君と手を繋ぎたかった

OKAKI

マモル 1

「マモル。朝です。起きてください」

「後、5分……」

「ダメです。授業に遅れます。早く起きなさい」

「うわっ!」

 勢いよく布団を剥ぎ取られ、突然の寒気に体をぶるりと震わせる。

「寒い……」

「この家は、いつも快適な温度を保っています」

「いや、絶対昨日より5度は下がっている」

「起きなければ、この部屋の温度をさらに下げます。早く顔を洗って、朝食を食べてください」

 ロボ子は、掛け布団を持ったままタイヤを走らせ、部屋から出て行った。僕も仕方がなく部屋を出る。廊下は、部屋より暖かかった。



『おはようマモル。調子はどう?』

「おはようママ。今朝も元気だよ」

 朝食を食べていると、ダイニングの画面にママが現れた。

『随分遅い朝食ね。どういうことかしら?』

「ちょっと寝坊して……」

『またゲーム?』

 ママの顔が険しくなる。僕は慌てて言い訳する。

「違うよママ! 宿題が難しくて、サトルとトモヤに聞いたら……」

『そのままゲームを始めちゃったと?』

「ごめんなさい」

 ママが呆れたように息を吐く。

『もういいわ。でもね、規則正しい生活は、とても大切なのよ』

「はい」

『ウィルスや食事に気を付けても、生活習慣の乱れからも体調不良を招くの。特に睡眠は、絶対に減らしてはダメ』

『おはようマモル』

 ママの小言が長引きそうでうんざりしていると、突然、画面が半分に分かれ、パパが姿を見せた。

「おはようパパ」

『まだ食べているのか? 授業に遅れるぞ』

「チーズ味は苦手なんだ。チョコレート味なら、早く食べ終わるのに」

『ダメよ。いろんな味を食べないと、味覚が鈍くなるわ』

 栄養士のママは、栄養バーの味にうるさい。みんな大好き甘い味からみんな嫌いな辛い味まで、色んな味を作る。どんな味でも栄養が同じなら、全部チョコレートでいいって言ってるのに、全然聞いてくれない。

『マモル。起きる時間がいつもより10分遅いな。どうしたんだ?』

「ちょっとね……」

 医者のパパは、頻繁に僕のバイタル数値や睡眠時間を確認するから、ある意味ママよりやっかいだ。

『数値に異常は無さそうだが……マモル! 後5分で授業が始まるぞ!』

「ほんとだ! それじゃあね! ママ、パパ、お仕事頑張って!」

 僕は残りの栄養バーを口に入れ、ダイニングを飛び出した。

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