怒ってる

 おじいちゃん......隆さんの家に行くことになった。

 おばあちゃんと隆さんが喧嘩をして実質別居状態になってから約一週間。自分にもその喧嘩の原因はある。

 彼の礼儀の無さを指摘したこと、それが今回の喧嘩の発端だ。きっかけさえあれば過去五十年にわたって互いに降り積もった不満が勝手に燃え上がっていった。

 自分に一因があるということが私を悩ませ、よく眠れなくなった。

 きっかけはとても簡単なことだが事態は面倒な方向へと向かっていった。

 隆さんは、おばあちゃんが家を出てからというもの仏様にご飯を捧げることさえしなくなったらしい。実際に自分で確認しているわけではないのでただの想像であるのだが、きっと掃除もしていないのだろう。

 彼はその喧嘩の最中に

「ええわ。そんならわしが出ていくそれでいいな。皆聞いたな?」

と、俺と兄、そしておばあちゃんに全員に行ったのにも関わらず、5分も経てば彼は自分の言ったことをまるでそんなことは言っていないというように撤回し怒鳴った。

「ここはわしの家や。せやからお前らが出ていけ」

と。

 それ以来俺はふとした瞬間にその光景が思い出されるようになった。そのせいでストレスや怒りは溜まり、体調は悪くなる一方だった。

 明日はその彼の家に行き彼に会い、話さなければならない。

 そのことを考えただけで怒りに蝕まれたいった。

 彼がいつ死のうと、どうでもいい。

 彼は家族全員から不満を買っていたので誰も彼の身を案じない。

 俺は特段好きでも嫌いでもなかったのだが、今回の一件で嫌いになった。

 もし明日会って怒りを煽るようなことを言われたら手を出さない自信がない。

 どうか俺を前科持ちにしないでくれ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る