幽霊少女と同居中の僕が人生について真剣に考えてみた

てぃるぴっつ

第1話

「おかえり~。ご飯にする?お風呂にする?それとも、ア・タ・シ?」

 

 黙っていろ。


 時間は夕方五時頃。用事を追えてアパートの一室へと帰還した僕は、フローリングの床に転がった漫画本を踏みつけないよう気を付けながらゆっくりと歩き、備え付けの簡素な椅子に辿り着く。スーツに皺が付かないよう慎重に腰を下ろした後、するりとネクタイを解いた。


 六畳間のスペースに、小型のテレビ、高さ約一メートルの小型冷蔵庫、コミックや新書、教科書が詰まった本棚、そして隅には正方形の机と、僕が載っている椅子が鎮座する。平凡な大学生である僕のこんな部屋は、同世代と比べても大差ないごく平均的な部屋だと思う。ある一点を除いては。


「ねーねー何か言ってよ。もしかしてシカト?私が見えないのかー!?すぐすばにいるのにー!」


 背丈は百六十センチ程。黒のカーディガンに白いロングスカートという女子大学生的な出で立ち。整った丸顔に茶髪のロングヘアーが良く似合っている彼女は、そう喚きながら床にダイブし、細長い手足をバタつかせる。ひとしきりバタついた後、あろう事か部屋中をグルグルと転がり始めた。


 六畳間というのは想像以上に狭い。転げ回れば家具やら壁やらにぶつかりまくって大変な事になるはずなのだが、なぜかそうはならなかった。彼女の体は壁や家具を貫通、いや、透過した。決して手品などではない。


「はいはい、見えていますよ。幽霊さん」


 そう、僕の部屋には幽霊が住んでいる。

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