第6話 成長
最初のピアノのレッスンを受けてから一週間がたった。
俺は無事入学式を終え晴れて小学一年生となり、充実した日々を送っている。
そして、今日は二回目のレッスンの日だ。
あの日、俺が先生に天才だとか言われているのを一緒に聞いていた母は大層喜んで、数日後にはアップライトピアノを買ってくれた。
そのおかげで俺は、学校以外のほとんど全ての時間をピアノにあてることができ、ステータスもかなり上昇した。
そして、今のステータスがこちらだ。
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佐藤蒼 6歳 男
職業 : ピアニスト
STR (体の強さ) : 10
DEX (器用さ) : 15 (5 up)
VIT (持久力) : 10
AGI (敏捷性) :10
INT (知力) : 12 (2 up)
LUK(運) : 10
CHA(魅力) : 99
スキル : 才能 努力 根性 超絶技巧(new)耳コピ(new)音感(new) 譜読み(new)
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基礎ステータスもアップしたし、スキルも二つも増えた。
基礎ステータスについては、正直他の人のを見たわけではないから、高いのか低いのかは分からない。
しかし、新たにゲットしたスキルはかなり使える。
まず、この前大活躍だった<超絶技巧>は名前の通りピアノの技術面を大幅にアップさせてくれるスキルだ。
<耳コピ>は一度聞いた音をピアノで同じように表現できる能力だ。
これの凄いところは、コピーするのがピアノの音だけではないと言うことだ。
例えば、歌であったり、機械音だったりと、ピアノの中に存在する音だったらなんでもピアノでコピーできる。
<音感>は音感が良くなると言うスキルだった。
今のところはあまり良さが分からないスキルだ。
最後の<譜読み>はかなり欲しかったスキルである。
これがあれば、楽譜を読むことが出来るので、自分でいろんな曲を弾くことができる。
こんな感じで色々良いスキルが手に入り、気分良くピアノ教室に向かっている。
そして、教室に着くと早速レッスンが始まった。
「えーと、今日は楽譜の読み方を中心にやっていきます。前回のレッスンで、蒼くんの技術レベルは物凄く高いと言うことがわかったけど、楽譜は読めてなかったからね。」
「あの、楽譜だったらもう読める様になりましたよ。」
「えー!嘘でしょ!、前回のレッスンからまだ一週間しか経ってないじゃない! じゃあ試しにこれを弾いてみて。」
そう言って、先生が出して来た楽譜は、アラベスクだった。
この曲は有名でピアノをやったことがなくても、一度ぐらいは聞いたことがあるぐらいの名曲だ。
確かに、譜読みが出来れば、初見でも弾けるかもしれないと思い俺は、ゆっくり楽譜を読むことなくいきなり弾き始めた。
このアラベスクは、よく小学生低学年で弾くことが多いがその時、インテンポ(本来の速さ)で弾かれることはほとんどない。
インテンポで弾くとそれなりの難易度になるからだ。
しかし俺は、わざとインテンポで弾き始めた。
それには、先生も驚いていた。
そして、危なげなく全部を弾き終えたところで、また脳内に無機質な声が響いた。
【スキル<初見弾き>を取得しました。】
お!また新しいスキルが手に入った。
名前からして、多分、初めて見る楽譜でも弾きこなせるようになるスキルだろう。
これも中々良いスキルだ。
今のアラベスクは有名だったから、ある程度リズムとかがわかっていたから初見で弾けたが、全く知らない曲だったら今の様にはいかなかっただろう。
しかし、これからはこのスキルのおかげで、なんでも初見で弾けるようになったのだ。
そんなことを考えていたら、先生の大きなため息が聞こえた。
「はぁ、あなたが私の常識が通用しない人だと言うことを忘れていたわ。これで今日教えることが無くなってしまったわ。」
そう言って先生はまた考え込んでしまった。
「あの先生、一つ教えて欲しいことがあるのですけど良いですか?」
そう俺が言うと先生は嬉しそうに答えた。
「いいよ! 私に教えられることだったら何でも教えてあげる。」
「ありがとうございます。」
「それで教えて欲しいことって?」
「それは表現力を身につける方法です。」
「ああ、なるほど、確かに蒼くんは素晴らしい技術を持っているけど、表現はまだまだだったわね。」
そう言った先生の顔には明らかに安堵の色が見えた。
「正直に言うと私、蒼くんにほとんど指導らしい指導ができていないから、先生から教わることなんて無いって蒼くんに言われたらどうしようって今考えてたの。」
「そうだったんですか、でも、まだ先生には教わりたいことが沢山ありますから。」
「本当に!それじゃあ、私も張り切って教えていくわ。なんたってこんな天才に教えられる機会なんてほとんどないからね。そして、テレビとかで天才美少年ピアニストの恩師として取材されるのが私の夢なんだ。」
「そうなんですか、じゃあ、テレビとかに特集されるほど有名になれる様に頑張ります。」
「そうだ!良いこと思いついた。」
そう言って、先生は俺に一枚の紙を渡してきた。
「こんなことすると、私のポリシーに反しちゃうんだけど、蒼くんが良ければ、コンクールに出てみない?」
先生がもって来た紙は、コンクールの申込書だった。
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