第68話 エリクサーの効果は?
今日もお店と屋台を開けていると、クラウスさんが慌ててお店の中に入ってきた。
「カノンさんっ!」
「クラウスさん、大丈夫ですか?」
息を切らせて話も出来なそうなので、回復アイスティーを出してあげると一気に飲み干した。
「はぁ。すみません、ありがとうございます」
「そんなに急いでどうしたんですか?」
「カノンさん、エリクサーありますか?」
エリクサーは師匠に渡してしまったから、今はないね。それにエリクサーには不死鳥の羽が必要だ。あれ、でも省略したら作れるんじゃない!?
「エリクサーですか。でも、どうしたんですか?」
クラウスさんに椅子を勧めて、一旦お店を閉めて事情を聞いてみる。
「それが先日から地方へ視察に向かっていた第1王子のレオンハルト様が、途中で襲撃にあって大怪我を負って戻ってこられたんです」
「えぇっ!? それは、エリクサーが必要なほどって事なのですか?」
「ええ」
『カノン、どうする?』
「もちろん作るよ!」
『だろうな。国と関わる事になるが、良いのか?』
「うん、人の命には代えられないでしょう?」
『そうだな。まあ、我がいるから大丈夫であろう』
「うん、ヴァイス。頼りにしてるよ!」
クラウスさんには少し待っていて欲しいとお願いをして錬金部屋へ向かう。
エリクサーの材料は治癒草、魔力回復草、不死鳥の羽、蒸留水だ。不死鳥の羽はないから省略。それと魔力を込める時間を省略しよう。後2つ省略出来るから、治癒草と魔力回復草を刻むのを省略しよう。
錬金釜にクリーン魔法を掛けた治癒草と魔力回復草を入れる。ボウルに錬金棒を入れるとぽんぽん! と蒸留水が出来る。蒸留水も1本錬金釜に入れると、ぽふん! とエリクサーが出来た。
鑑定してみるときちんとエリクサーと書いてあったので、急いでクラウスさんの所へ戻ろう。
「クラウスさんっ、出来ました!」
「はぁっ!? 出来たって言いましたか!?」
「あはは。ま、まぁ、それは良いとして、これをどうぞ」
「そうですね……ありがとうございます。カノンさんも一緒に来ていただけますか?」
「はい、分かりました。屋台とお店を閉めてからで良いですか?」
「ええ、分かりました」
今日の屋台はビアンカとフリッツだったのだけど、今日はお休みにさせて貰った。効果も気になるので、ヴァイスを肩に乗せて一緒に向かおう。
クラウスさんと一緒に急いで王城へ向かう。初めての王城がこんな形で来る事になるとは思わなかった。王城へ着いたら、王宮へ行くのかと思ったら違う所へ向かっているみたいだ。
「クラウスさん、どこへ向かっているんですか?」
「今から向かうのは救護棟です。部屋まではお連れできなかったので、こちらで診て貰っているんです」
「わかりました」
向かうのは救護棟だそうだ。確かに、外から帰ってきて急いでいるのに王宮までは無理だよね。救護棟は王城の敷地内の入り口に近い部分にあったので、こちらの方が近かったんだろう。
救護棟に着いてすぐ近くの部屋にクラウスさんと一緒に入ると、寝ているレオンハルト様の側には心配そうな顔をしている人達が何人もいた。クラウスさんは、すぐにレオンハルト様にエリクサーを飲ませた。こくりと飲み込むと、その人の身体がぱぁっと光った。
あまりの光に目を瞑ってしまった。光が収まってから目を開けると、ベッドに寝ているレオンハルト様の顔色が、さっきは真っ白だったのが血色が良くなっている。
次の瞬間にはその人は目を開けた。
「「「「レオンハルト様っ!!」」」」
「ここ……は?」
「レオ、ここは王城内の救護室だ。本当に良かった」
「レオ、本当に良かったわ……」
これはもしかして、国王様と王妃様ってことかな。ちょっと後ろに下がっておこうかな。でも、レオンハルト様が無事に目を覚まして良かった。欠損があったのか分からないけれど、どうなったんだろうか?
「確か私は、襲撃にあって足が……?」
「レオ!? 足が治ってるのかっ!?」
「レオ!」
「ああ、私の足が……足が治っている!」
無事に治ったようだ。足を失くしていたのだろう、無事に治って良かった。レオンハルト様の怪我が治ってみんなとても嬉しそうだ。間に合って本当に良かった。
「カノンさん、ありがとうございました」
「あの、貴方が私の怪我を治してくださったのですね。ありがとうございました」
「無事に治って良かったです。では、私はお店に戻りますね」
「少し話をさせて貰えないか?」
国王様っぽい人に話しかけられたら逃げられなかった。やっぱりこの方はこのアプリフェル王国の国王様と王妃様だった。エリクサーを私が作ったとクラウスさんから報告を受けて、とても感謝された。
そして、肩に乗っているヴァイスに気が付くと、ヴァイスと話しを始めたので後は任せておこう。
『よし、カノン。帰るぞ!』
「う、うん」
ヴァイスが良いというのだからきっと大丈夫なのだろう。私では緊張しすぎて国王様達とお話なんて出来ないので本当に助かる。
「カノンさん、私が門までお連れしますね」
「クラウスさん、お願いします」
クラウスさんに付いて門までの道を話しながら歩いて行く。
「カノンさん、本当にありがとうございました」
「私に出来る事をしただけなので、気にしないでください」
「どうして出来たのかなどは聞かないでおきます」
「そうして貰えると助かります。何かお手伝いする事があれば言ってくださいね」
「ええ、ありがとうございます。またお店にも行きますね」
「はい、お待ちしてますね。門までありがとうございました」
王城の門まで送って貰ったので、そこからはヴァイスと一緒にお店に帰ろう。
「ヴァイス。私の代わりにお話をしてくれてありがとうね」
『うむ。我に任せておくと良い』
「うん。緊張して何を話して良いか分からないから助かったよ」
『そうだな。右足の欠損も治って良かったな』
「そうだね。無事にお薬が効いて良かったね」
『省略したのにな』
「そういうスキルだもん!」
もう午後になってしまっているので、今日はそのままお休みにしてしまおうかな。ヴァイスと一緒にお茶をしてのんびりしよう。
「ヴァイス。お茶するのに何が食べたい?」
『そうだな。甘い物が欲しいぞ』
「うーん、そうだな。何が良いかなぁ」
甘い物は何を作ってあげたら喜ぶかなぁ。よし、今日はクレープを作ろう。材料は小麦粉、牛乳、砂糖、卵、オイルを出して、まずは生地を作ろう。ボウルに材料を入れたら、錬金棒でくるくるっと混ぜたら生地の完成。
次に生クリームにお砂糖を入れて錬金棒でくるくるっと混ぜたらクリームの完成!
フライパンに油を薄く敷いて、生地を薄く焼いていく。何枚か焼けたらヴァイスと一緒に食べよう。
「ヴァイスはチョコとジャムどっちがいいかな?」
『我はチョコだ!』
ヴァイスのクレープにチョコとクリームを入れて巻いてお皿に乗せたら、ヴァイスの前に置いてあげる。私もチョコにしよう。
『旨いっ!』
「ふふっ。久しぶりに食べたけど、美味しいね~」
その後もジャムを入れたりアイスを入れたりして何個も食べちゃった。おかげでまたヴァイスはお腹ぽっこりさせてひっくり返っている。
「また食べ過ぎちゃったね」
『我は、後悔はしてないぞ!』
(いやいや、そんな恰好良いセリフを言っていてもお腹ぽっこりさんなのよ?)
とりあえず無言でヴァイスのお腹をなでなでもふもふする。いつ撫でてもヴァイスのこのもふっもふの毛皮が気持ちが良い。
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