7-6:最期の夜
闇の中から意識が戻る。
薄く開いた視界には、薄暗い曇り空が広がる。
しばらくまどろんだ後、意識が一気に
場所はコラロ村の中央の広場と変わっていない。
あちこちにたき火がたかれ、村人たちが
その背後では
「あたし……」
かけられていた毛布を
「どれくらい眠っていたの……!?」
「心配するな……五時間ちょっとだ」
背後からローレルの声がした。
振り向けば、
「サフィリアは……
半日遅れで追いかけても充分間に合う」
目を開き、身体をこちらに向き直す。
「……だが、行くのか?」
「……どう言う意味ですか?」
正対し、正座してローレルの前に座る。
「詳しい事情はわたしが聞く事ではあるまい。何となく察してはいるがな……。
この件を女神ローザは
「……テユヴェローズで、サフィリアたちを待ち構えている
「では、お前がこれ以上関わる事ではないな」
ローレルの言葉に、カラナは首を横に振った。
「やらなければなりません。あたしが
深いため息をついて、ローレルが頭をかく。
「サフィリアは……ここには戻らないか?」
「あたしたちの想像が
カラナは立ち上がった。
「カラナ」
「?」
カラナを呼び止めたローレルが、何かを握った手を突き出して来る。
受け取ろうと差し出した手のひらに――硬い感触。
渡されたのは――
「……サフィリアのイヤリング」
ブランカが、サフィリアに造ったものだ。
「村の中で拾った。『ゴーレム』との戦いの
あの
手渡されたイヤリングを握り締める。
テユヴェローズの方角を
「早馬を用意してください。……魔女サイザリスと決着を着けて来ます!」
***
「いま……どのあたり?」
「間もなく、テユヴェローズが見えて参ります。今日の夜には大聖堂へ到着
サフィリアの問いに、ヴィオレッタが姿勢を正して伝える。
敵対していた時は、こちらに
今日の夜……。
女神ローザとの約束の期限である。
小さく
片隅に、布で巻かれたクラルの亡骸が横たわっている。ふとクラルの顔を見たいと思い、その布に手をかける。
「お
ヴィオレッタが制する。
「
「『ハイゴーレム』も命が亡くなったら、土に
元の姿勢に戻りながら、サフィリアは
ヴィオレッタがクスクス笑いながら
「創造主である
『ゴーレム』の肉体の
「そっか……。もしサフィリアなんかと関わらなければ、人間と同じ様に生きてられたのかもね、クラルは……」
ヴィオレッタがゆっくり歩み寄り、サフィリアの手に自分の手を
「これから貴女様の手によって復活を
そのつもりはない。
再び
散々わがままを言い、カラナや他の者たちを振り回したのだ。
そもそも、テユヴェローズで元老院に
だから……クラルを生き返らせたら、自分は消えてしまわなくてはならない。
もし、記憶が復活した
その時は、女神ローザが自分を
迷惑をかけたお
色々な
「やっぱり……何も見えないな……」
「何か?」
ぽつりと
「ううん……何でもない」
「?」
目を閉じても、意識を眠りに落としても――過去の記憶はおろか、ヴェルデグリスの"あの声"さえも聞こえなくなってしまった。
自分に何か変化があっただろうか? と、首を
眉根を寄せて、自分の顔を手で
耳に着けていたイヤリングが、いつの間にか無くなっていた。
どこかで落としてしまったのだろう。
せっかくブランカが作ってくれたのに……。
魔女の
そう決心した事で、ヴェルデグリスがこれ以上の
テユヴェローズへ到着するまでのあいだ、
それに、記憶の世界で感じた妙な違和感の正体も、知っておきたいと考えていた。
自分の記憶でありながら――自分の事の様に感じられない妙な感覚。
女神ローザの火球に押し潰され、全身を焼き砕かれるあの激痛と恐怖だけは、しっかりとその身に
大聖堂には、恐らく女神ローザが待ち構えている。
戦えば――またあの恐怖を味わう事になるのだろう。
いくら試しても見えない記憶に
日が
暗い空と海が、鮮やかな青と赤で染め上げられていた。
果てまで続く海原に大きな船が浮かぶのが見える。
複雑な
どこの船だろう……?
その船は、今まさにテユヴェローズの港へ入港しようとしていた。
ただぼんやりと、その景色を瞳に
大聖堂に着いた頃――サフィリアにとって
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