Breaking down

あおぞら

夜明け前の

 "夜が、明ける"


 それは、1日の始まりを表すものであり、ごく普通で当たり前のことだ。

 でも、僕は違う。

 僕の中での夜明けは、戦いの始まりを表すものだった。

 1日が始まる。

 その現実は、いつも僕に重くのしかかる。

 

 何故、戦いが始まるのか。

 それは、単に生きることが辛いからだ。

 僕は、周りのみんなみたいに頑張れない。

・朝早く起きること

・学校に行くこと

・授業を受けること

・塾や習い事に行くこと

 最近は、食事も思うようにできない。食べ進めていくと、ひどい吐き気に見舞われるからだ。

 どう頑張ろうとしてもそれは変わらない。

 いつも何かができなくなり、それを機に全部できなくなる時だってある。

 周りと違うと思われないように過ごすから、戦いでもあるのだ。

 そう、自分との戦い。周りとの戦い。

 僕は、みんなが乗ってる列車に乗れない。決められたレールを走る列車に。

 いつも線路の横を独りで歩いてる。

 どこまで続くかもわからない地面をただ踏みしめながら。

 列車に乗ってるみんなはと言うと、笑顔で話したり、時折、こっちを見て笑ってる。

 「あ、あいつは乗れなかったんだ」って。

 僕だって、選んでこうなったわけじゃない。気づいたら、ここにいたのだ。

 "みんなが乗っている列車に乗れない人生は非難される"

 その事実は、ただただ辛いものだった。

 僕はみんなみたいにただ頑張ることができない。どうしても、頑張る理由が見つからないのだ。

 それだけで、ここまで仲間外れにされる社会が怖い。

 頑張りたくても頑張れない。結果、甘えていると思われる。

 人生はつまらないのに、その上甘えてるとまで言われる。その後に、勉強しなよ、ちゃんと学校に行きなよ、ちゃんと起きなよ子供じゃないんだからって言葉を加えて。

 その度に、僕はただ、壊れていった。


 —そして、何も望まなくなっていった。


 

 今日の夜は、独りじゃなかった。似たように、朝が来るのが怖いって女の子がいた。

 彼女はさいかと名乗った。一個下の、小説が好きな女の子。

 くだらないような、でも、密度の濃いような時間を過ごした。楽しかった。

 初めて話したのに、僕は彼女のことを人として、少しだけ好きになった。

 でも、それと同時に思った。何かを望んでも、辛いだけだって。



 どんな日だって、容赦なく明けて、次の日がやってくる。

 どんなに嬉しいことがあっても、地獄のように辛い日でも、何事もなかったかのように次の日は来る。

 それは、たまには希望の朝でもあり、地獄の始まりでもある。最近は、ずっと地獄のようだった。

 明日なんて、来なければいい。

 そう願ってもう何日が経つかもわからない。

 幸せが欲しい。そうすれば、きっと、今よりも楽しい日々を送れるだろう。

 幸せがなんなのかとか、そう言った感情の大半はもう失ってしまったけど、見つけて手にしてみたい。

 いつかは、失われるのだけど。

 そんなことを考えながら、また僕は、朝を迎えた。



 さあ、今日も戦いの始まりだ。

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Breaking down あおぞら @bluesky0308

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