厨二病の俺が異世界に行っても理解できない世界
藤乃宮遊
第1話 運命とは
人生とはうまくいかないことだらけである。
例えば、就職だったり、友達だったり、大学生活も。というか、全ては人間関係なのだ。もしも、人間と一切関わらずに生活すれば、それは果たして人生が成功していると言えるのだろうか。
山奥で一切人間と関わらずに、自給自足で暮らしていこう。
すでに、人間を人間と認識して影響を与えられているのだ。
昔、赤ちゃんの頃に山に捨てられて狼に育てられた女の子がいたらしい。
彼女はそれで幸せだっただろうか。寿命も違う。姿形が違う。それに声も違う。匂いも。体の作りも違う。
彼女が保護された時には、狼は自分の娘だというように守ろうとしたそうだが、結局人間の手で人間の世界に連れ出されてしまったのだ。
そうかと。ここで思うのだ。
人間として存在している時点で、人間から逃れることは出来ないのだと。
人間社会から隔絶した世界で生きていたとしても、姿形が人間と同じだったら強制的に人間として生きていかないといけないのだ。
それも、顔が人間だったらそれでいい。
体の一部が欠損していても、正常に機能していなくても、それは人間なのだ。
人間として人間社会が決めているのだ。
僕は社会に逆らうことができない。
それが人間だからだ。
人間とはなんなのか。人間じゃなくなればいいのか。
こう自問自答しているのは果たしてなんなのか。
人間だから思うことなのだろうか。
もしも僕が鳥だったら、こんなことは思わないのだろか。
鳥には鳥の社会があるのだというが、彼らは「今」を生きるのが精一杯で、明日があるかもわからない。今を生きているのだ。今しかない今を。
それに比べて、人間はどうだ。
考えることは全て「未来」。
今を生きている生物がほとんどなのに、人間は今を生きていない。
どんな貧民だって、結局明日も生きているのだ。
どうして地球に存在している生き物のくせにそうなのだろう。
傲慢すぎやしないか。
「お前は、かなりひねくれているな」
先輩は、俺が書いている文章を覗き込みながら言った。
「そうですか?」
画面から視線を外さずに先輩に返答する。
そんな間でもキーボードを叩くのを辞め無い。
「自分は才能があるって思ってるタイプだ。
そういうやつほど周りを正確に判断できないんだ」
「何を言ってるんですか。
別に、俺に才能があるのは当然として、それをちゃんと把握して、人と人との関係をうまく渡り歩いているのが俺ですよ?」
「傲慢すぎやしないか」
俺が書いているレポートの言葉をそのまま引用して先輩は小馬鹿にする用に言った。
「そうですよ。
実際俺は新世界の神にでもなれる才能を秘めていますよ。
それがちゃんと評価されないだけで」
「まぁ、留年がかかってるレポートでこんな変な文章を書いているやつが持ってる才能は、誰も評価できないだろうね。
方向性が違うのかもしれないね」
「つまり、別の世界では俺の才能が活かせるのでしょう。
現代は俺と相性が悪かったのでしょうね。
俺の才能をうまく使えない現代がとてもとても気の毒ですね」
「そう捉えるのか」
「なにか言いましたか?」
「まぁ、あの教授はとりあえず読める文章を出せば単位をくれるくらい優しいので、頑張って書ききってくれ。
あの教授でも頭を抱えそうだけど」
「それは、俺の才能に打ち負かされるんですね。
どうして、こんな人間を今まで見いだせなかったんだ! ってね」
「はいはい、そうですね。
でも、あんまり人前でそんなこと言わないほうがいいよ。
私は知ってるからいいけど、変人だと思われるから」
「そう。変人と思うほうが変人なのですよ!!
この才能がわからないなんて」
「何度も言ってるけどね。
君の才能って、何なの? 私よくわからなくてね」
「だから、先輩も一般人なんですね。
俺の才能は、一般人にはできないくらいのーーーー」
「そうだね。あんまり聞かなくていいかなー。
逆に思うんだけど、一般人と才能がある君って、才能がある君のほうがマイノリティだから、下なんじゃない?」
「そうです。一般人はみんなそう思いますね!
マイノリティこそが世界を動かすのです!!
マイノリティが大衆を動かすのです!!
ボーリングのピンだって一番前に立てるのは一本なんです。
人間もそうだと思いませんか?
10本あって1本しか一番前に居られないように、
日本も1億人以上いる人工のわずか700人が決めた法律に縛られている。
実際権限を持っている与党はその過半数より少し多いくらいしか無い。
すると? 1億2000万人を引っ張っているのは、400人くらいのおじいさんおばあさんです!!
割合で言うと0.0003%なのです!! それが国の行く末を担ってーーーー!!」
「はいはい。うるさいうるさい。
ワカッタヨ。私が悪かった。君は才能にありふれている」
「なんか含みのある言い方ですが。
理解してくれてありがとうございます。
やはり、俺が世界を変えないといけないんですよ」
『だったら、世界を作ってみるかね?』
「そうですね。俺が作った世界なら、全てがうまくいくでしょう。
なにせ、この俺が管理するのですからね」
「一人で管理するなら、それはもう独裁者だよ」
「だったら、先輩も手伝ったらどうですか?
今なら、俺の世界で秘書という立場で迎えましょう」
『わかった。二人だな』
「そうだな。
この際、吉沢ゼミのみんなも呼ぼう。
俺の才能を見いだせなかった他の教授たちも呼んで、世界を作ってみるのも良さそうだ」
『分かった。彼らも一緒に呼ぼう』
「うーん。先輩。
新しい部員ですか? なにか偉そうですが」
「そうだねー。
私は一抜けしたいなー、世界を作るとか、いろんな教授に見てもらうんでしょ?
ちょっと、面倒くさいなぁ」
「そんなこと言ってるから先輩は来年同学年になるんですよ?」
「うーん。君が一つしたで足踏みしてるから、実際同じな気がするよ」
『では、用意ができた。
新しい世界でうまく世界を作るがいい』
「誰ですか?」
と、一旦俺の記憶はここから途切れている。
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