02【捕獲】一
その日も、いつもとなんら変わらない平日だった。
授業と部活動を終え、お隣さんの
ヨズミだ。
『やあ、帰宅途中にすまないね』
慌ててアプリ通話に出た弐朗と、たっぷりワンフレーズオルゴール音を堪能してから出た刀子に、ヨズミはとても高校三年生とは思えない貫録のある口調でそう言った。そして弐朗が「どしたんスか」と聞き返すのも終わらない内に、『それがね』と切り出し、続いたのは「仕事」の指示。
『東からお客さんがやってきた。
パチンと指を鳴らす音と共に出される行動開始の号令。
弐朗は指示を聞きながらブルートゥースイヤホンに切り替え、商店街を通り抜けて材木置き場に行くルートを脳裏に思い浮かべた。
距離にして三キロ程度。走れば十~十五分ぐらいか。傍らの刀子はスマートフォンに耳を当てたまま、どこを見ているのかよくわからない円らな黒目を見開きっ放しにしている。
「じゃあ俺、コッチ、商店街のほう行くけど、とーこダイジョブか? 何するかわかってる? ヨズミ先輩が車手配してくれるから、それ乗って材木置き場な。あのカブトムシ密猟地帯。わかるよな? 車ってどれだろ。タクシーなら
弐朗は等身大の人形が如く立ち尽くす刀子にあれやこれやと確認する。
刀子が「わかってるよー」と返事をしたところで、全く大丈夫そうには見えなかったもののとりあえず納得し、自らに与えられた仕事を全うすべく商店街に向かって移動を開始した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます