第78話 第1王女 シャルロッテ様
お休みが終わって今日はお店と屋台を開けよう。レオナ達も来て屋台を始めた。今日も暑いからかき氷が良く売れそうだ。
「今日は移動足湯を作ろうかな」
『やっぱり作るのか』
「うん! だって、移動ボードだとずっと立ってないとでしょう? 座って移動出来た方が楽だし、アルちゃんと一緒にお出かけ出来るんだよ?」
『まあ、そうだが……足湯である意味はあるのか?』
「ないっ!」
『ないのかよっ!』
「えへっ。面白そうと思っただけで、必要あるかは分からないっ!」
ヴァイスとそんな話をしながら移動足湯を考える。移動ボードが出来たおかげで、簡単に出来そうなんだよね。まずはお湯を入れるタライを作らなきゃね。魔石は移動ボードと同じで良いだろうし、タライにはアルちゃんのポットと同じで大丈夫なはず。
夜に作るのが楽しみだ。そんなことを考えていると、レオナが慌てて入ってきた。
「カノンおねぇちゃん、大変っ!」
「ん。どうしたの?」
レオナと一緒に外に出ると、近くに倒れている人がいる。
「えっ、どうしたの?」
「分からないの。突然倒れちゃって……」
倒れている人に近づいてみると、とても顔色が悪い。申し訳ないけれど、鑑定させて貰おう。
しかし、7~8歳くらいであった事ないはずなのだけど、金色のふわふわの髪でなんだか見覚えがある気がするんだけどなんでだろう?
名前:シャルロッテ(アプリフェル王国 第1王女)
年齢:8歳
ステータス:呪い、熱中症
(うわっ、色々突っ込みどころがありすぎる!)
でも、呪いってどういうこと? でも、それよりもまずは熱中症かな。さて、どうしようか。あっ、回復シロップがある!
「レオナ、かき氷作ってくれる? シロップはなしで!」
「うんっ!」
レオナにかき氷を作って貰ったら、回復シロップを掛けてスプーンで口に運ぶ。この世界は基本的にポーションがあるから、大体はそれで治るんだよね。さすがに呪いは解けないけれど。
「ん……ん?」
「あっ、目が覚めましたか? 気分はどうですか?」
「ここ、は?」
「暑くて倒れたみたいですよ」
「あ、ありがとうございます。この冷たいのは何しょうか?」
「これはかき氷に回復シロップを掛けたので、食べられそうだったら食べてくださいね」
「回復シロップ?」
「回復ポーションと同じ効果があるんですよ」
シャルロッテ様は美味しそうに回復シロップの掛かったかき氷を食べ始めた。
「回復ポーションなのに、甘くて美味しいですわ!」
「もし良ければお店の中で休んで行ってください」
「ありがとうございます」
傘とひえひえ扇風機をレオナ達の所に戻したら、女の子をお店の中のテーブルに案内する。
「あの、どなたかとご一緒ではないのですか?」
「……えっと、あの……1人、です」
こんな小さい子が1人なのはおかしい。何かあったんだろうか?
「そうなのですね。何か困っている事はありますか?」
「お兄様が……お兄様のばかぁ~」
そういうと、ポロポロと涙がこぼれた。良く話を聞いてみると、レオンハルト様がうちに来たことをシャルロッテ様にお話しして聞かせたらしい。そこでかき氷という新しい物を食べたり、楽しかったと言ってしまったらしい。それでこっそりお城を抜け出してきたんだそう。
ただ、それだけならまだ良かった。だけど、途中で道が分からなくてウロウロしていたら、路地に連れ込まれたと。その後具合が悪くなってしまってうちの前で倒れたという事らしい。
だったら呪いはその時? うーん……もう一度鑑定をさせて貰おうかな。こそっと鑑定して呪いの所を良く調べてみると、やはりさっき呪いを掛けられたみたいだ。
「あの、具合が悪かったり気分が悪い事はないですか?」
「あの、なんだか身体が重くてだるいです」
「なるほど」
そう話していると、お店のドアが乱暴に開けられた。振り返るとユリウス様がいた。
「シャルロッテ様っ!!」
「あ、あの……」
「ユリウス様。少しお話を良いですか?」
「は、はい」
ユリウス様にこそっとここに居る説明と、呪われている事を伝える。
「ええっ!? シャルロッテ様、お身体は大丈夫ですかっ!?」
「えっと、ご、ごめんなさいぃ~……」
「さっき回復シロップを掛けたかき氷を食べたので少しは大丈夫だと思うんですが、ちょっとここを任せて良いですか?」
「は、はい。ですが、カノン様は何を?」
「シャルロッテ様。お薬を作ってくるので少し待っていて貰えますか?」
「お薬? やだっ、お薬きらいっ!」
「ふふっ。では甘いお薬にしちゃいましょうか」
「甘いんですか?」
「はい。さっきの回復シロップみたいに甘いのにしましょうか」
「うんっ!」
まだまだ子供だからか、しっかり話せる時と子供らしいときが混ざるみたいだね。とっても可愛いです!
「ヴァイス、アルちゃん。ここをお願いね」
『任せろ!』
「きゅっ!」
ヴァイスとアルちゃんにここは任せて、私は錬金部屋へ急ぐ。エリクサーはこの前省略で作ったから、すぐに出来るはずだ。
今は5個省略出来るから、魔力を込める、治癒草を刻む、魔力回復草を刻む、不死鳥の羽、蒸留水を省略しちゃおう!
錬金釜にクリーン魔法を掛けた治癒草、魔力回復草を入れるとぽふん! とエリクサーが完成した。エリクサーが簡単に作れて凄いね。
だけど、ここからもう一度。エリクサーと回復シロップを少し錬金釜に入れて蓋を閉めて魔力を流す。
チーン!
エリクサー(シロップ入り):回復シロップを入れる事で甘くて飲みやすいエリクサーになった。子供に大人気!
急いでお店に戻ろう。
「お待たせしましたっ!」
「カノン様っ!」
シャルロッテ様は座っていられないくらい具合が悪くなってしまったみたいだ。ユリウス様が支えているけれど、辛そうだ。
「お薬出来ましたよ。ゆっくりで良いので飲めますか?」
「甘い?」
「もちろん!」
シャルロッテ様はゆっくりとエリクサーを飲み始めた。一口飲むと、シャルロッテ様の身体がぱぁっと光った。
「きゃっ!」
「シャルロッテ様っ!」
シャルロッテ様の身体の光が収まると、顔色も戻っているみたいだ。
「あっ、身体が軽い? それに、甘くておいしい」
「ふふっ。甘くて美味しかったんだね、良かった」
「ありがとうございます!」
「カノン様、ありがとうございましたっ!」
「カノン様?」
「えっと、レオンハルト様が来たのはここのお店なんです。さっき食べた冷たいのがかき氷です。シロップは違いましたけどね」
「ええっ!? お兄様はこちらに来ていたのですか!?」
シャルロッテ様はとても楽しそうにお店の中をきょろきょろして眺めている。その間にユリウス様は他の護衛の人を呼びに行った。ここにはヴァイスもアルちゃんもいるから安全だからね。
少しするとユリウス様と他にも数名の護衛と馬車が用意された。
「シャルロッテ様、そろそろ帰りましょう」
「いやよっ! もっとここに居たいわ!」
「シャルロッテ様。こちらをお持ちください。これはまだレオンハルト様が食べたことないお菓子です。王宮でレオンハルト様と一緒にお茶をしてはいかがですか?」
「お兄様も食べたことないお菓子ですのっ!?」
「もし、また来られる時はきちんと他の方と一緒にいらしてくださいね」
「カノン様、ありがとうございます」
シャルロッテ様はユリウス様達に付き添われて帰って行った。なんだか色々あり過ぎてびっくりしたけれど、確かにシャルロッテ様はレオンハルト様に似てる。だからあった事がないのに、あった事があると思った訳だ。
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