第十一章:終焉!オレ達の未来をつかみとれ!

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『ふむ、やっと勝者が決したようじゃな!』


 高い空の上から、光り輝く石版が降りてくる。神様候補同士の戦いを始めた、恵殿えでん神社の神様だ。


『そうか。やはり勝ち残ったのは人神ヒュウマであったか』

「……ああ」


 宙にぷかぷか浮いている神様は、最初から勝者の予想がついていたみたいな言い方をする。

 確かにヒュウマさんはとんでもなく強かったけど、まるでオレ達の頑張りが無意味だった、みたいなかんじで嫌な気分だ。


『さて。お主の優勝を祝って、神様授賞式でもしようかのう』


 ぱっ、と石版の光が強まる。まぶし過ぎて、目が開けられないくらいだ。

 一体何をする気なんだ……?


「え?わたくし……どうしてこんな汚い場所に……」


 すると突然、縦ロールヘアーのお姉さん――サイさんが現れる。


Whatなに?どういうことですカ?」


 今度は黒い眼鏡をかけたお兄さん――ピーシィさんだ。


「あれ?サラ、いつの間にこんなところに来ちゃったんだろ?」


 続けてツインテールの女の子――サラちゃんもやってくる。

 みんな今まで戦ってきた相手。神様候補だった人達だ。ということはもしかして……。


「これが瞬間移動という現象なんだね」

「いやいや、オレ何もしてないぞ!?」


 カンブさんとギンガも光の中から出てきた。

 どうやら授賞式をするために、神様が負けた神様候補を呼び出したんだ。

 これでこの空き地に、十人の神様候補だった人全員がそろったことになる。


『よく集まってくれた、子供達よ。遂に新しい神様が決定したぞ。今からそれを祝して、神様授賞式を行うのじゃ!』


 ちょっと待ってよ。「集まってくれた」って言うけど、むりやり呼んだのは神様じゃないか。これといい戦いに巻き込んだことといい、なんか神様って勝手だなぁ。


『では早速……ごほん。次の神様の座を勝ち取ったのは~~~人神ヒュウマじゃ!パチパチパチ~!』

「……」


 次の神様になれると決まったのに、ヒュウマさんは全然喜んでいない。表情は冷え切ったままで、ハイテンションな神様との温度差が激しい。


『ヒュウマは優秀な子供でのぅ、お主達も強さは身に染みていると思う。では、なぜそんなに強いのか。まぁそう言っても、理由を知る者はおらんじゃろうな』


 神様は気にせずしゃべり続けている。


『実はお主達に分け与えた力は、思いが強ければ強いほどパワーを発揮するというものなのじゃ!つ・ま・り、ヒュウマはこの中で一番、やる気があったということじゃな!』


 ああ、なるほど。だから神様はヒュウマが勝つと分かっていたんだ。実際にオレ達の能力とは比べものにならない、別次元のパワーだったし。

 でも、そんなに人間の進化を大事に思っているはずなのに、何で飛雄馬さんは嬉しそうじゃないんだろう。それに人間の悪いところばっかり言っていたし……。

 謎は深まるばかりだ。 


「負けちゃったか、カイタ」


 ぽん、と肩にギンガの手が置かれた。オレをなぐさめに来てくれたみたいだ。


「ごめん。紫色のオーラの人……ヒュウマさんはやっぱり強かったよ」

「いいってことよ。お前は全力で頑張ったんだろ?なら十分じゃねーか」

「そうだね。彼の方が僕達より、進化に対する思いが強かった。カイタ君は何一つ悪くないさ」


 ギンガとカンブさんの言葉が胸にしみる。悔しいけどその優しさが嬉しくて、泣きたくなってしまう。


「ねぇ……あたしには何かないの?」

「あ、オレのかたきを取ってくれてサンキュー」

「ちょっと、あたしの扱い軽くないかしら?」


 メブキさんは不満顔で、ギンガをドつき回している。だけど重い荷物を下ろした後みたいな、スッキリした顔にも見えた。


『……ということで、次期神様。優勝した感想を一言、よろしくなのじゃ!』

「……」

『あのぉ、何か一言……』

「……」

『お、おぅ……感動して言葉も出ないということじゃな!ほっほっほ……』


 あまりにも反応がなさ過ぎて、神様はやりにくそう。石版が空中であたふたしていて、絵面がすごくシュールだ。


『そ、それでは続いて……神様継承式を始めるとするぞ~!パチパチパチ~!』


 むりやりテンション上げているし。


『ヒュウマよ。お主の中にはこの戦いで集めた、神の力が十個あるはずじゃ』

「……」

『つ、つまりじゃ。その力を一つにまとめれば、お主はもう神様になれるということなのじゃ!』

「……そうか」

『お、やっとしゃべってくれたか』


 返事が聞けてほっとする神様は、光る石版から三つの光の輪を出す。まるで『0』みたいな形をしている。


『この光を取り込めば、晴れてお主も神様の仲間入りじゃ』

「これで……我が神になれるのか」

『うむ。その手で掴むがよい!』

「……ああ」


 ヒュウマさんは浮いている光の輪を、三つ一気に掴み取る。するとヒュウマさんの体から、ギラギラ輝く神々しい光が溢れ出す。隣の石版とは、比べものにならないほどだ。

 これが、新しい神様が誕生した瞬間なんだ。


『ほっほっほ、新たなる神よ。お主はどんな世界を望むのじゃ?』


 ぜん神様が、神様になったヒュウマさんに問いかける。

 強い願いを胸に戦ってきたヒュウマさん。人間そのものの進化を目指して、ずっと戦ってきた。一体どんな世界を作るつもりなんだろう。


「……我は世界に何も求めていない」

『ん?それはどういうことじゃ?』

「我が望むのは、人類滅亡。それだけだ」

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