ミスドへ行こう(3)

 どこの世の中に曲がり角でウサギとぶつかるなんて話があるのか――。

 何だこの展開、何言ってんだこいつ……と思うかもしれないけど、文字通り俺はウサギとぶつかったのだ。そう、ぶつかってしまったものはぶつかってしまったのだ。もちろん、何度も目を擦った。最初は転んだせいでどこか頭をぶつけて幻覚を見たのかと思ったのだが、その変なウサギと会話が成立してしまった以上、どうやら幻覚でも妄想でもないらしい。それともやっぱり俺は頭の打ちどころが悪くておかしくなってしまったのか……。

 

 とにもかくにも、いま俺の前には身長60センチほどのウサギが確かに立っていた。


「いてててて、ワリーな兄ちゃん、俺もちいとばかし急いでたもんだからよ。怪我はねーか?」


 俺は痛さよりも何よりも、目の前のウサギに面食らって固まってしまう。


「あっ、い、いえ……」

「それなら良かった。つーか、まさか人間とぶつかるとは俺もしくじっちまったな……。さて、どうしたもんやら……」

 

 なんかブツブツ言っているウサギはただのウサギではない。どこをどう見ても白いフワフワなウサちゃんではなく、日焼けしたかのような小麦色の毛をしたウサギで、なぜか燕尾服にズボンは腰パンでダボダボにだらしなく履き、赤・黄・緑のラスターカラーでレゲエを彷彿とさせるニット帽を被っていた。暑くないのか? 首からぶら下げた顔と同じぐらい大きな金の懐中時計が印象的で、何より驚いたのは二足で立っていることだ。何なんだこの爆裂な生き物は!? 俺の思考回路はショート寸前である。いますぐ会いたいよ……。誰に?


「おーい、兄ちゃん名前は?」レゲエウサギは日本語で俺に話しかける。

「え? えーっと、有栖川です?」

 

 咄嗟に聞かれたからついつい本名を答えてしまった。こういう時ってやっぱり偽名とかで答えたほうが良かったのかな……。あとで変な事件とかに巻き込まれないよね? つーか、そもそも今すでに変なことに巻き込まれてますけど……。

 俺はトホホ……ツイてないなあ……なんて思いながらレゲエウサギに恐るおそる問いかける。日本語通じる……よね?


「そういうあなたは何なんですか?」

「おいおい、人に質問するのに何なんですかはねーだろ、失礼じゃねーか」

「すいません……。今ちょっと目の前の出来事に頭がついていけてなくて……」

 

 そもそもあなた人じゃないですやん! ウサギですやん!! 服着てますし、小麦色だし、なんつーか、もうピーターラビットですやん!!


 とりあえず心のなかでツッコミを入れておく。


「まったく、最近のガキは礼儀もなってねーのか」


 いや、まぁ俺も言い方は悪かったけども、あなたも十分おかしいですよ。しゃべるウサギて。


「まあ、これも何かの縁だ。俺は見ての通りウサギだ」

「……」

「……」

「…………」

「なんだ?」


 いや! 見たら分かるし!! 誰がどう見てもウサギ以外には見ないだろ。


「なんだ、そんなことは見たら分かるって顔だな」


 俺そんな顔してる!? どんな顔だろう。


「ねえ」


 というか、俺が知りたいのはウサギかどうかじゃなくて、なんで喋れるのか、なんで服を着ているのか、なんで二足歩行なのかってところなんですけど……。


「おーい」


 しかし、レゲエなウサギってのもなかなかお目にかかれないよな。物語上で出てくるウサギって、大概、貴族的な衣装をまとった白いウサギとか、可愛い系とか、ゆるふわ愛され系とか、品の良さそうな感じなんだけど、俺の目の前にいるウサギは完全にそれとは逆だよな。スマートというよりはイカツイ感じだ。


「ちょっと! 有栖川君!? 大丈夫?」


 呼ばれた声のほうを振り返ると、心配そうな顔をした鍵山さんがそこにいた。そういえば、目の前にいるレゲエウサギのせいで鍵山さんの存在をすっかり忘れてた。申し訳ないことしたな……。

 ……って! そういえば、鍵山さんはこのウサギをどう思ってるだろう!? それを聞けば早いじゃん!! もう! 鍵山さんってばもっと早く声を掛けてよ!!


「ああ、ごめんごめん! この変なウサギと急にぶつかっちゃって!」


「おい、変なウサギってのは俺のことか!? おめえ初対面のくせに随分偉そうなこと言うな。俺が下手に出てりゃあいい気になりやがって。やんのかコラ」

 

 レゲエウサギがドスを効かせて凄んできた……。


「いや、やりませんよ。俺が悪かったですよ。口が悪くてすみません……ってそうじゃなくて。鍵山さん、このウサギ一体何だと思う?」


 俺の問いかけに鍵山さんが難しい顔をする。


「ちょっと有栖川君、本当に大丈夫? 角を曲がったと思ったらいきなり転んだからビックリしちゃったけど、どこか頭とか打ってない? 病院とか行かなくて平気?」

「いや、そんな大げさだよ。大丈夫、ぶつかったって言ってもウサギだし、それにちょっと尻もちついただけだし」

「というか、私には全然分からないのだけれど、さっきから有栖川君のいうウサギっていうのは何なの? 何かのネタ? それとも私をからかってるの?」


 あれ?


「いやいや、ん? 鍵山さん何言ってるの?」

「それは有栖川君でしょ? ウサギがどうかしたの?」


 何かがおかしい……。会話がうまく噛み合っていない。


「いや、だからここにいる褐色のレゲエウサギだよ。ニット帽にダボダボの燕尾服着たウサギがいるだろ?」


 俺は少し焦る。いや、かなり焦る……まさかと思ってしまう……。


「有栖川君? 何かの冗談だったら理解できなくてごめんなんさいね。でも、ふざけてるならやめてくれない? 私、冗談とか嫌いじゃないけど人をからかうようなのは嫌いよ? 私にはそんな奇天烈なウサギの姿どこにも見えないわ。これは有栖川君の妄想?」


 鍵山さんの言葉に、心臓の鼓動が早くなる。これはなんだ? 夢か? 妄想なのか? 現実なのか? 目の前にいるウサギはどうやら鍵山さんには見えていないらしい。待て待て待て待て。そんなことってあるのか? 俺だけに見える? おかしいだろ。何かの病気か? 妄想が見えてしまう病気かなにか?


「有栖川君、顔色悪いみたいだけど大丈夫? あんまり無理させても悪いし、今日はもう帰りましょうか?」

「い、いや大丈夫だよ。ち、ちょっと待って」


 とにかく、冷静にならなければ! 俺は鍵山さんに動揺しながらも少し待ってもらうように伝えて呼吸を整える。


「はー、ふー、はー、ふー」とりあえず深呼吸だ。俺は目一杯手を広げて息を吸って吐くを繰り返す。

「何やってるの?」いきなり深呼吸を始めたので、当然、鍵山さんに突っ込まれる。

「大丈夫だからちょっと待ってて!」

「さっきから大丈夫大丈夫って何が大丈夫なのよ? 有栖川君なんだかいきなり変よ?」

「大丈夫なものは大丈夫だから。いや全然大丈夫じゃないんだけど、とりあえず大丈夫って言っとく。ちょっと状況を整理したいから申し訳ないけど本当にちょっとだけ待ってて」

「なんだかよく分からないけど分かったわ」

「すまんね」そう言って俺はレゲエウサギに向き直る。

「話は終わったかい?」ニヤついた顔を浮かべながらレゲエウサギは言った。

「ああ、待っててくれたんですか」

「敬語なんか堅苦しいから使わなくていい。なに、俺もちょいとおめえに話があるからちょうど良いんだ」

「話?」

「その前に何か聞きたいこととかあるんだろ? 言ってみろ、何でも答えてやるよ」


 そう言ってレゲエウサギは燕尾服の内ポケットに手を入れると、中からタバコらしきものとライターを取り出し、おもむろに火をつけた。ウサギがタバコを吸うとか最低な絵面だな……。


「じゃあお言葉に甘えてタメ語で……。何でいきなりそんなこと言うんだ?」

「まあ、俺だって自分の身なりとか見て、人間たちに見られたらマズイような出で立ちなのは理解してるからな、それに二足歩行で人間の言語なんて喋ってたらいよいよ人間たちが自分自身を疑い始めちまうだろ? “俺は、私は頭がおかしくなってしまったのか?”ってな」

「なんだ、自分の存在が特異だってのは理解してるのか?」

「伊達にウサギやってねえからな」

「伊達にウサギってなんだよ、何年もウサギやってとかじゃなくて?」

「伊達に何年もウサギやってねえからな!」

「わざわざ言い直さなくていいよ」

「いちいちうるせえ兄ちゃんだな」

そう言ってレゲエウサギは俺の顔にタバコの煙を吐きかけた。

「ウエッ! ゴホッ! ゴホッ!! おいふざけんな! 人間虐待だぞ!!」

「何が人間虐待だ、人間のほうがさんざん動物虐待してるくせに」


 まあ、それはごもっともだが、別に俺は動物なんて虐待したこともないし、そもそもペットすらも飼ったことがないので、虐待なんて生まれてこのかたしたことがないのだ。


「ねえ、有栖川君まだ? というか、一人でブツブツ喋ってて正直ちょっと気持ち悪いんだけど……」


 しまった、話が脱線してしまっている。鍵山さんには俺が一人でしゃべってるように見えるんだった……。

「ごめん! このことも後でちゃんと説明するから今はちょっと何も言わずに待ってて、本当にすぐ終わるから!」

「分かったわよ。本当に変な人ね」


 そう言いながら、俺の位置を確認するとレゲエウサギがいるほうを向いて話し始めた。


「おーい、ここに誰かいらっしゃるんですか~? 透明人間さんですか~? それとも有栖川君の妄想さんですか~?」

「鍵山さん本当にごめん。俺の隣でやり取りを見てるだけでいいからちょっと待ってて! 変な光景だと思うけど、本当にすぐ終わるから!」

「もう! 何なのよ! ちゃんと後で説明してよね?」

「分かりました。すべて話します。なんでも話しますから」

「ついでにミスドおごりね」

「なんで!?」

「こんなところで道草食わされたバツよ。しかもいきなりひとりでブツブツ話し始めてワケ分からないし」

「ちぇっ……分かりましたよ。フレンチクルーラーでもポンデリングでもお望みならDポップでも何でもおごりますよ」

「やった♪ じゃあ早く終わらせてね」

「はいはい……」


 俺はポケットの財布を擦りながらしょぼくれて返事をする。正直おごりは痛い……。

 そうして、レゲエウサギに向き直る。なんとなく鍵山さんのおかげで少しだけ落ち着けた。


「脱線して悪かった。まあ、そもそもの話、単刀直入に文字通り、君は何者なんだ?」

「いや、だからウサギだってさっき言ったろ」

「いや、だからそんなの見たら分かるよ。 何で二足歩行で日本語喋ってそんな格好なんだってこと」

「なんだ、はじめからそう言えよ」

「そう言ってるだろ!」

「いちいちうるせえなあ、そんなんじゃモテねぇぞ少年よ。青春は待っちゃあくれねえ」

「余計なお世話だ。何が青春だ」

「まったくピーピーよお。少しは落ち着けって。そんながっついてたら青春は逃げちまうぞ?」

「がっついてないし! そもそもなんで初対面のウサギに青春だのモテだの言われなきゃいけないのさ! 青春時代をどう過ごそうが君には関係ないだろ?」


 頭に血が上る感覚を覚えた。せっかく落ち着いたと思ったのに!!


「それが関係なくないんだなぁ~。兄ちゃんよ~、おめえさん友達いねぇだろ?」

「うっ、なんでそう思うんだよ」

「話してたら分かるさ。理屈っぽいしいちいちうるせーし、見るからに陰気そうだし。でもどこか斜に構えようと気取っちゃってるのがまたウザい」


 ヒドい言われようだ……。俺ってそんなに痛い?


「う、ウザイはちょっとひどくないですか…? というか、これ以上おちょくられて俺だってさすがに黙ってられないですよ?」

「いや、黙っちゃいないもなにも、さっきからおめぇさん全然黙ってないじゃん(笑)」

「揚げ足を取るな。もう付き合ってらんなくなってきたぞ……。もうウサギとかどうでも良くなってきたし、無視してさっさとミスドに行こうかな……」


 なんつーか、これ以上バカにされっぱなしなのも癪だし、傷つくのも嫌だ。俺結構ガラスハートよ?


「おい拗ねんなよ」

「拗ねてないし! っていうか、俺と君が関係あるってさっき言ったけどどういうこと?」

「ようやく話を聞く気になったか」

「もとから聞いてただろ。君が脱線させてるんじゃないか」

「だからそういうツッコミがうぜーんだよ」

「うっ……」

「よし、リアクションは後でまとめて取ってくれ。今から話すことはお前さんにとってもこの現実世界にとってもきっと信じ難いことだと思うし、嘘のような事だと信じないだろう。前置きしたら余計胡散臭くなっちまったけど、とりあえず聞けよ」


 よく分からないけど、ノーリアクションでウサギの目を見ることにする。赤い目だけど若干濁った、明らかに善人ではないような――、そんなレゲエウサギの目をまっすぐ見て俺は話を聞く。


「いいか、まず俺はこの世界の住人じゃねえ」

「それはなんとなく分かる。でも、じゃあどこから君は来たっていうんだ?」

「いちいち細かく突っ込むなよウゼェな」

「うっ……」声を出して突っ込むことが癖になってきてしまっている……。

「だから最初にとりあえず最後まで聞けって言っただろ。オメェ俺の話聞いてたのか」

「……」

「まあいい。どこから来たかって? 俺は、ワンダーランドっつーふざけた国から来たウサギだよ」

「ワンダー……ランド?」

「おうよ、ハートのお嬢に仕える忠誠なるウサギさ」


 ワンダーランド? ワンダーランドってあの、不思議の国の? ん? んん? どういうことだ? 俺はウサギの言っていることにピンと来ていない。いや、来るはずがない。ワンダーランドでウサギといえばまず誰もが思い浮かぶのが『不思議の国のアリス』だ。だが、だからなんだというのだ。だいいち、『不思議の国のアリス』がなんだ。ウサギが現れたって全く俺とは関係ないじゃないか。そもそも、『不思議の国のアリス』はこちらの世界の話だろ? ルイス・キャロルが知人の娘のアリス・リデルに作った物語のはずだ。それなのに、この世界の住人じゃないとか、現実世界に今いるとかなんなんだ? みんなで俺をおちょくってるのか? 『不思議の国のアリス』も確か主人公がウサギを追いかけて異世界に飛び込み、奇妙で不思議な体験をする物語だったはず。しかも最後は夢オチとかいうなんとも無責任な感じだったような……。いや、幸せ展開か。というか、これもしかして夢? いや、俺は確か鍵山さんと学校からの帰り道でミスドに向かっているはずだ。デイドリーム……白昼夢? それとも妄想のしすぎで遂に幻覚まで見えるようになったか……? だとしらヤバい……。 いやいや、鍵山さんと歩きながら話している最中に妄想にふけったりするはずがない。しかも、実際に曲がり角で何かにぶつかって、俺が転んだのを鍵山さんも見ている。でも、この目の前にいるレゲエウサギは俺にしか見えない。ということは、やはり俺の妄想が生み出したただの幻想なのか? 俺は自分から転んだのか? これはリアルなのか? それとも白昼夢なのか? う~ん、どっちも嫌だなあ……。

 全く頭が追いついていないのでとりあえず思考を目の前に戻してウサギに問うことにした。


「なあ、これって白昼夢?」

 

 ウサギが豆鉄砲くらったような顔をする。鳩並みにポカンとしている。


「あ? いきなり何言ってんだ?」

 

 そりゃそうだ。妄想が先行して話の脈絡がなさすぎた。会話の流れがおかしいな。


「ごめんごめん。頭が混乱してて。君は俺の見る白昼夢が生み出した妄想なのか? それともリアル――、現実世界での出来事なのか?」

「ははは、そうきたか。安心しな兄ちゃん。これは紛れも無く現実だよ。もちろん、俺にとってはの現実だって話な。お前さんからしたらこれはフィクションかもしれないが、実際に体験している今この時はリアルだ」

「全然意味がわからない。そもそも何で俺にしか君は見えないんだ? 何のために君が現実世界にいるんだ?」

「おめえさん、結構テンパってるわりには冷静な質問してくるな」

「たぶん混乱の極みが一周して冷静になっているんだよ。ほら、テストの時とか中途半端に勉強してると本番で焦るけど、全くノー勉強だとむしろ本番冷静になっているまであるだろ? そんな感じなんじゃないかな」

「よくわからん例えだな」

「まあ、君にテストの話なんかしても分からないか」

「現実世界のことはよう分からん」

「さっきの話に戻るけどで、何で俺にだけに君が見えて、ここにいるんだ?」

「もう聞いちゃう?」

「聞いちゃう聞いちゃう。というか、それ意外にない」

「まあ、いまさら隠しても意味ねーしいいか。俺はただ現実世界にいるわけじゃねえ。実はタイミングよくちょうど今からあっちの世界に戻る途中だったんだ。その途中で兄ちゃんとぶつかって今に至る」

「そうだったの!? なんてタイミングだ!」

「そう、タイミングだよ」

「ん?」


 タイミングがなんだ?


「タイミングだよ。俺とおめえさんがぶつかったことだ。さっきも言っただろ。なんでおめえだけに俺が見えるのか」

「うん」

「それはな兄ちゃん、おめえさんが俺に選ばれたからだよ」


 んん? どういうこと?


「全然意味が分からん」

「まったく察しが悪いやつだなぁ。ファンタジーの世界で言うなら、おめえさんは選ばれたんだよ」

「何これ? ドッキリ? 悪いイタズラ? それとも夢?」


 混乱の極みここにありせし。何が正しくて何が嘘で、何がリアルで何がフィクション? 夢なのか現実なのか全く分からない。選ばれたってなんだよ。いまの状況自体が中二病全開なんですけど……。普段から妄想にふけっているからこんな頭になってしまったのだろうか……。


「あのさ、選ばれたって何に?」

「だから、俺に選ばれたっつてんだろうが」

「なんで?」

「それは知らん。俺が見えるから選ばれたんだよ。現に兄ちゃんと一緒にいるお嬢ちゃんには俺の姿が見えないんだろ?」

「そうみたいだね」

「それが証拠だ」

「それじゃあ全然分からん」

「なんで俺に選ばれたかは俺にも分からねえが、なんで選ばれたかは教えてやるよ」

「それを早く言ってよ。ずっと待ってんだから。何? 俺『不思議の国のアリス』にでもなるの?」

「あ? フシギノ? なんだそりゃあ?」

「いや、こっちの話」本人に聞いてもメタ発言になってしまうだけか。

「兄ちゃんは選ばれたワンダーランドのお嬢――“ハートの女王”討伐に向けた俺のパートナーとしてな」


…………は?

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