凋落の恋

夢想家

第1話   出会い

 その日、彼女は訳の分からない不快感で、

目覚めた。悪夢ではない?でも冷や汗まで

とにかく、なんとも言えない不快感。

 外は、雲一つない、この不快感とは、

正反対の快晴、カーテンの隙間から日が差し込んでいた。彼女は、考えてもしょうがないと思い、出勤時間が迫っている、ベットから飛び出して、シャワーを浴びて、身支度を整えて店に向かった。

 何事もなく、時間が過ぎていった。

「考えすぎだった」彼女は思い、次の客を迎えようとして、階段の踊り場に立った。

 客が来た、顔を見た瞬間「これだ‼️」

声が出そうな位驚き、顔が曇ってしまった、でも彼女はプロ一瞬だった、直ぐ営業の笑顔に戻っていた。客には、気づかれていない自信があった。

 だが、その男は、違っていた、かつては、超エリート弁護士で、知られていた男なのだ。どんなに一瞬でも見逃さない鋭さを捨て切れず生きてきた。あの、出来ごとさえ無ければこんな所を知るはずもなく生きているはずだった。

 やっぱり、「くるんじゃなかった」と思いながら、彼女が待つ、踊り場まで上がった。

期待し過ぎてしまった、この甘さが、いけないのだろうと思ったら。「なおらないだろう」

そう思い彼女が何を話したかうわの空で、

個室に導かれて入った。

 改めて、彼女は元気に「リオ」です!

ご指名ありがとうございます。とあいさつして優しくベットに座らせた。

 そうここは、ソープランドだ。

ここは、東北地方の中規模の地方都市の歓楽街だ。女はそこのソープ嬢、黒ギャルの「リオ」だ。

 男は、東大法学部卒(2位)の元エリート弁護士だった。男は、ある事件で罠に掛かって弁護士資格を、永久剥奪されてしまった。

 その後、いろんな事があり、最終的に暴力団の法律相談役になったが、暴対法で法的な抜け道を見い出せなくなり、暴力団は、完全に解散してしまい、今は、この都市の端にある老人ホームで住み込みで管理人として働く還暦間近の初老の男、名前を三条 哲也と言う。

明治時代なら、華族様だ。

実際、彼の先祖は歴史教科書にもでてくる、その、三条家なのだ。

男は、その事だけでプライドが高すぎていた。

 一方の彼女は、自身は知らないが、やはり

こんな所にいるような女性ではなかったのだ

 実は、彼女の本当の父親は、経済界のドンと呼ばれている男の1人息子だった。

 学生時代には、かなりのもてぶりだった。

頭が良く、金もあり、スポーツまで難なくこなしていた。

 例外なく、学生時代に恋愛関係になっていた女性がいたが、有力政治家の娘との、政略結婚が待っていた。

 彼女は、いさが良く身を引いた。

そんな男が、政略結婚することになった。

 今時と考えるが、実際それが格差社会を作っているのだ。いわゆる上級国民である。

政治家は、選挙のため金がいるし、経営者は、

情報がいる。(開発情報など)利害が一致するから、決して無くならないのだ。

リオの母親は、彼の将来と自分の将来を考え身を引いた。二人は納得して別れた。お腹に子供がいる事は、彼女が心に秘めたままだった。

リオは、そんな娘だった。

 すぐに、彼女を受け入れる男がいた、彼女は

男に全て話し、それならなおさらと男はリオの母親とすぐ結婚した。リオが生まれても本当の娘として、実子にしていたのでリオもなんにも疑っていない。

 母親も、彼女に本当の事を話せないままで、

今になっている

 まだ二人には、秘密があるが、まだ先にならないと分からない事だった。

男は、恥ずかしく、そして後悔していた、あの彼女の表情が、頭から離れないからだ。

 年は、たぶん40ぐらい離れている、まるで孫だ、リオは、完全にいつもの優しい笑顔だった。男の顔を金(かね)に変えていたからだ。

 やはり、ダメだった、そうもう年だし、最初の彼女の表情が、頭から離れなかったのだ。

男は、さっさと帰って寝たかった。

服着て帰ろうとした時、彼女が、優しく

「少し話しましょ」ベットに座らせた。

リオは、そっとお茶を出しながら「気にしないでください」

よくいますから。

 「気にならないわけがない」男は、心の中で思った。まぁ後30分女に付き合って話しをすればいいとあきらめリオに付き合って話した。

 一方リオは、最初の印象とは違い、歳の離れたこの男に、他の男には無い、何かを感じている。何かは、分からない。ただ多くの客にある、ギラギラした、性欲剥き出しの男達とは違っている何かだった。そんな男達は、リオは全く魅力を感じた事はない。いくら、金持ちで、イケメンでも、何回通われても、ただの客だった。しかしこの男には、それ以外の何か分からない、男の魅力を見いだしていた。

 それは、この男の人生経験から来るものだと気が付かない、リオはまだ、人生経験が少な過ぎていた。それだけ、歳が離れているという事だった。


 そんな、最悪の、彼女「リオ」との出会いであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る