6-4
オレは両腕に、つぎはぎまみれの小さな盾を作り出す。鎧は重かったので、この盾で攻撃を防ぐのだ。
「それそれそれーっ!」
ガンガンガンガンガンガンッ!
サラちゃんのパンチが連続で繰り出される。オレは全部盾でガード、音はすごいけど体は平気だ。
「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃーっ!」
ガガガガガガガガガガガガガッ!
パンチのスピードがどんどん上がっていく。まるでパンチの雨、大嵐だ。それでもオレは防ぎ切る!
「うりゃりゃりゃ――ひゃあっ!?」
サラちゃんの手が止まる。両手に鎖が絡まっているからだ。
「オレだって、守っているばっかりじゃないぞ!」
攻撃真っ最中のサラちゃんに、オレお手製の鎖を巻き付けた。さっきのトラップと同じ手だ。
サラちゃんは一つのことに集中すると、周りが見えなくなるみたい。その隙を突いたんだ。
「こんな物……こうだもんっ!」
思いっきり引っ張って、サラちゃんは鎖を引きちぎって破壊。やっぱり変身パワーが強過ぎる。作った物がどんどん壊されて悲しいぞ。
「おにーさん、全然攻撃してこないねー」
「戦いを止めたいって言っているんだから当然だよ」
「ふーん。なんか、つまんない」
ちっ。
サラちゃんが舌打ちした。次の瞬間、
「もう終わりにするね」
赤いオーラが大噴火、マグマみたいに溢れ出した。
これはマズイ。何かとんでもない、デカイ技が飛んでくる。
「『マジ☆マジ魔ギカ スーパーエクスプロージョン』!」
サラちゃんの手のひらから、極太のビームが放たれる。オーラの色と同じ、真っ赤な光が迫り来る。
まるで変身ヒロインの必殺技。でもこれは優しさがかけらもない、超高熱のビームだ!
「う、うぉぉおおおおおおおおおおおおおおっ!」
両腕の盾を重ねて、ビームを防ぐ!
じゅうじゅう、と金属が焼けていく。まるでフライパンの上の、焼き肉みたいな音だ。
ビームの熱が、盾を溶かし始めているんだ……!
「ぐぅっ……もってくれ、オレの盾……!」
耐えきれることを祈る。
けれど、残念なことにもう限界みたい。ドロドロと、段々盾が崩れていく。
「ジャ……『ジャンク組成ダー』!」
完全に溶けきる前に、新しい盾を作り出す。だけど急いで作った物なので、すぐに悲鳴を上げ始める。
「うぐっ………うわぁぁああああああっ!?」
ビームを防ぎきれず、盾はバラバラになってしまった。
オレはビームで吹き飛ばされる……が、少しのやけどで済んでいる。盾が守ってくれた分だけ、ビームの威力が落ちたみたいだ。ありがとう、盾さん。
「くぅっ……!」
ゴロゴロと、オレのところにメブキさんも転がってくる。
どうやらシズクさんのサクラエビ攻撃にやられたらしい。体が傷だらけになっていて、ところどころ血がにじんでいる。
「だ、大丈夫!?」
「あなたこそ、やられているみたいじゃない」
オレ達は、二人そろって押し負けている。せっかくメブキさんと分かり合えると思ったのに、ここでおしまいなのか……!?
「『
シズクさんは追い打ちに、足がめちゃくちゃ長いカニを呼び出す。これまた食材の登場だ。
「やっちゃえ」
合図と共に、サクラエビとカニ――おいしい
もうダメだ。そう思った時、
「『オレノイデス・ミメティクス』!」
岩で出来たシャッターが、攻撃を防いでくれた。
オレンジ色のオーラを放つお兄さん……頼もしい先輩のカンブさんが助けに来てくれたんだ!
「ふぅ、危ないところだったね」
「あなたに助けられるなんて、一生の不覚だわ」
メブキさんは、カンブさんのことが気に入らないみたい。せっかく助けてくれたのに、じとっとした目でにらんでいた。
「新しい相手ね」
シズクさんは全然動じていない。むしろ新しい敵の登場に、ワクワクしているように見える。海の生き物の能力を使う同士だからかもしれない。
「もーう、何よ何よーっ!また邪魔者が増えたーっ!」
一方のサラちゃんは、ぷんすか怒っている。しかも分かりやすく、じだんだを踏んでいた。そのせいでアスファルトが割れているんだけどね。
「サラちゃん、もうこんな戦いなんてやめるんだ!」
「だから嫌だって言っているでしょ!?サラは魔法が使える世界を作るの!それでパパとママにいーっぱい、よしよししてもらうんだもんっ!」
サラちゃんは褒められたくて戦っている。新しい神様になって、魔法の世界を作ろうとしているんだ。
「サラは、勉強も運動もダメダメだけど……魔法が使えたら、きっと一番なんだもん!」
テストの点数を褒めてほしい。徒競走で一番になったのを褒めてほしい。それと同じ。
サラちゃんの気持ちは、オレ達普通の小学生と同じ思いなんだ。
でも、そのために戦うなんておかしい。同じ子供と争って、神様になるなんておかしい。
もっと別のやり方があるはずなんだ……!
「だからだから、サラの邪魔を……しないでぇぇええええっ!」
目にいっぱい涙を溜めて、サラちゃんが叫ぶ。
また、必殺技みたいな魔法が飛んでくる――はずだった。
「――あ……っ」
ばたり。
サラちゃんが倒れた。その体からは、もうオーラが出ていない。
そして代わりに、一人の男の人が立っている。その姿はフードを被っていて、紫色のオーラが出ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます