5-5:マザー・ヴィオレッタ
「こいつがアナスタシス教団のリーダーだね!?」
サフィリアが、
そのヴィオレッタは、サフィリアを認めると、床に
「お初にお目にかかります。わたくしは、マザー・ヴィオレッタ。
「ふーん。すっかり忘れちゃったけど!」
軽口で挑発するサフィリアに、
「ご心配なさらぬよう。貴女様が記憶と
「結構です!」
サフィリアがヴィオレッタと
ばらばらに崩れ落ちた器具や本の山にフィルグリフが埋まっている。
運が良いことに、フィルグリフは無傷だ。乱れているが、スクリーンの再生も止まっていない。
カラナは、サフィリアに視線を送る。意図が伝わったか、小さく首を振る。
「行くわよ!」
叫ぶと同時に腕を前に突き出し、開いた手のひらに不可視の魔力を組み上げる!
その魔力を、握り拳を作って
同時に天井近くに浮かんでいた”
「……!」
不意打ちの目くらましに、ヴィオレッタも
「今よ!」
カラナは腕に”
同時に空中に跳躍したサフィリアが頭上から氷の結晶弾を浴びせかける!
だが――!
下からうねった”
しかし、この攻撃が通らないのは想定済み!
カラナは勢いそのままヴィオレッタの
階段を駆け上り、通路を走って、扉を破り
地面の上を転がり、館の入口から距離を取って向き直る。
うまく、ヴィオレッタを地上に誘い出すことに成功した。
彼女は、部屋の
今ごろ、クラルはフィルグリフの映像を再生し、”
***
部屋に
カラナとサフィリアは地上に戻り、ヴィオレッタも追って行った様である。
自分に任された使命は分かっている。
小走りに瓦礫に埋まったフィルグリフに近寄り、掘り起こして手近な瓦礫の上に立たせる。
「早く……”
映像は、
ただ、巨大な魔導石・ヴェルデグリスが映っているのみだ。
映像を巻き戻し、必要な情報が記された場面まで戻す。
サイザリスと黒いローブの男が、ヴェルデグリスの
ここだ!
『一応、魔導石の扱い方を教えておくよ』
『
『まあ、そう言わないで、万が一暴走とかした時の為に、必要だろう?
――”
ここまでは、さっき聞いた。その先だ――。
『必要ないとは思うが、聞いておこうか?』
ごくりと
『いい心がけだよ。どんなに優れた魔導師でもリスクは付き物だからね。
それじゃあまず、万が一暴走した時に使う”
それは――――』
「!」
確かに聞いた。
焦らず、映像をリプレイしてもう一度聞く。
間違いなく覚えた……!
映像を切り、深呼吸する。
これで終わる!
フィルグリフを持って帰れば確実だが、それはヴィオレッタを退けて安全を確保した後の話である。
クラルは、カラナたちを援護すべく――そして”
***
カラナの放った”
その背後では、サフィリアの放った冷気で脚が氷漬けになり身動きを封じられた『ゴーレム』が二体!
このまま、”彼女”らも薙ぎ倒す!
腰にひねりを加え、腕を振って”
しかし、突然真横の茂みから飛び出した『ゴーレム』のタックルを受け、突き飛ばされてしまう!
「くそッ!」
鞭の先端は、大きく狙いを外して爆散してしまった。
カラナの身体に馬乗りになった『ゴーレム』が
杖を取り戻そうと引っ張る『ゴーレム』とのちから比べになる。
『ゴーレム』がカラナに負けじと、彼女の脇腹を蹴り上げた!
「かはッ!」
呼吸が乱れ、思わず手を放す!
自由になった樫の杖を振り直し再びカラナの顔を割ろうと振り下ろした!
硬い音がして――樫の杖が吹っ飛ばされる!
飛んで来た氷塊が、杖をかっさらって行ったのだ。
『ゴーレム』の背中を蹴り上げ、吹き飛ばす!
地面を転がり、体勢を立て直す『ゴーレム』。だが、その胴体を鋭い氷の槍が
倒れ伏す『ゴーレム』の背後に、錫杖を構えたサフィリアの姿。
サフィリアの差し出した手に捕まり、カラナは立ち上がった。
服の
「さて……だいぶ戦力ダウンしたんじゃないかしら?」
カラナの挑発に、流石のヴィオレッタも表情が硬くなる。
その時――
「サフィリア様!」
館の入口から
「クラル! “
「はい!」
クラルが大きく頷く。
「クラル、サフィリアに"
カラナがヴィオレッタへ
「サフィリア様、耳を近づけてください!」
「早く! 早く教えて!」
クラルが耳打ちする様に、顔をサフィリアに近づける。
それに
「ぎゃッ!?」
鋭い悲鳴を上げて仰け反るサフィリア!
しかしクラルは全く
「クラルッ! 何をするのっ!?」
ぐったりとちから無く崩れ落ちるサフィリアの金髪を掴んだまま――"彼女"は、こちらを振り向く。その顔に深く刻まれた狂気の笑み――!
「あんた……クラルじゃないわね!」
奥歯を噛み締め、カラナはその『ゴーレム』を
こいつはクラルではない!
良く似た外見の『ゴーレム』に、どこで手に入れたか
ガランッと大きな音を立てて、サフィリアの手から錫杖が転がり落ちる。
完全に気を失っている様だ。
「動かないで下さい。
勝利を確信した笑みを見せるヴィオレッタに、カラナは
「脅しのつもり? あんたたちがサフィリアを傷つけられる訳がないわ」
「そうでしょうか? わたしたちはサイザリス様の忠実なる
サイザリス様の復活が叶わぬのであれば、
言いながら、ゆっくりとこちらへ歩み寄る。
「……ちくしょう!」
唇を噛んで、カラナは吐き捨てた。
動けない!
動けばこのヴィオレッタは本当にサフィリアの命を奪うつもりだ!
レイピアの
カラナの胸元に、レイピアの切っ先を突き付け――――
「ここまでサイザリス様のお世話をしていただき、貴女には感謝しています」
――一気に、鍔元まで押し込んだ!
胸に熱い痛みが広がる!
カラナの胸を貫いた刃が――血にまみれて背中を突き破る!
「ああッ!」
串刺しにされた心臓が不規則に鼓動し、
「やめっ! やめて……ッ! 助けッーー!」
「ここでしばらく静かにしていて下さい。例えクラルと言う『ハイゴーレム』の魔法で蘇生出来ても――その頃には、わたしたちはサイザリス様を連れて大聖堂に到着しているでしょう」
ヴィオレッタが一気にレイピアを引き抜く!
鮮血を噴き出しながら――カラナの身体が
もがく様に腕を空高く突き出すが、それで出血が収まる訳もなく……。
やがて動かなくなったカラナを
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