第7章 星降る夜 1

夜の波が子守歌のように優しい音色を奏でる。

シーは枕元に薄桃色の貝殻を置き、じっと見ていた。ただの貝殻なのに、月の光に照らされたその色はとても神秘的に見える。

あれからというもの、シーはサンとたまに会うようになっていた。人目のないところでたけど、一緒に魚を釣ったり、花畑で散歩したりした。母さまのお墓に、一緒に手を合わせてくれた。出会って数ヶ月、大切な友達だった。

「うん?」

さっきから、こんこんとどこからか音がする。不思議に思って耳を澄ませると、もう一度音がした。

(隠し通路だ)

 シーは静かに起きあがって、抜き足差し足、床下のあるタイルに近づく。通路の入り口は部屋側からしか開かない。それでも用心してシーは警戒する。

「シー。……シー」

 サンの声がした。

「サン?」

「シー、俺だ。サンだ。開けてくれ」

 急いで床下を開いた。

「サン。なんで来たの。城にきちゃだめだよ。危ないのに」

 サンの顔が見えたとたん、シーは矢継ぎ早にそう言う。サンの身は危険な状況であるというのに、城に来るとは大胆すぎる。

「ごめん。上がっていいか」

 笑ってサンは謝った。いつものにかっとした笑い方で怒る気もうせて、シーは許した。

「はいはい。どうぞ」

「へえー、広いな」

 サンは穴からはいあがり、くるっとと珍しげに部屋を見渡し、くすっと笑った。

「初めてだ。女の子の部屋に入るの。シーらしい、ここ」

「そんな、がらくたばっかよ」

 珊瑚礁の欠片や貝殻、ガラスの中の海辺の砂をシーは背で隠す。

「起こしちゃったか?」

 部屋を物色した後、サンは窓に背をあずけこちらを向く。

「ううん。全然眠れなかったから、大丈夫」

 そんなシーの顔をのぞきこむように見て、サンは唐突にいった。

「なあ、海に行かないか」

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