第31話 感無量
~前回までのあらすじ~
突然卑弥呼が幽閉されると聞いた俺は、アマテラスの力で過去へと飛ばされた。
飛ばされた先は卑弥呼と弟によって治められていた倭の国。
卑弥呼が生前何をしたのかを見届けるために側に張り付いていたが、卑弥呼の未来を見通す力で国の滅亡と、俺が未来から来たことが発覚してしまった。
国と共に心中しようとする卑弥呼を助けようとするが、弟が復活させたヤマタノオロチと対決することに。
見事酒に酔わせて作戦勝ちをおさめるが、その際にいつの間にか未来を改編していたことを後に知ることになる。
大罪を犯した弟の魂を引き継ぐ俺は、その功績のおかげで罪に問われずに済み、卑弥呼も自らの罪は不問に処された。
一部の
「というわけでして……恥ずかしながら帰って参りました」
「ほんと恥ずかしいよなー。どんなツラして帰ってこれるんだよ。なあルナ」
「ほんとですよぉぉぉ! 僕がどれだけ卑弥呼様を待ってたと思うんですかぁぁぁ!
僕なしの回なんて誰も見てくれないに決まってるじゃないですかぁぁぁぁ!」
「そんなことはなかったですよ」
「そんなことはなかったぞ」
閑話休題。
「もう勝手にどこかに消えたりしないでくださいね」
「悪かったですって、もう勝手に去ったりしませんから。だからその手を離してください」
なんやかんやあったが、こうして無事帰ってこれたから良しとするか。
それにしても、仲良きことはいいことかな。と二人の微笑ましいくんずほずれつを眺めていると、シリアスパートが続いていた俺の脳内で、ビックバンにも劣らない化学変化が起きた。
ほわんほわんほわん――――
「およしになって。ルナさん」
「そんなこと言わないでくださいまし」
日が落ち、月が照す女子寮の一室。
一学年年下のルナが、上目遣いでそっと優しく、だけど、
どこにも行かないように
不安な気持ちで一杯なのだろう。また、知らないうちに愛しい人が自分のもとから去ってしまわないだろうかと、怯えていたのかもしれない。
過去のトラウマが彼女を臆病にしていた。
「そうね。ルナには不要な心配をかけてしまいましたものね。それなら、今夜は共に寝床に入りましょうか」
「……いいんですの? また、可愛がってくださいますか?」
おずおずと手の平を重ねる二人――夜はきっと長くなるだろう。
ほわんほわんほわん――
「おおお……」
「なに泣きながら拝んでるんですか。やっと信仰心に芽生えたのですか? それなら二礼二拍手一礼をもってあなたの資産を喜捨するがよろしい」
「卑弥呼様! わかってるんですか?」
「ちょ、わかってますから袖を引っ張らないでください! 袴が、袴がずれてしまいます!」
「ちゃんとわかってくれるまで離しません!」
「い、いつからそんな強気なキャラになったんですかあなたは!?」
やめろ、それ以上俺に見せつけるな。
ぐあ、頭が、頭が割れる!
ほわんほわんほわん――――
「お姉様! どうして私を避けるのですか!?」
「もう、終わりにしましょう。私達は別々の道を歩むべきだわ」
渡り廊下で別れを告げる卑弥呼の眼から、一筋の涙が流れ落ちる。彼女もまた、寂しさをこらえているに違いない。
卒業の季節となり、二人は離れ離れになる。明日には、他人になってしまう。
ルナは立ち去ろうとする卑弥呼の制服の裾を、あの日のように掴んで離そうとしなかった。離してなるものかと引き留める。
「お姉様……約束してくれたじゃないですか。どこにも行かないと……」
この一年で差がなくなった背中にもたれ掛かり、さめざめと泣くルナに卑弥呼はとうとう我慢が出来なくなった。
「ルナ……ごめんなさい……また約束を忘れるところでしたわ」
振り向いて抱き締める。このまま離れ離れになるくらいなら、ずっとこのまま――
「お姉様……」
桜が舞い散る秘密の園で、二人は確かに一つとなったのだ。
「はぁ……尊い」
「あなたの性癖は百合まで押さえてるのですか。こちとら百合っプルじゃないんですからね。その両手を合わせて感涙を流すのをやめろって言ってるでしょうが!」
今日も天界は平和です。
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