タイトル&あらすじから
「今日よりも昨日よりも」
「「だーれだっ?!」」
ぽかぽかと暖かな日曜日。
布団から出られないでいるお父さんの顔を小さな手がペタペタと抑えました。
「んー…?
誰だろう…?
この可愛いおてては…カナかな?テツかな?
……両方かぁーっ?!」
ガバァーっと、お父さんが身体を起こすと、小さな双子たちは黄色い歓声をあげて、駆け回ります。
仕事で疲れが溜まっていたお父さん。ですが、鈴のように転げ回る愉しげな二人に、自然と顔がほころびました。
陽射しが優しく降り注ぐお昼前。
ぶわぁっとカーテンがはためくと、優しい風が寝癖の頭をそよがせます。
「さぁ、早く着替えて!」
「今日は、動物園に行くんでしょっ!」
双子たちにステレオで窘められたお父さんは、寝ぼけ眼を擦り擦り、布団を片付け始めました。
「ご飯できたよー」
リビングから、美味しそうな香りが漂って来ます。
「「「はぁーい」」」
******************************
「おはよー!
あら、お父さんを起こしてきてくれたのね。
ありがと」
今日の朝ご飯はベーコンエッグに、あさりとチーズのお味噌汁。目玉焼きには可愛いプチトマトが添えてあります。
「えー!トマトやだー!」
「ふふふ、ひとつは食べてね」
食卓にお皿を並べるお母さんは、ぷっくり膨らんだカナの頬をつつきながら、笑いました。
すると、テツがカナに何やらこちょこちょ…。
二人は顔を見合わせてニッコリすると、
「「手洗ってきまーす!」」と駆けていきました。
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「あれ?今日はもうトマト食べちゃったの?」
お味噌汁をすすりながら、お父さんが尋ねます。
「うん!もうお姉さんだもん!」
「ホントー?
ほっぺの中に隠してるんじゃない?」
疑うお母さんに、大きなお口を開いて見せます。
「トマト大好きになったんだー」
というと、テツのお皿からもパッとトマトを掬って、口に放りこみました。
「あ、テツのまで取っちゃダメじゃない」
「ごめんなさーい!ごちそうさまー」
そう言うと、さっさとお皿を片づけて、駆けていきました。
「もう…。ごめんね、テツ。
トマト好きなのにね。お母さんの食べる?」
「んー…?ダイジョーブ!
ボクもごちそうさま!」
そう言って、キューッとミルクを飲むと、テツもカナを追いかけていきました。
ため息をついて苦笑いしているお母さんを見て、お父さんは首を傾げます。
「…お味噌汁、チーズを入れても美味しいね」
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「ゾウ大きかったぁ…!鼻からぴゅーってお水出してたね!」
「キリンも!キリンも大きかった!……大きくてちょっと怖かった…」
動物園から帰ってきた三木川一家。
双子たちはまだ興奮冷めやらぬ様子です。
「はいはい、帰ったら、すぐ手洗いうがい!」
「「はぁーい」」
競い合うように、洗面所へと駆けていきます。
「…そういえば、実家から和菓子を貰ってたなぁ。おやつに食べようか」
「「わぁーい」」
「飲み物はどうする?」
「コーラ!」「トマトジュース!」
「はーい。お母さんは?」
反応がないので、おや?とお父さんが振り返ると、お母さんは笑いを噛み殺して言いました。
「ふふふふ…。コーヒー入れてもらおうかな?」
双子がリビングに飛び込むと、おやつの準備はバッチリ!でも…。
「どうしたの?座らないの?」
二人とも席の前でウロウロしています。
「あら、動物園のゴリラの真似?
さっさと座らないとお母さんがもらっちゃうよー」
と、ニヤニヤ笑うお母さんに急かされて、席についたものの、二人ともコップをじぃっと見つめています。
「???
ちゃんと、コーラとトマトジュースだよ。
二人とも好きなものと嫌いなものが逆だもんね」
おっとり話すお父さんに、引き攣った笑みを向けると、二人揃ってコップに口をつけました。
そして、
「「うぇ〜〜…」」
大笑いするお母さんとびっくりするお父さん。
「あははは、この子たち入れ替わってるのよ」
「え?!…じゃあ、今日テツずっとスカート履いてたの?」
「ふふぅーん!可愛いでしょ!」
テツは立ち上がると、くるくる回ってポーズをにっこりポーズを決めました。
「たまにテツとカナ交代してるよ」
コーラのシュワシュワを愉しむカナは、座って足を揺らします。
「でも、嫌いなものを押し付けるために交代するのは、どうなんだろうねー」
と、最中を頬張りながら、顔をしかめるお母さん。
「嫌いなものだけじゃなくて、好きなものまで食べれなくなっちゃうかもね」
「「…ごめんなさい」」
ぱんっと、手を叩くとにっこり笑って言いました。
「じゃあ、コーラとトマトジュースおかわりする?
お父さん、私もコーヒーおかわり!」
そうこうしている内に、日が暮れます。外では、オケラの大合唱。
明日も良い日になりますように。
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