第47話 カクヨムコン大賞作品を読んだ感想

 第6回カクヨムWeb小説コンテストの異世界ファンタジー部門で大賞を受賞した作品、「酔っぱらい盗賊、奴隷の少女を買う」をようやく読み終わりました。作者は新巻へもんさんです。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054918377471


 序盤部分を読んだ感想は24話に書いてます。6/18ですね。読み始めたのが6/14。読み終わったのが8/13です。丸二か月かかりました。


 以下、ネタバレ含みますのでまだ読んでいない人は注意して下さい。


 さて、読み始めた当初は何かヒロイックファンタジー的なものを想像してました。冴えないおっさんがエロい邪心で奴隷少女を買うのだが、そのおっさんが世界を救うヒーローになっちまった的な。しかし、読み終わってみると、これは純愛物語でした。要約するなら、「色々あってひねくれてしまったおっさんが、本来の美しい心を取り戻す物語」って感じになるのでしょう。その、本来持っている美しい心に引かれてイイ女が集まって来たハーレムっぽい状況なので、イヤらしさが全然ない所も良かったですね。


 大賞の理由もいくつかあると思いますが、良い意味で読者を裏切っている所でしょうか。読者を落胆させるんじゃなくて、安心させる、喜ばせるような裏切り方ですね。最後の締めも含めて、この辺はお上手です。そして、約35万字の長編を飽きさせず最後まで引っ張る力は秀逸だと思います。一般の公募では文字数の上限が定められていますが、ここではそういう制限はない。つまり、10万字を遥かに超える超長編でもすらすら読めるような読みやすさと惹き付ける魅力を求められているのではないかと。


 不満があるとすれば、神龍姫とのかかわりがあっさりしすぎている事で、一人称ゆえ、彼女が実体化した時の描写が欠落している点ですね。後は、ダンジョンで超大物のラスボス的なやつを倒すんですが、ここの尺が足りないかなと。他にもいくつか重要な部分で足りないかなと思いました。これは、小さな事件と大きな事件の取り上げ方が、あまり変わらない印象だったという事ですね。しかし、物語の骨子は純愛ものなので、そういう路線であるならこれでいいのかもしれません。ヒロイックファンタジーとしてみるなら、配分が不味いのかなと。余計な小事件が多すぎるのかもしれません。


 個人的な見解ですが、この内容で「ティアナの結婚」「バラス討伐」「神龍姫の復活」の、三本の長編ができると思いました。


 転生や転移、女神様にもらったチートスキルなんかの、流行りの要素がない、よくできたハイファンタジーだと思います。へもんさんはローファンタジーだと言ってましたけど。まあ、その辺のカテゴリーは自分もよくわかんないので。私の基準は、「指輪物語」がハイファンタジー。「ナルニア国物語」がローファンタジーです。


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