魔王さまは二周目です ~史上最強魔王の復讐劇~

パインアメ🍍

プロローグ 謀反

第1話 燃える魔王城

「まさか、この俺がこんな最期を迎えることになるとはな……」

燃え盛る業火に包まれる魔王城の中、真っ赤な血をダラダラと流しながら、男は皮肉げにそう呟いた。

男の前には、かつての部下が不敵な笑みを浮かべて立っている。


男は、この魔王城の主。つまりは、『魔王』である。『魔王』とは、端的に言えば魔族最強の者を指す言葉であり、その地位に座るには、純粋な戦闘力は勿論、優れた知性、そして魔族をまとめ率いる統率力や、部下から信頼されるためのカリスマ性が必要となる。


そして、今代の魔王『ガトレス』はそれらの力が全て備わった史上最高の魔王であった。

万を超える人間と、人族最強の力を持った勇者を殺して長きに渡って続いていた人族と魔族の戦争を一人で終わらせ、世に恐怖と安寧をもたらしたのだ。


だが、そんな最強の魔王も今回ばかりは成す術なしだった。なぜなら、相手が魔王の力と戦闘スタイルを知り尽くしているからだ。

 

今回、魔王への謀反を企てた『ギーラ』という男は、元々魔王の側近であり、一万を超える魔王の部下の中で誰よりも魔王の事を知る人物だった。

数えきれぬほどの月日を共に過ごし、魔王の能力は勿論、性格や特徴まで知り尽くしていた。


 そして何より、ギーラは周到で完璧主義な男であった。戦いにおいて、予め万全の準備を整え、その上で油断をせず、本気で勝ちに行くのがギーラのスタイルだった。


勿論、今回の謀反がここまで上手くいったのも、そんな入念な準備があってのものだ。城には事前に魔王を弱体化させる為の結界が張られており、魔王は本来の百分の一の力も出せなくなっている。更に、城は四方八方を五百を超える魔族の戦士に囲まれており、逃げ道もない。


そんな絶体絶命の状況の中で、魔王ガトレスは「ふぅ」と短く息を吐くと、瞼をゆっくりと閉じて、左手に持つ短剣でグサリと自分の心臓を抉り……

ーー瞬間、ガトレスの胸から鮮血が吹き上がりガトレスの意識は闇へと消えていった。



******

血のように真っ赤な月に照らされる中、胸から大量の血を流し、仰向けに倒れた元魔王の死体を見下ろして、新たなる魔王は静かに憫笑した。

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