第71話 移動ポットが出来た!

 水耕栽培用ポットは内側に青の魔石(中)、赤の魔石(中)、白の魔石(中)を貼り付けるんだよね。貼り付けるのと魔力を流すのを省略しちゃおう!


 錬金釜に水耕栽培用のガラスポットを入れて、青の魔石(中)、赤の魔石(中)を入れたら、ぽふん! と水耕栽培ポットが出来上がった。


「あれ?」


『またか?』


 自分を鑑定してみると、錬金術(省略)スキルがレベル25になっている。これで5個省略出来るようになったね!


「わわっ、レベル25だよ! 5個省略出来るよ、楽しいよっ!」


『そうだろうな……』


 ヴァイスに疲れた目をされたけれど、省略出来たら今回のエリクサーのように助かるんだよ?

 5個省略出来るから、大分便利になったよね。そして楽しくなったよね!


 移動風呂より移動温泉の方がゴロが良い感じだから、移動温泉にしよう。これには外側に緑の魔石(中)、白の魔石(中)で出来るかな?


 省略スキルで完成した水耕栽培ポットの外側に魔石を貼り付けていく。緑の魔石と白の魔石が貼り付けられたら錬金釜に入れて魔力を流そう。

 魔力を流していると蓋の上に×バークが出た。


「久しぶりに見た。何がダメなんだろうなぁ」


『ふむ』


「ポットを浮かせる緑の魔石。それから安全の為に白の魔石。他に必要なのはなんだろう?」


『だったら黒の魔石でポットを軽くしたらいいのではないか?』


「あっ、それっ!」


 錬金釜からポットを取り出して黒の魔石(中)を貼り付ける。出来たら錬金釜に入れて蓋を閉めたら魔力を流す。


 チーン!


「あっ、出来た!?」


『お!』


 錬金釜の蓋を開けて鑑定してみると、移動温泉と書かれている。きちんと出来たみたいだ。


「移動温泉って書いてあるよ! ちゃんと出来たみたい?」


「きゅきゅ~!」


『さすがだな』


 アルちゃんが早く試してみたくてきゅきゅって可愛く鳴いているので、移動温泉にお湯と植物栄養剤を入れてあげる。


「あっ、でもアルちゃんをどうやって移動しようか?」


「きゅーきゅっ!」


 任せておけ! と言いたげな仕草だ。


「自分で出来るの?」


「きゅっ!」


 自分で移動出来るんだ。マンドラゴンって凄いんだね。


「マンドラゴンって凄いんだね~」


『アルだからだと思うぞ? 普通はそんな事ないと思うんだが?』


「そうなんだ」


 アルちゃんを見ていると、今いる水耕栽培ポットからよじよじと出て来た。小さいドラゴンがよじよじしてるのはちょっとかわいい。

 新しいのは少し大きくなっているから今より少し高くなっているのだけど、どうするんだろうと見ていると、ぴょんっ! と飛び込んだ。


「えぇぇっ!? アルちゃん、飛び跳ねられるの!?」


「きゅ~」


『アル、凄いな』


 そして入った瞬間から気持ちよさそうなアルちゃんは、本当に可愛い。まさかこんなに植物が可愛いと思うようになるとは思わなかった。


「ふふっ、アルちゃん凄いねぇ。お疲れ様」


「きゅっ!」


 大きなポットに入ったアルちゃんは、自分の良い所を見つけると気持ちよさそうな声を出した。ここからが本番だ。移動が出来るようになるか、ドキドキだ。


「アルちゃん。浮かせられそう?」


「きゅーー!!」


 アルちゃんのポットが少しずつ浮き始めた。


「わわっ、本当に浮いたよ!?」


「きゅ!?」


『アル、浮いてるぞ!』


「きゅーっ!」


 アルちゃんが少しずつ前、後ろと移動し始める。慣れてくると自由に動けるようになってきたみたいだ。5分もすると、結構勢いよく移動し始めた。


『アル、凄いな』


「アルちゃん、凄いねぇ。これで自由に移動出来るようになったね!」


「きゅきゅ~」


 とても嬉しそうな鳴き声だ。やっぱり錬金部屋で1人は寂しかったのかもしれないね。


「ふふっ。アルちゃんが楽しそうで、私も嬉しいよ」


 アルちゃんはポットのまま移動して私にすりすりしに来てくれた。そのあまりの可愛さになでなですりすりしちゃう。


「これなら、私が乗って移動する物も作れそうな気がするね!」


『なにっ!?』


「ヴァイスには遠くに行く時にお願いするけど、街の近くでヴァイスが大きくなったらみんな大騒ぎだよ?」


『確かにな……』


「それに錬金術で空を飛べたら楽しそうでしょう?」


『それは楽しそうだな』


「きゅ~!」


「ふふっ、アルちゃんも一緒に飛べるかな」


「きゅっ!」


 アルちゃんとも一緒に移動するとなると、何が良いかなぁ。まずは自分が浮けるかどうかを試さないとダメだよね。

 とりあえず、何かで試したい。きょろきょろと何かで試せないか探してみる。


「あっ、椅子で試そう!」


『……何をだ?』


「浮く椅子?」


『椅子って浮くのか?』


「いや、試してみようかな~なんて?」


 ヴァイスに大きなため息をつかれたけれど、出来そうならやってみたいでしょう。木材を錬金釜に入れて蓋を閉めて魔力を流すと、椅子が出来た。


 椅子の座面の下に緑の魔石(中)、黒の魔石(中)、白の魔石(中)を貼り付けよう。魔力回復リンゴジュースを飲みながら作業を続ける。

 錬金釜に入れて魔力を流すと、チーン! と出来上がりを知らせてくれる。蓋を開けて鑑定してみると、浮く椅子と書いてある。これは楽しみだ!


 いそいそと浮く椅子を床に置いて、早速座ってみる。


「……どうやって浮くんだろう?」


『念じてみてはどうだ?』


「あっ、そうだね。浮いて浮いて~……」


 一瞬ぐらっとした後ゆっくりと椅子が浮いた。


『ふっ、カノン。それだけか?』


「うぅ。もっとがんばってー!」


 いくら念じても10cm浮いた辺りから上には受けない。アルちゃんはあんなに浮いて自由に動いているのに、なんでっ!?


「なんでー!?」


『くっくっく』


「もう、ヴァイス! 笑わないでよ~」


「きゅ~?」


 アルちゃんも心配してくれているけれど、なぜかそれ以上は本当に上がらない。一応少しゆっくりと移動は出来る物の、微妙過ぎる。


『な、何でだろうな』


「うぅ、おかしいなぁ。アルちゃんみたいに自由に飛びたかったんだけどなぁ」


「きゅぅ~」


 なぜか微妙な10cmだけ浮く椅子なんて出来ちゃった。なんでだろう、不思議すぎる。


『やはり重さではないか?』


「ちょっ!? その言い方は私が重たいと言っているみたいだからね?」


『アルよりは重いだろう』


「それはそうだけど、女の子に重いはダメよ!?」


『我はドラゴンだから良く分からんがな』


 おかしいな、そんなに重くないはず! アルちゃんと比べちゃダメだけどね。えーっと、黒の魔石を大サイズにしてみようかな。この微妙な浮く椅子はアイテムボックスに仕舞っておこう。


 錬金釜の蓋を閉めると、ぽん! と椅子が出来た。また椅子に魔石を貼り付けていく。今度は緑の魔石(中)、黒の魔石(大)、白の魔石(中)を貼り付けて錬金釜に入れて魔力を流す。


 チーン!


「よし、また試してみよう!」


 新しく作った椅子に座り、浮いて~! と念じると、ゆっくりと浮き上がった。今度は10cm以上浮けた。ゆっくりと移動もしてみるけれど、思ったように動いてくれる。


「ふふっ、これはなかなか楽しいね」


『だが、ゆっくりすぎないか?』


「う、うん。ちょっとのんびりだね」


『もう少し改良が必要そうだな』


「うぅ、そうする」


 また何か考えてから試してみよう。もっとフローデスベルナーみたいに移動が早く出来たら良いよね。今のままだとフローデスベルナーの方が便利だ。飛べるなら飛んでみたいし、頑張ろう!

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