第58話 部屋クリーンを作ろう

 ヴァイスと朝ご飯を食べてからお店を開ける準備をしていたら、コンコンとノックの音が聞こえた。ドアを開けてみると、騎士様が2人立っていた。


「開店前にすまない。少し話しをさせて貰えないか?」


「あっ、はい。こちらへどうぞ」


 お店の中にあるテーブルに案内して、アイスティーを2人の前に置く。座るように指示されたので、2人の前に座る。ヴァイスは警戒をしているのか、私の肩に乗っている。


 騎士様は騎士団全部を纏めている騎士団総長のユリウス様と、第一騎士団の団長のテオドール様だそうだ。どちらも貴族様だそうなので、気を付けて発言しないとだね。

 そう思っていたら、お2人の目がヴァイスにくぎ付けになっている。ヴァイスが魔法を使って結界を張る。


「「なっ!?」」


『国王から言われて来たのか?』


「えっ、い、いいえ!」


『ふむ。我は北の山に住んでいた白龍だ。今はヴァイスという名で、このカノンと住んでいる。冒険者ギルドから聞いておらぬか?』


「あっ、聞いておりますっ! ここの店主殿がカノン様でしたか。大変申し訳ありませんでした」


『知らなかったのなら、構わぬ。だが、我はカノンの為にしか動かんからな』


「「はっ!」」


 やっぱりヴァイスが一番凄いのか。でも、威厳のある話し方をしていても、小さいんだよね~。小さい子が精一杯エッヘン! としている感じにしか見えなくて微笑ましい。

 そう考えていたら、ヴァイスにジト目で見つめられていた。


「いたっ」


『なんだ』


「な、なんでもないよ?」


『また失礼な事を考えただろうっ』


「おかしい、まだそこまで考えてなかったのに。いたたっ」


 食いしん坊だなんてまだ全然考えてなかったのに、おかしいなぁ。表情で分かるらしいのだけど、どう顔に出ているのか不思議だ。



「突然すまなかった。昨日宮廷魔導士のクラウス殿からヒーリング包帯という物を見せて貰ったのだが、こちらを騎士団にも卸して貰えないだろうか」


「ヒーリング包帯ですね。どれくらい必要ですか?」


「定期的に納品して貰えると助かるのだが、まずは1週間に30個ずつでどうだろうか?」


「はい、大丈夫です。納品はどうしましょうか?」


「それと、変わったポーションがあると聞いたのだが?」


「これですかね? 回復クッキー、回復生チョコ、回復ジュースです。ただどれも中級の効果になります」


「そんなに色々あるのか。それでもそのクッキー1枚で回復ポーション(中級)の効果とは素晴らしいな」


 どれも性能を説明して味見をして貰い、最終的にヒーリング包帯30、回復クッキー、回復生チョコ、魔力回復クッキー、魔力回復生チョコを50個ずつの納品になった。

 これを1週間に1回って凄い数だけど、良いのだろうか?


「ポーションに味が付けられるのも不思議だな、しかも美味しいしな」


「ユリウス様。携帯食もあるみたいなのですが?」


「携帯食も味見をしてみますか?」


 そういうと、お2人とも表情が暗くなった。そりゃそうか。騎士団だったらきっと今までの携帯食を沢山食べてるよね。そっと携帯食の味見を少しずつ3種類出してみた。


「フルーツ味、チョコ味、チーズ味の3種類あるので、少しずつ味見をどうぞ」


「な、なんだこれは。携帯食なのか!?」


「総長、これは良いですねっ!」


 お2人とも喜んで納品して欲しいといわれたけれど、今まで取引をしていたお店が困る気がする。今まで納品していたお店に携帯食のレシピを渡して貰う事にした。

 冒険者達もうちの種を持って行ってくれたりしているので、携帯食はお任せしても問題ないんだよね。全体的に美味しくなるならみんな助かる気がするよね。


 だってあの携帯食、本当に食べるのしんどかったんだもん。


「カノン様。ありがとうございます」


「今までの店との兼ね合いもあるので助かります」


「気になっていたので良かったです。よろしくお願いします」


 納品に関しては、騎士団から人を寄こして持って行ってくれるそうだ。王城に行かなくて良いので、とっても助かります。基本的にお城には近づかないでいたいです。

 ヴァイスがいるから問題ないとは思うんだけどね。


 ユリウス様とテオドール様がお帰りになってからは、お店を開店してまったりとお店番をしながら錬金してます。


 今日の夜はお部屋を綺麗にするための魔道具を作ろうと思っているんだよね。ヴァイスとお話をしながら、どんな物にするのかを決めていく。色々な部屋へ持ち運んでクリーン魔法を掛ける事を考えたら、あんまり重くても良くない。


『棒みたいなのでいいのではないか?』


「そうだね。その方が小さい子達の手にも持ちやすいかもしれないね」


『そうだな』


 細長い棒にしようかな。本当はホウキでも良いんだけど、掃かなくても綺麗になるんだよね。なので、小さい子でも持ち運んで綺麗に出来るように細長い棒を作ろう。


「棒は何で作るのが良いかな? あんまり重くないのが良いよね」


『そうだな。木ではダメなのか?』


「うーん、ミスリルとかダメにならない物の方が良くない?」


『だが、あんまり高価だと受け取って貰えなくなるぞ』


「そっかぁ。確かにそうだよね。よし、木にしておこうかな」


『それが良いと思うぞ』


 方向性が決まったので、夜になったら作ろう。定休日になったら孤児院に行って来よう。


「カノン、こんにちは」


「あっ、ヘルミーナ。いらっしゃい」


「今日も暑いよ~。ねぇ、お店ではアイスクリームは売らないの?」


「ふふっ、あるよ。いる?」


「いるーっ!」


 お店にいた他のお客様達も一緒にアイスを食べる事になった。みんな建国祭で食べてくれて気に入ってくれたんだそう。


「そういえば、アイスがある事をお知らせして無かった。ごめんね」


「そうなんだ。でも、あって良かったよ~。今日も外暑くって、アイスがあったら絶対に食べようと思ってたんだ!」


「聞いてくれて良かったよ。アイスクリームのメニューを出すの忘れてたよ」


 建国祭が終わってから、お店のメニューにアイスを足しておこうと思ったのにすっかり忘れていた。どうりでアイスが出ない訳だ。

 ヴァイスも一緒にアイスを食べてご機嫌だ。ゆらゆら揺れるしっぽを見て、つい背中をなでなでもふもふしてしまう。


 ヘルミーナは魔法使いなので、魔力回復系のおやつと飲み物を色々買って帰って行った。

 冒険者達はどんな風にアイテムを持っているんだろうと思ったら、普通にリュックみたいに背負えるバッグに入れたり、ウエストポーチみたいなのにポーションは固定して持って行っているのだって。


 黒の魔石(小)で確か荷物が軽くなる効果を付けられたんだよね。少し容量が増やせるバッグって作っちゃダメかなぁ?


 お夕飯を食べ終わって、ヴァイスと一緒に錬金部屋に向かう。


「ねぇ、ヴァイス。少し容量が増やせるバッグって作ったらダメかなぁ?」


『ダンジョンでも出るし、収納バッグまでなら大丈夫だろう。だが、時間停止は止めておけよ』


「うんっ! みんな荷物が重そうで、あれで戦えるのか不思議だったんだよね」


『なるほどな。まあ、時間の経過が緩やかなのくらいは作って良いと思うぞ』


「良かった!」


『盗難対策にもバッグ型が良いと思うぞ。身に着けているから安全であろう』


「あっ、それもそうだね!」


 今度バッグを見に行ってみよう。まずはクリーン魔法が使える棒を作ろう。木材を錬金釜に入れて、魔力を流す。


 チーン!


 すぐにレンジの音がなり、蓋を開けると私が握ると少し細い棒が出来た。長さは20センチくらいにしておいた。あんまり長いと子供達が戦いごっこをしそうだしね。子供って棒を持つと振り回すよね。


 木の棒に緑の魔石(クリーン)を貼り付ける。貼り付け終わったら、錬金釜に入れて魔力を流す。


 チーン!


 錬金釜の蓋を開けて鑑定してみると、部屋クリーンと書いてある。そのままの名前でちょっとびっくりだ。

 試しに部屋クリーンを握ってクリーンと唱えると、私の周囲2メートルくらいを綺麗にしてくれる。でも、すでにクリーン魔法で綺麗にしているから、出来ているかよく分からないね。

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