第56話 師匠の出発

 レオナとラルスを送ってきた帰り道。まだ色々な屋台が出ているので、ヴァイスと一緒に色々な屋台でお買い物をしてからお店に帰ろう。


 お肉屋さんのベティーナさんの所へ寄ったら、外で旦那さんのルーカスさんがお肉を焼いている。とっても美味しそうな香りがしている。


「こんにちは。3本お願いします!」


「あっ、カノンさん。ありがとうございます」


「あら、カノン。来てくれたのかい」


「はい。とっても美味しそうなのでお夕飯に食べようかと思って」


「ありがとうねぇ」


 お金を渡してお肉を受け取る。串に刺したつくねみたいなお肉はとても美味しそうだ。ちょっとスパイシーな香りがするから、スパイスも入っているんだろうな。


『お腹が空く香りだな』


「ふふっ、早くお店に帰って食べようね」


『そうだな。早く帰るぞ!』


 いつもと違うメニューを出しているお店も沢山あったので、とっても楽しい。珍しくお酒も買って行っちゃおう。リンゴを使ったお酒があったので、それにしてみた。

 それと、ケイティさんのパン屋さんでは、お肉を挟んだパンとジャムを挟んだパンがあったので、それも買ってきた。


「師匠、ただいまです」


「おかえり。ちゃんと送ってきたのかい」


「はい。それとご飯を買ってきたので、食べましょう!」


「お祭りのご飯だなんて久しぶりだねぇ」


『カタリーナ。すごく旨そうだったぞ!』


「おや、それは楽しみだねぇ」


 キッチンのテーブルの上にお祭りで買ってきたものを色々出して、みんなで楽しく食べよう。リンゴのお酒は爽やかで、とっても美味しかった。しかも買ってきたご飯のどれとも合って幸せ気分だ。


「ん~っ、どれも美味しいっ!」


「ふふっ。建国祭がこんなに賑やかだったのは初めてさね。カノン、ヴァイス。ありがとうねぇ」


『よし、カタリーナ。こっちも一緒に食べるぞっ!』


「ふふっ、私も師匠とヴァイスと過ごせて嬉しいです」


「カノン、ヴァイス。明日出発するよ」


「……はい、分かりました」


『そうか』


 今日は師匠が出してくれたお酒まで飲んでしまって、ほろ酔い気分です。ヴァイスを抱っこして部屋に戻ると、さすがに今日の建国祭で疲れたのかぐっすりと寝てしまった。


「ヴァイス。おはよう!」


『おはよう。カタリーナと朝ご飯にするか!』


「そうだね。今日はパンケーキにしようか!」


『それはいいな。クリームとシロップたっぷりな!』


「ふふっ、それは良いね。師匠のも同じにしようね」


 ヴァイスの言ったように、たっぷりのクリームとシロップを掛けたパンケーキと温かい紅茶を入れて、3人で食べよう。


「師匠、おはようございます」


「おはよう。おや、今日も美味しそうだねぇ」


『今日のもきっと旨いぞ!』


 3人で仲良く美味しくご飯を食べたら、師匠に収納ボタンを渡そう。


「師匠、今までありがとうございました。収納ボタンを作ったので持って行って下さい」


「私も初めて弟子を取ったけれど、カノンとヴァイスとの生活とっても楽しかったよ。ありがとうねぇ。それにしても素敵な収納ボタンじゃないかい」


「師匠に似合うと思って。ご飯とお菓子と種が沢山入ってます。後は他にも色々入っているので確認してくださいね」


「カノン、ご飯とお菓子ってダメにならないかい!?」


「時間停止だから大丈夫ですよ~」


「……またやっぱり規格外だねぇ」


「えぇぇ!? そんな事ないですよ!? 白の魔石(大)を増やしたら普通に出来ましたよ~。ちなみに黒の魔石を増やしたら容量が増えました!」


「そ、そうなのかい!? さすがカノンだねぇ」


『カタリーナ。沢山料理もお菓子も種もあるから、当分カノンのご飯が食べられるぞ』


「それは嬉しいねぇ」


 師匠がとても喜んでくれたので、私も嬉しい。この後師匠は出発してしまうけれど、またランジェット王国に会いに行こう。この前のレッドドラゴンさんにも会いに行きたいしね。


 少ししたら、先日の手紙を届けに来た人が迎えに来た。師匠と一緒に外に出たら、他にも騎士様が何人も居た。物々しい感じだけど隣国のランジェット王国まで行くのだし、国王様のお薬を届けるのだからこれくらいしないとなのかもしれないね。


「師匠、本当にありがとうございました」


『気を付けて行くのだぞ』


「カノン。私こそありがとうねぇ。こんなに頼もしい弟子が取れたこととても嬉しく思うよ。この店を頼んだよ」


「はいっ! 師匠、お気をつけて」


「ああ、大丈夫さね。行ってくるよ」


 師匠が馬車に乗ると、すぐに出発した。やっぱり寂しくなってしまうけど、すぐにヴァイスがすりすりと慰めてくれた。ちょっとだけヴァイスをむぎゅっとして寂しさを紛らわす。


「カノン。またすぐに会いに行くと良い」


「うん、その時はよろしくね。ヴァイスがいるからランジェット王国でも、きっとすぐに行けるもんね」


「ああ、任せておけ」


 師匠の出発を見送ったら、お店を開ける準備をする。今まで午前中は色々な物を作っていたけれど、これからはお店があるからなかなか作るのが難しくなりそうだ。

 昼間は錬金道具でお菓子やポーションを作って過ごそうかな。そう考えると、錬金道具ってとっても便利なんだね。お店番をしながら錬金術が使えるって素敵すぎるね!


 回復ポーションを作るのは、材料は癒し草、水。手順は癒し草を刻む、蒸留水を作る、錬金釜に入れて魔力を流すだよね。今は錬金術(省略)スキルがレベル20まで上がっているので、工程と材料を4個減らせるんだよね。

 魔力を流す工程と、癒し草、癒し草を刻む工程、蒸留水を作る工程を省略出来るかな。ということは、お水を入れたボウルに錬金マドラーか錬金棒で混ぜたらポーションが作れる!?


 お店のカウンターの中にある作業台で作れば良いかな。ここなら外から見られないから省略スキルを使っても大丈夫そうだ。


『カノン、何をしているのだ?』


「ここならカウンターの向こうから見えないから、色々作れるかなって思ってね」


『なるほどな。何から作るのだ?』


「お水だけでポーションが出来るかなと思って、ちょっと試してみようと思ってるんだ!」


『……カノン。発言がおかしいといい加減気が付いたらどうだ?』


「いやいや。出来るならやらなきゃですよ?」


『我がおかしいような目で見るでない!』


「ふふっ。でも最近ちょっと順応してるって知ってる!」


『う、うるさいぞ!』


 しっぽで攻撃されそうだったけど、今日は避けられた! いつまでもやられっぱなしのカノンちゃんじゃないんですよ~!


「いたたっ」


『避けるからだ!』


 避けたら倍以上で攻撃された。おかしい、ちょっと得意気になったのがバレたのか攻撃がとっても痛かった。


 気を取り直して、ボウルにお水を入れて錬金棒を入れたら、ぽんぽんっ! と回復ポーションが次々と出来ていった。


『やっぱりおかしいだろ?』


「でもちょっと楽しいよ?」


 鑑定してみると、どれも回復ポーション(上級)と書いてある。これでこのカウンター内で錬金術が使えるね。足りなそうな物を補充しながらお店番が出来るって素敵です!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る