡が入る。相手は男だった。正直なところ男を相手するのは嫌だった。でも歳をとるとどうしてもそっちの客が多くなってしまうことは避けられなかった。『光』である以上色男であり美青年でなければいけないのだ。それが僕の提供するサービスであり、僕の体そのものだった。
その日も黒光りのする車に乗せられ、近くのラブホテルに送迎された。そのラブホテルは僕の桐原が仕事場にしているところで、僕の仕事に関して理解を示してくれているオーナーが特別に使わせてくれているお店だった。
フロントを抜けオーナーに頭を下げる。事前の連絡で聞かされていた部屋番号のところに向かう。少し嫌な予感がした。オーナーの顔色があまり良くなかったのだ。こんな時はあまりいい客じゃない。薄汚くて、生活費の全てを風俗に充てるような人間のことが多かった。いつもと同じように男に挿入されるか僕が挿入するか。基本的には前者が多いけれど。そのような時ほど僕は乱暴に扱われていた。仕方ない。男だから。それもなんでもする非合法の。仕方ないさ、そんなことを思いながら、部屋に入ると、一人の薄汚い男性が立っていた。
僕は驚いた。
その男は、
父だった。
「お前がその『光』くんか?」と父はいった。僕であることに気づいていなかった。
「は、はい」僕は乾いた返事をする。
「なんだ、しけた顔しやがって」
父、父だったものはそう言ってそそくさとズボンを脱いだ。
「いやあ、今まで女を抱く事は多かったけど、男、しかも未成年の美青年っていうのを抱いてみるのも乙なもんかなぁと思って今回買って見たけどよ、愛想も悪けりゃさっさと服もぬがねぇようなクソガキだったなんてしけたもんだぜ」
そう言いながら僕の体に触ってきた。僕は咄嗟に
「やめて!」と声を上げた。
「何いってんだてめえ、俺は客だぞ、早く服脱げよ、そしてしゃぶれよ!ほら早くよ!」
父はそういって僕の肩を再度持った後、地面に跪かせた。
僕の顔の前に父の陰茎がくる。すでに勃起していて我慢汁をこぼしていた。
「ほら舐めろよ。クズが。それぐらいもできねぇのか」
父は僕の顔を持って無理矢理陰茎を咥えさせた。汗と性液の匂いが口中に広がる。風呂に入っていないのだろうか、恥垢が亀頭にこびりついていてえぐみが舌を駆け抜ける。
声にならない声を上げながら、僕は陰茎を吐き出そうとする。
「何してんだこのやろ、出そうとするんじゃねぇ!」そう言って父はさらに顔を押し付けて離さない。
喉奥にまで入った陰茎に耐えきれず嗚咽が漏れ出す。
「汚ねぇだろ、我慢しろこのアマ!」と父は罵声を浴びせかける。まるで昔の暴力を受けているような気分になった。
僕は、抵抗する気を失いされるがままになる。父は僕の口を使って腰を使い、そのまま射精した。父の精液が自分の喉を通り体内に流れ込んでいく。
惨めだった。失敗作を生み出した元を無理矢理飲まされている自分が惨めだった。こんなことをしている自分が惨めだった。自分が生きていていいのかもしれないって思ったことが間違いだった。
気がつけば、僕は泣いていた。それ気づいた父はまた声を荒げた。
「何泣いてんだよ!男だろうがよ。ほら客を満足させろよ。何してんだよ!」
幼少の頃の怒号を思い出す。僕の体は硬くなり、動かなくなる。
「おい、このアマ!仕事しろ!」
とうとう父は僕を殴った。下半身を露出させた父は男娼をしている息子を殴っていた。馬乗りになり殴り殴り、殴り続けた。僕の意識は少しずつ遠くなっていった。鼻から血が出て、口を切り、目が腫れ、何も見えなくなっていった。血の味だけが僕を意識づけていた。
何時間殴られ続けたのだろうか。僕は父の陰茎を自分の肛門で受け止めていた。父は猿のように腰を振っていた。肛門からブチュブチュと少し赤く染まった白い液体が溢れていた。何度も肛門で射精していたらしい。意識が戻ってくると同時に肛門に鋭い痛みが走った。
「痛い!」と僕は叫んだ。
「黙れ小僧!」父は叫び、僕を殴った。僕が逃げようと体を動かそうとすると父は腹部を殴る。何度も、何度も。僕は殴られ続けた。殴られ、肛門に射精され続けた。
この地獄から救ったのはオーナーだった。部屋の時間が過ぎたのになんの連絡もよこさないことを不審がったオーナーが部屋に入ったことで父の罪は暴かれた。その時の僕は顔面が腫れていて、口から泡を吹いていたらしい。父は僕の肛門からボコボコとこぼれる精液を見ながらタバコを吸いつつ自慰行為をしていたとのこと。オーナーが後から言うにはこの世の地獄だと思ったとのことだった。
オーナーは桐原との約束の中で、「何かあったら警察に連絡をする。店を守るためにも」と条件を出していたらしく、その惨劇が発見された三十分後には警察が駆けつけていた。
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