第六章:乱闘!神様候補入り乱れ!

6-1


 ピーシィさんがやられてから、数日が過ぎた。

 あれからずっと、紫色のオーラをした人を探している。生身なのにとても強い、だけど神様候補を容赦なく倒す人。

 この戦いを止めるためには、まずその人をどうにかしないと。


「今日も見つからないなぁ……」


 夕方になったのに、まだ会えない。最近、ずっとこんな調子だ。もしかしたら、普段はアイテムを外しているのかもしれない。だとしたら、オーラが出ているのは戦う時だけだ。


「頼みは……コレだけか」


 その一方で『バトル発見ダー』も反応もさっぱりない。街中に出ているのに、うんともすんとも鳴らない。最近は戦いがないようで何よりだけど、静か過ぎて逆に怖い。

 自分で作った物だけど、いまいち信用出来なくなってきた。反応しない方がいいことなんだけどなぁ……。


「あっ」

「あなたは……」


 その時、曲がり角でメブキさんとばったり出会った。今日も変わらず、ポニーテールを揺らしている。


「や、やぁ……こんにちは」

「あいさつするような仲でもないでしょ?」


 メブキさんが鋭い目つきでにらんでくる。やっぱり怖い。

 でも、そんなこと言っている場合じゃない。メブキさんに紫色のオーラの人のことを、とんでもない神様候補がいることを教えないと。


「あ、あのさ――」

「ちょうどいいわ。この場であなたを倒させてもらうわ」

「え、ええっ!?急に!?」


 オレの言葉はさえぎられて、メブキさんは勝負を挑んできた。


「急にも何も、この前の続きよ」

「この前って、あの河原の……」


 朝早くから戦っていた件、メブキさんが怒って帰ってしまった時の話だ。あの時のイライラを、まだ引きずっているらしい。


「早く準備しなさい」

「だからオレは戦う気なんてないんだってば……!」

「なら、さっさとそのブレスレットを渡しなさい」

「ダメだよ、神の力がなくなっちゃうじゃん!?」

「そのつもりに決まっているでしょ」


 メブキさんはなんとしても、この場で決着をつけたいみたいだ。緑色のオーラも、どんどん勢いを増してきている。


「そ、そういえばあの時さ、『話を聞いてくれない』って言っていたじゃん?よかったらオレが――」

「うるさいわね。そんなことより戦いなさい!」

「それならせめて――……あ」


 視界の端っこ――道の先に、赤いオーラが見えた。

 ツインテール頭の小さな女の子。河原で戦っていた、サラちゃんという子だ。確か、普通の人に向けて神の力……魔法を使う子だったはず。


「あの子は……!」


 メブキさんから湯気みたいに、緑色のオーラが一気に吹き上がる。神の力を悪用するサラちゃんを倒すつもりなんだ。


「ス、ストップ!メブキさんストップ!」


 オレは急いで手を掴み、メブキさんを引き留める。


「何のつもりよ、あの子は――」

「友達と一緒みたいだからだよ!」


 よく見ると、サラちゃんの横には他の女の子の姿があった。三人いて、みんな同じくらいに小さかった。同級生、友達なんだと思う。


「……そ、そうね。普通の子を巻き込むのは、良くないわね」


 メブキさんも気付いたようで、ほっとした。

 もし友達の前でバトルになったら大騒ぎになってしまう。それこそ、悪用するのと変わらない。早めに止められて良かった。


「でも、本当にあれって友達かしら?」

「……え?」

「よく見てみなさいよ」


 友達じゃない?

 どういうことかと思って、オレは目をよく凝らす。

 そこにいるのは、サラちゃんと同級生っぽい女の子が三人。ぱっと見は友達に見えるけど、


「なんか……口げんかしている?」

「違うわ。声もしっかり聞きなさい」


 どうも様子がおかしい。

 女の子達はサラちゃんを責め立てているように見える。ということは口げんかかな、と思ったけどそれも違うみたいだ。

 オレはメブキさんに言われた通り、少し近づいて聞き耳を立てた。


「サラってバカ過ぎだよね~。しかも体育も下手っぴとか、マジないわ~」

「ホントホント、名前通りマジないわ~」

魔品衣まじないサラだけに~、キャハハッ」


 あれは友達なんかじゃない。サラちゃんの名字をネタにして、苦手なことを責めていじめているんだ。


「ほらね、違ったでしょ?」

「そうだけど……早く止めないと……」

「あなた、色々首を突っ込むわね」

「悪いけど、ああいうのは許せないんだよ」


 争いごとは嫌いだけど、弱い者いじめはもっと嫌いだ。笑い合って過ごせないのが、一番嫌なんだ。

 オレはいじめを止めようと、女の子達のところに行こうとした。その時、


「……さい」

「え~、何だってぇ?よく聞こえないんだけどぉ、マジない――」

「うるさいって、言ってるのっ!」


 サラちゃんが叫んだ。するとドカンッ!と赤いオーラが爆発した。


「『マジ☆マジ魔ギカ』!」


 ピカッ、バリバリバリッ!

 次の瞬間、女の子達の足元に雷が落っこちた。魔法で落雷を起こしたんだ。

 そうか、そういうことか。

 サラちゃんが魔法で暴れる理由は、いじめのやり返しのためだったんだ!


「きゃあっ!?」

「何なのっ!?」

「きょ、今日は晴れだよね!?」

「もう一発、『マジ☆マジ魔ギカ』!」


 サラちゃんが、また呪文を唱える。今度は本気で、いじめっ子達に雷を落とす気だ!


「『草木の気持ちグリーン・ブルーム』!」


 メブキさんが、道路に大きな木を生やす。すると雷は木の方に落っこちた。

 そういえば、雷が鳴っている時は木の下にいちゃダメ、って話を聞いたことがある。雷が落ちてきやすいからだ。

 だからメブキさんは大きな木を出して、雷を引き寄せる避雷針ひらいしんの代わりにしたのか。頭いいなぁ。


「あなた達、人をいじめるからこういう目に遭うのよ」

「ご、ごめんなさ……」

「分かったら、さっさと逃げる!」

「「「は、はいっ!」」」 


 メブキさんにしかられて、いじめっ子達は大急ぎで去っていく。

 これで周りを気にせず、サラちゃんと戦えるようになったみたいだ。


「何よ、またサラの邪魔をするの!?」

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