エヴォルエデン~進化争奪バトルロイヤル!~

黒糖はるる

第一章:突然!?神様候補になっちゃった!?

1-1


 キーンコーン、カーンコーン。

 チャイムが授業の終わりを知らせてくれる。でも、今日はちょっと特別。


「やったーっ!夏休みだーっ!」


 そう、今のチャイムで一学期の授業は全部終了。明日からは待ちに待った夏休みが始まる。

 オレ――機組屋きぐみやカイタは、喜びで飛び跳ねまくった。


「おいおい、カイタ。夏休みは楽しいことばかりじゃないんだぜ?」


 ワクワクしているところに水を差してきたのは、親友の星宙ほしぞらギンガだ。ボサボサ髪の頭を、オレの肩に乗せてくる。


「なんだよ、もう。夏休みって言えばいっぱい遊ぶに決まっているだろ?一緒に色んなところに行くって、約束したじゃんか」

「そうだけどさ。宿題も山盛りって忘れているだろ」

「あ、そっか」


 そう。オレ達は小学四年生……つまり上級生の仲間入りをしたんだ。勉強は難しくなったしやることも増えた。そのせいで夏休みの友をいっぱい。毎年宿題をやらないオレ達にとって、まるで地獄のプレゼントだ。


「勉強は嫌いなんだよなぁ」

「でも自由工作は楽勝なんだろ?」

「へへん、まぁね」


 もし夏休みの宿題が全部工作だったら良かったのに。そうしたらきっと成績も一位だと思う。

 もっとみんなが物作り大好き人間になって、毎日が工作やりまくりの天国になればいいのにな~。


「工作なんてゴミが増えるだけじゃない」


 冷たい声が、オレの後ろからかけられた。

 ポニーテールに金色のヘアピン姿の、草持くさもちメブキさんだ。

 始業式と同時に引っ越してきた女の子で、いつも鋭い目の怖い顔をしていてミステリアス。そのせいでずっとひとりぼっちだ。まぁこんな風に余計なことを言うから、遠ざけられちゃっているんだけどね。


「おい、メブキ!今のはちょっと失礼じゃねーか!?」


 ギンガがオレの代わりに怒ってくれている。でもメブキさんは気にせず、さっさと帰ってしまう。


「いいんだよ」

「でもさ……」

「オレの工作はまだまだって、自分でよく分かっているから」


 まだ小学生で技術もそこそこ。役に立たないと言われたらそれまでだって、オレだって思う。誰かの役に立つ物を作れるようになりたい。そのためにも、毎日練習していかないといけないんだ。


「カイタってさ、ホントけんかが苦手だよな」

「だって争いごとって嫌いだもん」


 オレはけんかがしたくない。自分の気持ちを押し通そうとして、相手をポカスカ叩くなんて、とっても嫌だ。それなのに大人も子供も、いつもイライラけんか腰。なんでもっと平和に、話し合って分かり合えないんだろう。





 通学路でギンガと別れたオレは、神社へお参りに向かう。

 ここ、箱舟はこぶね市の中心にある恵殿えでん神社で、「いい物が作れるようになりますように」ってお願いをするんだ。

 小さい頃から、ことあるごとにお参りしている。御利益ごりやくがあるか分からないけど、習慣になっているんだよね。


「よっ、ほっ、はっ……と」


 石段を一段飛ばしで駆け上がっていく。うっそうと茂る木の下を通って、丘の一番上を目指す。

 結構高い場所にあるから、登るのも一苦労だ。でもおかげで足が鍛えられたんだよね。マラソンも得意になったし、いいことずくめだ。


「ふ~、到着~」


 丘の頂上の、少し開けた場所に、鳥居と賽銭箱さいせんばこがある。古くなっていてボロボロな、こぢんまりとした神社だ。

 ちゃりん。ぱん、ぱん。

 五円玉を入れて、いつものお願いをする。今日から夏休みなので、ちょっと念入りに長めに。その時、


『おお、ちょうどいい』

「へ?」


 おじいさんみたいな声がして、上から石版が降ってきた。


「うわぁあっ!?」


 びっくりして飛び退いた。落ちてきた石版は、神社と同じくらいボロボロ。それなのに光っていて、ぷかぷか宙に浮いていた。

 え、どういうこと?意味不明なんですけど。

 ああ、きっと夢だな。うんうん。


『夢じゃないわい。これは現実じゃ』

「うわっ!?なんかしゃべった!?」


 石版からおじいさんみたいな声が聞こえた。


「もしかしてスピーカーがどこかに付いて……ないね、うん」


 ぐるっと後ろ側を見てみたけれど、そんな仕掛けはどこにもない。本当に石版がしゃべっている。


「ど、どうしてこんな物が……?」

『そりゃ、ワシが神様だからじゃよ。ほっほっほ』

「神様ぁっ!?」


 ここは神社だから神様くらいいてもおかしくないけど、何で急に出てきたんだ!?もしかしてオレがいつもより長くお願いをしていたから!?いやいや、そんなお手軽な神様がいる訳ないって。


『お主に用があるのじゃ』

「よ、用?」


 神様なんかが、オレに何の用だろう。もしかして「あなたは何番目かのお客様だから、次の神様に決定!」なんてことだったりして。……いやいや、そんな話なんてないか。


『お、察しがよいな。大体その通りじゃ』

「マジなの!?」


 まさかの大正解。……って、本当にどういうことだよ!?


『正確にはな、神様候補の十人目をどうしようかと思っていたところに、ちょうどお主がやって来たのじゃ。だからお主が十人目の候補ってことで』

「待って、ちょっと待って。話についていけなさそう」


 自称神様な石版が、意味分からないことを言っている。神様候補って何の話だ。それにオレ以外にも九人いるってこと?頭がパニックでわちゃわちゃなんですけど。


『仕方ないのう。一からちゃんと話してやるか』

「最初からそうして下さい」


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