第百十六話

「はい、マリンお姉ちゃん特性ジュースよ」


「ありがとうマリン姉ちゃん…」


「それにしても珍しいわね〜、リュート君が私の家に行きたいだなんて」


「…うん」


「…何かあった?」


話すんだ…俺のしてしまった事を…マリン姉ちゃんの弟さんが死んだのは…俺のせいだってことを…


「…俺の前世の事…耳に入ってるよね」


「…ええ、最初はびっくりしたけど別にリュート君はリュート君なんだから気にしてないわよ?」


「ありがとう…でもそうじゃないんだ」


「…?」


「魔物を…生み出したのは…前世の…魔王の俺なんだ」


「…!リュート君…」


マリン姉ちゃんの顔を見れない…でも話さなきゃ


「これは操られたからじゃない…自分の意思で魔物を生み出したんだ」


「どう…して…」


「…大切な人を守りたかったから…でもその結果がこれだ…誰も守れず、取り返しのつかない事をした」


「…」


「謝ってすまされるものじゃない…弟さんの復讐がしたいのなら俺は…抵抗しない…」


「そんな…」


「でも…せめて邪神を倒すまで待って欲しいんだ…ごめんマリン姉ちゃん…それだけは…待って欲しい」


マリン姉ちゃんには恨まれるだろう、そういう事を俺はしたんだ


『リュート様…私のせいで…』


ステさんのせいじゃないさ…これは、俺の責任だ


「…バカ…」


マリン姉ちゃんが俺に向かってくる


「…え?」


「本当…馬鹿よリュート君は…!」


パンっと頬を叩かれる


「…え…あ…」


「復讐なんて…そんなこと…する訳ないでしょう?」


ギュッと抱きしめられる


「…確かに弟が死んだのは魔物のせいよ…でもそれは貴方のせいじゃない」


「違う…俺が魔物さえ生み出さなければ!」


「じゃあ貴方が人間を襲うように魔物に指示したの?」


「そんな事する訳!」


「なら私は貴方を恨んだりしない、大切な人を守る為にやった事なら尚更よ」


「どうして…どうしてなんだよ…なんでいつも俺を許してくれる…!」


ああ…何言ってるんだ俺は…頭の中がぐちゃぐちゃだ


「どうして!!イリスとアリアを見殺しにした時も!今回も!なんなんだよ…!俺を恨めよ!突き放してくれればいいじゃないか…!」


「…リュート君…」


「なんで…なんだよ…どうして許してくれるんだ!」


「…だって…貴方が好きだもの!!」


「…っ!」


「出会う前は毎日がつまらなくて!苦しくて泣きたくて…心が死んでるようだった…!でも貴方に会えて…お節介が嬉しいって…姉のように接してくれて…!」


マリン姉ちゃんから涙が零れる


「イリスちゃんやアリアちゃん…他にも沢山いい人に出会えて…全部…貴方が全部くれたの!!私を救ってくれた!」


「あ…マリ…ン…姉ちゃん…」


「…だから許すわ…私…貴方の事を愛しているから」


「…なんだよ…それ…そんな事言われたら…納得するしか…ないじゃないか」


「いいのよ、それで。それに貴方に出会えたもの。恨んだり後悔したりなんてしないわ」


「ありがとう…マリン姉ちゃん」


「ふふ、ごめんね私お節介焼きだから」


「…そこがマリン姉ちゃんのいい所だろ」


「そう?」


「ああ、だから俺はマリン姉ちゃんに…惚れたんだ」


あんなに気持ちを伝えられたんだ、俺もちゃんと言わなきゃ男じゃないな


「…え…今…惚れた…って!」


「うん、俺も愛している」


俺も抱きしめ返す、するとマリン姉ちゃんの顔が真っ赤になって…


「あ、ああ…愛して…!あわわわ…!」


顔を隠しながら勢いよく自分の部屋へと逃げていった


「…ちょっといきなり過ぎたかな」


初めてまともに告白したけど、結果は逃げられました


『悲しいですねぇ』




「リュート様…マリンさんに何言ったんですか…」


マリン姉ちゃんに気持ちを伝えて数日後、自分の部屋でくつろいでたらアリアがそう言いに来た


「…ちょっと気持ちを伝えただけだよ…何かあったの?」


「意識がどこか遠い所にいってブツブツと独り言を言ってるようなんです…」


「ええ…」


「私も心配になって会いに行ったんですけど…ずっとリュート様の事を呟いてました」


「…マジかぁ…」


やっぱりいきなりすぎたかな…


「…リュート様が会いに行った方がよろしいかと…」


「そうだね…行ってくるよ」


「元のマリンさんに戻るよう祈ってます…」


という事で俺は冒険者ギルドへと向かう


「…うふふ…リュート君…愛している…ふふ…」


「な、なぁマリン…どうしたんだよ…」


「…これって両思い…?ああ…幸せだわ…」


これは重症のようだ…


「り、リュート…!マリンがおかしいんだよ…!」


「う、うん…多分俺のせいかな〜…はは…」


「…リュート君…?り、り、リュート君?!」


どうやら俺に気づいたようだ


「あわ…あわわわ…!」


「大丈夫?マリン姉ちゃん…」


「だ、大丈夫だわ!全然平気よ!うん!」


「同じ書類にスタンプ押しまくってるけど…?」


「えっ…あ…私ったら…ええと…」


『マリンさんは意外と恋愛には弱いみたいですね』


「あー俺もいきなり言っちゃったから…その…ごめんね?」


「い、いやいいの!私もその…勢いで言っちゃったから…でも…嬉しかったわ」


「そっか…ありがとうマリン姉ちゃん」


「…うん」


「でも皆が心配するから出来ればいつものマリン姉ちゃんに戻ってね…?」


「…うう…わかったわ」


顔が真っ赤になりながら頷く


「お前…マリンに何を言ったんだ?」


「…ちょっとね」


「へぇ…これは後でマリンに問いたださなきゃ…」


「じゃあ俺は戻るよ」


「またな〜」


「…ま、またね」


なんとかなったかな…なったと信じたい


『そう言えば邪神を倒すまで気持ちには応えないんじゃ無かったのですか?』


いいんだよ、もうそれは無しにする。多分俺不安だったんだ、絶対に生き残れるか分からないから…逃げて先延ばしにしてたんだ


『では…もう覚悟が出来たのですね』


ああ…俺は必ず生き残るよ、そう信じる事にした


『貴方ならやれます、きっと』


ありがとう、ステさん…さてアリアにもしっかり気持ち伝えますか〜!


『…嫌な予感がします』




数日後マリン姉ちゃんと同じく独り言を呟くアリアが目撃されたという…








これにて第四章は終わりです!ここまで読んでいただきありがとうございます!


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