第百十八話
「理由は戦ったら分かる」
「そっか…ならやるしかないね」
カナリーは短剣…に見立てた木の棒を器用に回している、かなりやるようだ…隙がない
「…なるほど、短剣の扱いはプロレベルか」
「へぇ…これで分かっちゃうんだ…リュートもやるね…」
今回は俺もカナリーと同じ短剣に見立てた木の棒で戦うけど…技術的には多分一緒ぐらいだな
「それじゃ…行くぜ!始め!」
「とりゃ…!」
「くっ…速?!」
始まると同時にカナリーが一瞬でこちらに詰め寄る
「ほらほらどうしたのリュート!こんなんじゃ直ぐに私が勝っちゃうよ!」
「うっ…!くそ…!こんの…!おらあ!」
「あはは…!まだまだこんなものじゃないよ〜!」
この速さ、短剣の扱い方…どこかで…
「はぁっ!」
上段に切りつける
「おっと…!危ない危ない」
「ふぅ…この戦い方、ラミダさんと一緒だ」
「気づいたかリュート、どうやらラミダさんが居た執行部の技術はウール・ランペル様が使ってた技術らしいんだ」
「なるほど…だからカナリーも使えるのか」
ウール・ランペルさんはS級冒険者から勇者パーティーに誘われた人物だったっけ、もしかしたら執行部もウールさんが作ったのかもしれない
「…これは俺も全力出さなきゃな」
「なになにまだ全力出してなかったの?!私とほぼ互角にやり合ってたけど?」
「…俺の真価は別にあるんだ」
俺は短剣の持ち方を変えて、カナリーと同じ構えをする
「…?まさか私の動きを真似るつもり?」
「その通り、さ、続きをやろう」
「ふふ、果たして真似られるかな?」
お互い同時に動きだす
「…そらそら!」
「ふぅ…右…右…上…」
「…嘘…本当に真似てる…!くっ…この!」
「…左…なるほど…こういう事か」
動きは覚えた、後は隙を見つける
「とりゃあ!」
「そこだ…!しっ…!」
「きゃ…!」
カナリーが吹き飛ぶ
「そこまで!リュートの勝利!」
「…ふぅ…普段使わない筋肉使うから痛え」
でもこの動きは強いな、流石勇者パーティーの1人…技術は至高の領域だ
「いてて…もうちょっと手加減してよー」
「あ、ごめん…」
「いいけどね…それで?どうだった?私」
「めちゃくちゃ強かった、正直あと少し長引いてたら負けてたよ」
お世辞抜きにそうなってただろう、更にはカナリーは防御魔法だったら最強格らしいし魔法ありでも勝てるかどうか…なんでもありなら勝てそうだけど
「じゃあ勇者パーティー入れてくれるの?!」
「…はい…?」
「…今回模擬戦して貰ったのはカナリーの実力を見てもらうためだったんだ」
「まさか…」
「まだ最後の1人決まって無いんだろ?俺はカナリーを推薦する」
「なるほど…だからか」
確かに実力は申し分ない、ウール・ランペルさんとも引けを取らないだろう。
「何より短剣使いか」
「そゆこと!勇者パーティーに授けられる武器とも一致してるだろ?」
「カナリーはいいの?命をかけることになるし、もしかしたら死ぬかもしれない」
「いいよ、私もこの前の戦いで覚悟は出来た…おじいちゃんの意志を継ぐよ」
「…そっか、なら俺は何も言うことはない。よろしくなカナリー」
「ほんと!ありがとう!よろしく!リュート!ルシュ!」
「ああよろしくなカナリー!」
こうして旅立ちのギリギリで最後の仲間が見つかった
…
…
数日後
「そうか…とうとう仲間が揃ったか」
「はい…国王陛下」
「よし…!なら広場に人を集めてお披露目と行こうじゃないか!」
「…ですよね」
ああ…人前に出るの気が重い…代役とかダメですよね
『諦めることですね』
「よし、早速取り掛かるか」
国王陛下はめちゃくちゃウキウキしてるし…
『嬉しいんでしょうね、勇者パーティーが誕生する事が』
そうしてあっという間に事は進み、お披露目がやってきた
「…ゴホン、ここに勇者パーティー誕生を宣言する!」
「「「勇者様!勇者様!」」」
「凄い歓声だね!」
「そうだな〜、いや〜…本当になったんだな勇者パーティーに…!」
「〜」
(なんか気恥しいですね)
「まぁな…おいリュート大丈夫か?」
「…うぷ…吐きそう…」
「しっかりしろよリーダー?」
「はぁ…勇者なんて俺には荷が重い…」
「でもやめないんだろ?勇者」
「ああ…あいにく荷が重いが譲るつもりはない」
ただ人前に出るのは勘弁して欲しい
「「勇者様!」」
『大人気ですね』
言わんでよろしい、今現実逃避してるんだから
「…それでは勇者リュートから一言貰おうじゃないか、頼む。リュート」
「え…」
聞いてない聞いてない!ヤバいヤバい焦る!ちょっ先に言っといてよ!
『ほらほら早くしないとシラケますよ』
うわあ急かすなよ!えっと…えっと…
「お、俺が勇者リュート…です」
『そんな事誰でも知ってます』
黙っててくれ
「…皆が知っての通り俺の前世は人間達の天敵の魔王だった」
ありのままを伝えよう、気合いを入れるんだリュート
「だが…今は勇者リュートだ…!邪神を倒し!世界を救う勇者だ!必ず…やり遂げるから…見ててくれ!皆が信じてる勇者が!世界を救う瞬間を!」
「「「うおおおおぉ!勇者様!」」」
これでいいかな…はぁ…緊張して足がプルプル震えてるや…
「ありがとう勇者リュート」
国王陛下は何故うっすらと涙を浮かべてるのでしょう
『自分の息子のように接してきた貴方が成長して喜んでるのでしょう』
なるほど…なんかむず痒い
「それでは…勇者パーティーの誕生を祝おうではないか!」
「「「わああああ!!!!」」」
この日、エルシュラ国に勇者パーティーが誕生した
光魔法と闇魔法を扱う勇者リュート・レギオス
炎と大剣で敵を薙ぎ払うルシュ・エルシュラ
神聖魔法でどんな傷をも治すユーナ
防御魔法と短剣を巧みに扱うカナリー・ランペル
この者たちがいずれ歴史に名を残す者たちである
「頑張…よ…勇…ュト」
「痛…その声は…」
「…?」
(大丈夫ですか?リュートさん)
「ああ…ちょっと懐かしい声が聞こえただけだ」
あんたの正体も確かめなきゃな、謎の声
「…ああ…待ってるよ…勇者リュート…?」
勇者パーティーが旅立つのはもうすぐだ
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