第百二十話

「なんで皆ヤンデレ化したんだろ…俺身が持たない」


魔道具研究部での出来事の後、休みの日にじっくりと考えていた。ちなみにちゃんとアザは出来てました


『アリアさんとマリンさんに気持ちを伝えたのが原因でしょうね』


元々皆がヤンデレの素質を持っていて…2人に俺の気持ちを伝えた結果、皆が焦ってヤンデレ覚醒したと?


「…今までが奇跡的に均等が取れてたのを俺が壊しちまったのかなぁ」


お互い抜け駆けをしないという掟を俺自身が破ってしまったと…


「でもそんなことになってるなんて知らないしさー」


不可能だよ…どれだけ察しが良かったら見抜けるんだよそんなの


「どうすりゃいいかな〜…」


『いっその事皆さんに好きだと言えばいいのでは?』


でも皆をそういう風に見てない…とは言いきれないけど突然すぎるよ、気持ちが置いてけぼりなんだよ


「流石に嘘で好きとは言いたくないし…」


『全く真面目なんですから…』


「まぁ旅立ちさえすれば追ってはこれまい」


それまでの辛抱だ


『そうだといいんですがね…』


「はぁ…今日は気分転換に散歩でもしてくるか…」


部屋を出てミラノワへと向かう




「ふぁ…相変わらず賑わってるなミラノワも」


キメラによる被害も殆ど復興され、今はいつもの賑わいを見せている


「冒険者ギルドに行くか」


いや待て、あそこにはイリスとマリン姉ちゃんがいるじゃないか


「…ギルドは止めておこう」


『とうとう回避するようになりましたか…』


うーんだとすると寄るところは…そうだ!ラミダさんの所へ行こうかな


「あそこは見てるだけで楽しいんだよなぁ…」


『…何事も無いといいのですが…』


途中でクレープを買ったりしながら店へ向かう


「ども〜」


「すぴー…すぴー」


いやラミダさん寝てる…店主としていいのかそれで…泥棒が入ってきたらどうするつもりなんだろう


「…泥棒が死ぬ未来しか見えないな」


ラミダさんなら大丈夫か


「…起こしちゃ悪いし帰るかな…」


『そうですね』


「…ん…おや…来てたのかいリュート」


「ラミダさん、すみません起こしちゃいました?」


「いや…別にいいさね…ふぁ…それで今日はどんな用事なんだい?」


「実はこれといってないんですけど近くを通ったので何かあるかな〜と…」


「なるほど…ま、好きに見ていきな。もうすぐ旅に出るんだろ?一応雑貨も置いてるからね」


「ありがとうございます!」


「…ふふ」


『あのまま帰った方が良かったと思うのですけどね…』


なんでさ、ラミダさんめちゃくちゃいい人なんだぞ?目のハイライト消えないし、普通の大人の女性じゃないか。ちょっと血に飢えてるたけで…


『それは普通とは言いません』


目のハイライトが消えなければ皆普通の人だよ


『価値観が崩落してますね、可哀想に…』


ステさんと話しながらも雑貨を見てみる


「…ふむ、これとこれは役に立ちそうだな…買っとくか」


「決まったかい?」


「はい、これお願いします」


「あいよ」


会計を済ませ立ち去ろうとするとラミダさんに呼び止められる


「ねぇ、ちょっと頼み事があるんだけど…聞いてくれないかい?」


「…?ええいいですよ」


「実はこの店、私一人で切り盛りしてるんだけどさ。人手が足りなくて困ってんだよ」


確かにラミダさん以外店員は見かけないな


「それで少しでいいから手伝ってくれないかい?」


「ええ、別にいいですけど…でもさっき寝て…」


「ありがとう!助かるよ、じゃ早速品出しを頼もうかな!」


半ば強引に頼まれる


「…さっき寝て…」


「さ、さ!お客さんが来るかもしれないよ!」


「…何か企んでません?」


「うっ…い、いやいやそんな事する訳ないじゃないか」


「…じー」


「ぴゅー…ぴゅー」


「まぁ手伝いますけど」


「ほっ…」


隙を見せるのはやめておこう…




「…ちっ」


なんだいあの子…全然隙を見せないじゃないか…どさくさに紛れて惚れさせる作戦が台無しだよ…


「…ふぅ、品出し終わりました」


「えっ…もう終わったのかい?そ、そうか…手際がいいんだね…」


くっ…無駄に手際がいい…!素直に店員として欲しくなるじゃないか!今はドジっていいんだよ!


「じゃ俺はこれで」


「あ…いや…」


逃げられてしまう…はぁ…強硬手段で行くしかないようだね…!


「ではまた…」


雷神纏いで加速して店の扉をロックする


「…ええ?」


「…ふふ、どうやら見破られたみたいだからね…強硬手段で行かせてもらうよ」


「…ええ…」


『だから帰った方が良いと言ったのですよ』


嘘やん…そんな事するとは思わないじゃん!目のハイライトは消えてないけど獣の目してるよ!


「…大人しく私に襲われな…!」


「どうして…そんな事を…?」


「私…今まで人に負けた事無かったんだよねぇ…それを初めて負かした男なんて好きになるに決まってるだろう!」


ラミダさんが飛びかかってくる、ひいい…!襲われる!


「氷付与!」


右手に氷を付与し、ラミダさんの手を掴む


「何!くっ…なんなん…だい…その魔法…」


ラミダさんが凍っていく


「…あ、危ねぇ…!」


良かった!氷魔法覚えててよかった!エルシュラ様ありがとうございます!


「さっさと退散しなければ…」


もうここには来れないな…さよなら…ラミダさん…!


『何とか逃げれて良かったですね』


しばらく後、氷が溶ける


「ぷは…はぁ…逃げられちまったか…」


私そんなに魅力ないかねぇ…ちょっとショックなんだけど…ちょっと強引すぎたかね


「…はぁ…もうリュートは来ないだろうね…」


「失礼します」


「…アリア?」


「…ふふん…見てましたよ…今の」


「なっ!いやあのこれは…」


「まぁまぁ、私は怒ってませんよ」


「そうなのかい…?」


「あなたなら話しても良さそうですね…ふふ」


「…?」


こうしてラミダも未来の妻団に加入する事をリュートはまだ知らない




ある日の学園


「それで、この掲示板をなんで俺に持ってこさせたんだ?姉上」


「いや〜我ながらリュートのいい所を全部書けたなーって思ってね?だからリュートにも見せたくて…」


「…姉上が広めたんだな…?俺の事…」


「…はい…」


しょぼんと落ち込む姉上


「はぁ…まぁそのおかげで応援してくてる人もいるから程々にしてくれればいいよ」


「本当?怒ってない?」


「…少しは怒ってたけど…いいよ、今は気にしてない」


「…リュート…!優しい…!」


ギュッと抱きつく


「はぁ…」


こういう甘い所がダメなんだろうか


『そこがリュート様のいい所ですけどね』


「じゃ、折角だし一緒にご飯食べよっか!」


「そうだね」


俺たちは生徒会室で昼飯を食べる


「相変わらずサラっちと弟君は仲良しだね〜」


「…ほら、ちゃんと野菜とれ…」


アルフ先輩がトマトを置く


「あ、ありがとうございます」


ほんと見かけによらずいい人だな…最早オカンだよ


「勇者様はもうすぐ旅に出るのよね…」


ノエラ先輩が寂しそうにこちらを見る


「ノエラ、リュートの事大好きだもんね」


姉上がニヤニヤしながらノエラ先輩を煽る


「ち、違うわよ!あ、いや別に違うとは言いきれないけど…!」


「ノエラならいいんだけどなー」


「…またその話?私は遠くで見てるだけで十分よ」


「もう、恥ずかしがりなんだから」


「貴女が異常なだけよ…」


「…大変だな…お前も…」


「アルフ先輩…ぐす…貴方だけが心の救いです…」


「あはは…英雄は好かれるのが宿命みたいなものだからね…どんまい弟君」


アルフ先輩とテルー先輩に慰められながら昼飯を食べ進めた…


「でもリュートに迫られたらどうするの?」


「…そ、それは…うう…」


「せめて俺がいない所で言ってくれ…」



つかの間の休息は続く

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