第40話 訓練場の一幕
俺は現実時間の午後5時にログインして、待ち合わせ場所の<アイスクリーム>本拠地に来ていた。
消耗品を補充して屋外訓練場に向かう。
爺さん(ワタベという名前らしい)はすぐに見つかった。
昔写真で見た若い頃にそっくりだったからもあるが、訓練場の真ん中で戦っていたからだ。
あれは…前に俺が稽古をつけたケンヤ君だろうか。
「はっ!効かねえせま!」
「嘘こけ。息が上がっておるぞ!」
驚いたことに、ケンヤ君は防戦一方ながらも爺さんと戦えていた。素直にすごいと思う。
ケンヤ…剣…ケンタロウ…もしかして、あれが桐谷さんとか?
「違うぞ」
真後ろから声が聞こえた。
「うわ!…もしかして桐谷さん?」
「うむ。ここではきりじいと呼んでくれ」
桐谷さんも爺さんと同じくらいの筋肉を持っている。が、その姿は老人のままだ。現実との整合性を重視したのだろうか。
「んじゃきりじいさん。あのケンヤ君はどう思う?」
「あれは…俺の孫だ」
「あー、納得した。母さんのお腹の頃から桐谷さんのところに通っていたら、そりゃ強くもなるよな」
「それがな、小さい頃に剣道を辞めてしまったんだが、最近いきなり『剣道を教えてくれ』と言い出したんだ。才能もあるし、あいつも伸びるだろう」
「ふーん」
桐谷さんが人を褒めるのは案外珍しい。本当に才能があったのだろう。
カン!
爺さんの拳でケンヤ君の小太刀が弾かれた。
「おぉぉりゃあ!」
ケンヤ君の鋭い右の蹴り。見事な判断力と瞬発力だ。
バシン!
だが、格闘戦は爺さんの本職だ。足は軽くいなされ、流れるような動作でケンヤ君は地面に叩きつけられていた。
パチパチパチパチ!
周りの観客から拍手が飛ぶ。
「じいちゃん。負けちゃった」
「うむ。しかし筋は良かったぞ」
ケンヤ君が戻ってきた。爺さんと戦いになっただけで、俺の知り合いの7割位よりかは強いだろ。
「龍斗か」
「おう。タツって呼んでくれ」
「把握したわい」
爺さんも戻ってきた。うっすらと汗をかいている。化け物が。
「なにか言ったかの?」
「いや?何も」
「そうか」
爺さんたちは無駄に感がいいんだから。
「あ!タツさんこんにちは!」
ケンヤ君が気づいてくれた。
「おう。久しぶり。元気が?」
「はい。この間組んだパーティも順調です!」
「それは良かった」
半分勢いで組んだパーティだったから、もし合わなければどうしようと思ってた。
「そうじゃ、ユウトが上で待っておるぞ」
「じゃあ待たせるのもなんだし、行くか」
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