筆の赴くままに、つらつらと短編。

@Liku_kotogiri

ロウソク(夕飯・蜜蝋・紐)

「ただいまー」

夕飯時には、少し遅い時間に帰宅する。


同居の両親は、既に夕飯は済んでいるようだ。


居間の電気が点いていないのは、ミツバチの巣箱から調達した蜜蝋でなにやらやっているのだろう。


(簡単なロウソクでも、作ったのかな?)


わずかに揺らぐオレンジの灯りにそう思いながら、ドアを開けた。


肉を焼いたような、芳ばしい匂いがした。


しかし、食卓にその元になる様な料理は見当たらない…。




「ねえ、ロウソクの芯って何使ったの?」


そう尋ねると


「ハムに巻いてあった紐だけど?」


と返事が返ってきた。


ハムを縛っていた紐が、ロウソクの芯にするのに手頃な太さだったらしい。


そして『肉を焼いたような、芳ばしい匂い』は、部屋の少し高い位置に漂っているようだ。


そのためか座った状態の両親は、全く気づいていない。



『それ、ハム焼いた匂いするよ…』



芯の周りに薄く蝋を重ねた、即席のロウソクを指差し言った。


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