第2話
「署名と捺印...?」
「そう...」
上目遣いで。
お目目うるうるさせて。
林ユーコは俺にボールペンを差し出した。
「印鑑持ってる...?」
「ああ...持ってるっちゃあ持ってるけど...」
「良かった。じゃあ、ここに判子で。
それからここにシンジの名前をフルネームで
書いて...」
やたら甘ったるい声を出し。
俺は告白の返事がオッケーだったこともあったと思う。
あと。
額面の金額が100万円だったっていうのもある。
もし、桁が。
もうひとつゼロが多かったなら。
俺は躊躇したと思う。
きっと、ユーコの言いなりには
なっていなかったと思うんだ。
「連帯保証人?」
「シンジ、心配しないで。ちゃんと私、払うよ...?」
「お金を借りるにはどうしても保証人が
いるの...シンジ助けてほしい...」
今思えば。
胸の開いたトップスでわざと来て。
そんでもって、俺の右手を自身の胸元に誘導させた時点で俺は地獄は落ちるための階段を下っていたのかもしれなかった。
「今夜、シンジと寝てもいいよ...?」
「婚約もしてもいい...」
「分かった...」
ドンドンドンドン!
取り立て屋の顔面に傷が入った黒スーツの男が。俺のボロアパートのドアを執拗に叩き。
「開けねぇなら、このドアぶち壊すぞ!オラ!」
こ、こええええ...!
待ってください。
今にも蹴り飛ばそうとしていますね。
今、開けますから。
それは勘弁してください。
思い返せば。
俺はユーコを信じ。
(俺の名前がシンジだけに)
連帯保証契約を締結し。
名前だけの保証人になった筈だが。
ユーコの奴は俺と寝ることもなく。
婚約することもなく。
締結して紙を渡したそのすぐ後に。
トイレに消え、更に今宵、
ユーコと寝れるんだ!と夢心地でいた
俺に挨拶をすることもなく。
店からトンズラしたんだ。
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