第七章:危機!親友にバレちゃった!
7-1
「うおーっ、広いなーっ」
「だろ?一度来てみたかったんだよな」
今日はギンガと一緒に、街一番のプール遊園地に来ている。ギンガがずっと「行きたい」と言っていた場所だ。
ウォータースライダーや流れるプール。あと落ちたら水の中へドボンな、水上アスレチックもある。
お客さんもたくさんいて、周りから「キャーキャー」声が聞こえてくる。みんな楽しそうだ。
「よーし、どれから遊ぼうかな~?」
最近は神様候補との戦いで、大変なことがいっぱいだった。今日は一旦全部忘れて、全力で遊んでスッキリしよう。
「ちょっとーっ。私のことエッチな目で見ないでよーっ」
その時、女の人の声が聞こえた。
何事かと思って声がした方――プールサイドを見ると、何やらざわざわしている。どうやらもめ事らしい。
「はぁ?何言ってるんだよ、あんた?」
「そうだぜ、オレ達はあんたの前を通っただけだから」
「そうよそうよ」
「つっかからないでもらえますかぁ?」
大人の男女四人、カップル二人組が口々に文句を言っている。相手はスクール水着を着ていて、中学生くらいのお姉さんだ。
「男なんてみんなエッチなのよ。あなた達だって女性なら、こんなスケベ相手にベタベタしないでもらえるかしら。女性全体の品位に関わるわ」
「ちょっと、あんた。年下のくせに生意気ね!?」
「もしかして、あたしらがラブラブでぇ、うらやましいんじゃな~い?」
「きぃーっ!そんな訳ないでしょ!わ、私がその気になったら、絶対モテるんだからっ!しないけどねっ!」
言い返されて、スク水お姉さんが顔を真っ赤にしている。金切り声になっていて、めちゃくちゃ怒っている。
「どうした、カイタ?」
「ううん、何でもない」
けんかを止めたい気持ちはあるけれど、神様候補のことだけで手いっぱいだ。今は心穏やかに過ごしたい。
スク水お姉さんは、まだ叫びまくっている。カップルコンビは
オレとギンガは巻き込まれないよう、そーっと離れることにした。
※
思う存分プールで遊んだ。おかげで体はへとへと。でも心はスッキリさわやか、気分リフレッシュ。明日からも頑張れそうだ。
オレ達はプールの帰り道、暑いアスファルトの上を歩いていた。昼間なので誰もいない。きっと屋内で涼しく過ごしているんだろう。
「そういえば最近忙しそうだったけど、大丈夫なのか?」
「え!?な、何のことかな……あはは」
ギンガがいきなり聞いてきて、ドキッとしてしまった。とりあえず作り笑いでごまかす。
オレが神様候補だってこと、ギンガには伝えていない。戦いに巻き込んじゃうかもしれないから。だから適当にはぐらかしたんだけど、ちょっと心が痛む。
大切な親友に、ウソをつかないといけないなんて。でもこのことを知ったら、きっとギンガは協力するって言う。オレのために一緒に戦おうとする。そんな危険なこと、絶対させたくない。
「……はぁ」
「ほら、やっぱり。大変なことだったら、相談に乗るぜ?」
「い、いやいやっ。心配しないでよっ」
「心配するさ。オレら友達じゃねーか」
ギンガが、ずいっと迫ってくる。真剣な目をしている。これは話した方がいいのかも……いや、ダメだ。ギンガに戦わせたくない。
「じゃあさ、オレっちも隠していること話すからさ。カイタの悩み事も教えてくれよ」
「か、隠していること……?」
ギンガも、オレに何かを隠しているらしい。そんなの全然気付かなかった。一体何なのだろう?
「そ、そうだなぁ……どうしよう――」
「ちょっと、そこの男子!」
突然、割り込んでくる人がいた。ぬれた長い髪に、長袖とロングなスカート。見るからに暑そうな格好だ。
さっきプールで騒ぎを起こしていた、叫びまくっていたお姉さんだった。
「何なんですか、お姉さんは?」
「私の名前は
お姉さんがバッグから金色のイヤリングを取り出し、右耳に付ける。その瞬間、黒いオーラが体から立ち上る。
「――あなたと同じ、神様候補の一人よ」
お姉さん――ミクさんはそう宣言した。
なんて、最悪のタイミングだ。
ギンガがいる前で、他の候補者と出会ってしまった。ここで神の力を使ったらバレちゃうし、戦いに巻き込んでしまう。
「ひ、人違いじゃないかなぁ……あはははっ……」
オレは苦し紛れにはぐらかす。でも、声が
「機組屋カイタ、物作りが大好きなんですって?」
でも、ミクさんには色々バレバレだった。
「な、なな何で知っているんですかっ……!?」
「金髪眼鏡の男に教えてもらったからよ」
「ああ……そういうこと」
十中八九、ピーシィさんのことだ。余計なことを話したな、あの人。
って、過ぎたことを考えていても仕方ない。
状況はどんどん悪くなっている。ミクさんはオレのことを知っているので、ごまかしてやり過ごすのは無理そうだ。
「別に戦いたくないならいいわよ?その代わり、お友達が酷い目に遭うだけだから」
「そんなっ……!?」
それどころか、ギンガを襲おうとしている。なんとしても、この場で戦うつもりなんだ。
いくらオレが戦いたがらないからって……なんて卑怯な手を使うんだ。
「酷い目だって?それならオレっちが――」
「ギンガ、下がっていて!」
挑発されて前に出ようとしたギンガを、オレは手をかざして抑えた。
ここまで来たら、もうやるしかない。覚悟を決めるんだ。
「ずっと内緒にしていてごめん。オレ、神の力が使えるんだ」
隠し事を打ち明けてでも――ギンガを守るんだ!
「『ジャンク組成ダー』!」
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