あの日の街角、風船の行方

春嵐

あの日の街角

 この街が、なんとなく好きだった。

 すれちがう人の目が暖かいというのもある。利便性も良い。雨は降るけど、アスファルトが特殊なやつだから水たまりもない。

 そして、彼女に逢ったから。

 この街角だった、気がする。もう忘れてしまった。

 彼女の面影をなんとなく探しながら、歩く。

 駅前のモールも。その店先も。交差点でさえも。彼女との思い出にあふれていた。

 どこにいても。

 彼女のことばかり、考えてしまう。

 近くの公園に入り。ベンチに座る。

 彼女の姿を思い出さないように。

 なんとなく、空を眺める。

 風船が、飛んでいた。

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