第七十話

姉上とクエストを受けてしばらく経ったある日、俺はセバスチャンと手合わせをする事になっていた


「…私のような老人、坊っちゃまのお相手が務まるとは思いませぬが。よろしいので?」


「はは、姉上をあそこまで鍛えておいてよく言うよ…是非1度手合わせ願いたいと思ってね」


あわよくばあの雷魔法のコツを掴めればなおよし、掴めなくても単純に戦えるからどちらにせよ損は無い


「サラお嬢様があそこまで強くなられたのは、お嬢様の才能のおかげ、私めは少し力の扱いを教えただけでございます」


「そうか…まぁ、それが本当かどうかは戦えば分かるさ」


最近ロディ先生に毒されたのか、強そうな人を見るとうずうずしてくるようになりました。ちくしょう


「ふふ、引く気は無いようですな…では坊っちゃまの期待に答えられますよう骨身を削り、お相手させて頂きましょう」


「よろしく頼むよ、セバスチャン」


空気が変わる、お互い隙がなく睨み合う。どちらも動かず、相手の出方を伺う。


ただの老人?こんな老人がわんさかいたら今頃勇者なんて産まれて無いだろうよ


「無属性魔法:魔力超速:4倍速」


俺は無属性魔法で自身を強化し、臨戦態勢へと移る


「ほう…雰囲気が変わられましたな、何をしたかは分かりませぬが」


セバスチャンの圧が強まる、やる気になったか。じゃあやりますかね!


俺はセバスチャン目掛けて飛んだ、集中しセバスチャンの左横に自分が居るイメージをする。


「ふむ、かなりの速さ。ですが…無駄が多すぎる」


俺は木刀をセバスチャンに向けて斬った


「なっ!うわあああ!」


セバスチャンは片手で俺の木刀を掴み、そして俺を投げ飛ばす。


「武器の扱いはかなりのもの、力も強く速さも私よりずっと上でしょう。ですがまだ技術が追いついていない様ですな」


「技術…?」


「ええ、いかにして敵に隙を作らせるか。いかにして敵を欺き、急所を突くか…要は力の使い方を考えるのです」


「力の使い方…」


「坊っちゃまを鍛えた方は、かなりの実力者なのでしょう。今の武器の扱い方や動きを見れば分かる…ですが力の使い方までは教えなかった様ですな。さしずめ器用貧乏と言った所でしょうか」



うーん…確かにロディ先生バーサーカーみたいな人だからなぁ…硬い岩とか斬れないなら斬るまで振り続けろとか言いそうだし



「いや…一つだけ教えて貰ったものがある…技術の極地」


教えて貰ったというより真似しただけだけど


「なるほど…ではこのセバスチャンに見せては下さいませんか?」


「分かった、セバスチャンならやっても良さそうだ」


息を吐く、魔力超速を6倍速まで高め、魔力を足と目だけに移動させる。準備は出来た、後はセバスチャンに向けて走り出すだけだ


「迅鈴刃流:刹那切り!」


「むっ!」


魔力を2点に絞ることで使わない部分の魔力の無駄を無くし、刹那をとらえることすらも可能とする


魔力超速の限定的な上位互換みたいなものだな


木刀はセバスチャンをとらえ、斬る


「雷魔法:瞬進雷歩」


まただ、見えなかった。今度は目を強化してるのに消えたかのように居なくなった


「くっ…」


どこだ…!


「後ろですよ」


セバスチャンは木刀を俺の首に当てる


「なっ…」


「確かにすごい技だ、技術の極地と言うだけのことはあります…ですがまだその技に慣れていないご様子、動きにぎこちなさがありましたぞ」


ぐぬぬ…完敗だ…やっぱり覚えたての技じゃダメみたいだ、というか慣れていないとはいえ刹那切りを躱すなんてセバスチャンは何者なんだ?


「負けたよ、手合わせありがとうセバスチャン」


「ふふ、潔さもお持ちとは。本当強くなられましたな坊っちゃま」


「はは、ねぇセバスチャン。俺に技術を教えて欲しいんだ」


「…技術とは己で培うもの、人に学んで出来るものではありませぬ。きっと坊っちゃまを鍛えた方をそういう理由で教えなかったのでしょう」


いえ多分ロディ先生がバーサーカーだからだと思います。しかし確かに地道にやるしか無さそうだな…


「そっか、わかったよ。自分で考えてみる」


「ええ、坊っちゃまならきっと答えを見つけられるでしょう…まぁ一言アドバイス、というほどでもありませんが。坊っちゃまは考えすぎでございますな」


「考えすぎ…?」


「はい、考える事はいいことですがたまには力を抜いて気ままに向き合うのも大事でございます」


「うーん、なるほど?」


「ふふ、まぁそう難しく考えるなという事です。では私はそろそろ仕事に戻らせて貰いましょう」


「うん…ありがとう」


考えすぎず力を抜く…難しいな…




助言を頭の片隅に入れ俺は1人、再び訓練に集中した

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