第五章:交渉!侵入する悪魔のささやき!
5-1
今日は家のパソコンで調べ物だ。と言っても、勉強のことじゃない。
いや、一応勉強なのかも……う~ん、微妙なところだ。
オレが調べているのは、カンブリア紀についてだ。
昔の生き物大好きなカンブさんが、よく話してくれる言葉……なんだけど、全然知らなくて困っちゃう。
ということで、気になるので調べてみようと思ったんだ。
「ふんふ~ん♪」
誰もいないので鼻歌も歌いながら、オレはキーボードをカタカタ鳴らす。何度か押し間違えながら、文字を入力する。
検索ワードは『バージェス動物群』。
カンブさんが大好きな、カンブリア紀の生き物のことを、そう呼ぶらしい。他にも難しい名前がいっぱい並んでいたんだけど、なかなか覚えられないんだよね。
「お、出てきた出てきた」
検索したら、あっという間だった。
画像付きで詳しい説明が見放題。化石から復元想像図、見つかった場所の情報もある。漢字が多くて、読むのが大変だけど。
いやぁ、パソコンって本当に便利だな。知りたいことがすぐ分かる。インターネット上の、色んなウェブサイトにすぐアクセス出来るんだ。
どういう風に考えたら、こんなすごい仕組みを考えられるんだろう。オレもいつか、こんな大発明を作れるようになりたいな。
そういえば、ちょっと昔まではパソコンを手作りしている人もいたらしい。こんなに複雑な仕組みを、趣味で組み立てられるなんてびっくりだ。どこで勉強したんだろう。オレも『ジャンク組成ダー』をいっぱい使って、物の仕組みや作り方を学ばないと。
おっと、話が脱線しちゃった。
今はカンブリア紀を調べていたんだっけ。ええと、『バージェス動物群』というのは……。
「これがアノマロカリスでこっちがオパビニアか。不思議な姿をしているなぁ……。確か、どっちもカンブさんが使っていたような――」
『
「うぉあっ!?」
その時突然、パソコンのモニターいっぱいに、眼鏡をかけた金髪のお兄さんが映る。顔や体には光るライン、電子回路が浮き出ている。この前戦ったピーシィさんだった。
「え、え!?どうしてオレのパソコンに!?」
『決まっているじゃないカ。ワタシの能力でユーのパソコンに侵入したのサ』
ピーシィさんの能力は、体が数字まみれになる『
前に戦った時は、ショベルカーとダンプカーの中に入っていた。よく覚えている。ひかれかけたんだ、忘れられる訳がない。
……ってことは、今度はオレのパソコンに入ったってこと!?
『そこの、インターネット回線を通れば簡単サ。神の力があれば、セキュリティシステムなんて
「マジかよ……最新版のウィルス対策をしているのに……」
オレのパソコンからは、ゆらゆらと灰色のオーラが出ている。どこからどう見ても、ピーシィさんに乗っ取られていた。
ニュースでよく聞くけど、サイバー攻撃って怖い。ちょっと油断している間に、簡単に侵入されてしまうんだ。
「一体、何のつもりなんですか……?」
パソコンの乗っ取りというと、遠隔操作して悪いことに使うつもりなのか。うーん……あり得ないか。神の力があるのに、わざわざそんなことするとは思えないし。
それならこの前の情報集めみたいに、個人情報を抜き取って利用しようとしているのか。……でも、オレのパソコンって大した情報入っていないし、それって普通は会社とかにすることだよね。多分、この戦いに関係ないし。
ホント、何しにオレのパソコンにやってきたんだ、この人?
『
「話……もしかして戦いをやめる的な話で――」
『ワタシと手を組みませんか、カイタクン?』
「……うん?」
手を組む……って、それはつまり一緒に戦うってこと?
でも神様候補同士は敵で、オレはその戦いを止めようとしているから……あれ?頭がこんがらがってきたんだけど。
頭から煙が出ちゃいそう。
「う~んと。それってつまりさ、オレと一緒に戦いを止めてくれるってこと?」
『ちょっと違うかナ。要するに、ワタシとコンビを組んで他の候補者を倒しましょうって話だネ』
「はい?」
やっぱり、頭の上に『?』マークが浮かんじゃう。
ピーシィさんの話がよく分からない。戦いを続けるのに仲間になるって、意味不明だ。
もうちょっと簡単に説明してほしい。
『ユーの機械を作る能力と、ワタシの機械に入り込む力。相性はバッチリだと思うんですヨ。だからコンビで戦えば、どんな相手でもきっと
それは一理あるかも。
確かに同じ機械に関する能力だもんね。
「でも、それじゃあ最後に二人残っちゃうじゃないですか」
『ん~、それは違いますネ。神様になるのは、ワタシ一人。ユーが最後に、神の力を渡してくれたらOKだヨ』
「なるほど~……って、何でそんなことしなくちゃいけないんですか!?」
『ユーは物作り、ワタシはその物作りが発展した姿。だからワタシに従うのは当然だと思いますガ?』
ああ、ダメだ。
ピーシィさんの意見は、あの時から全然変わっていない。
自分の方が偉い、物作りの方が下だと思ったままだ。人が作り上げた技術に、上も下もないはずなのに。
そんな自分勝手な考えの人に、協力なんて出来ない。
「悪いけど、ピーシィさんの話には乗れないよ」
『オ~ゥ、それはとても残念ですネ』
ピーシィさんはわざとらしく手を上げて、とても悲しそうなポーズを取る。
「なので、帰ってくださ――」
『じゃあ、ユーのパソコンをbreak down《こわす》……壊しちゃうヨ?』
「――え……ちょっと待って、今なんて……えっ!?」
なんと、今度は
ピーシィさんはオレのパソコンと一体化しているから、壊すことも出来るらしい。これじゃあ人質じゃなくてパソ質だ。
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