第五十五話

「離せ!ぐうう…ちぎれない…!なんで…」


そりゃ光魔法の縄だからな、簡単には解けないよ


「うーん、問題はどうすればレミシアを助けられるかなんだよなぁ…なぁお前レミシアを操るのをやめてくんない?」


「はは…!私は操られてなんかいない!私は私だ!」


「いやそんなバレバレな嘘いいから、そんな嘘つくならもうちょい性格似せろよ」


レミシアは天然ドジっ子美少女なんだぞ、サイコパス美少女なんかじゃない


「ぐっ…だけど私にかかっている洗脳魔法はそう簡単に破れはしない!あはっあはははは!」


「なるほど、洗脳魔法って言うのか」


「あっ…」


話す度に墓穴掘るなんてイリスかよ、レミシアが馬鹿なのか操ってる奴が馬鹿なのか…レミシアかもしれん


「ならその魔法を解けばいいんだよなぁ?」


「はっ!君如きができるわけが無い!」


「そんなの…試してみないと分かんないだろ」


前回は何も試そうとせずあの結果だ


「とりあえずその気持ち悪い鎧剥がすか」


「出来るものならやってみなよ!」


「おらっ」


俺は魔力を手に込め、思い切り殴った


「ごふ…!り、リュート君!何をするんだよ!」


「何って殴って剥がしてんだけど」


「わ、私が傷ついてもいいの?!」


「うーん…まぁレミシアなら許してくれるだろ」


「な、急に私にドライだね?!」


「気のせい気のせい」


俺はひたすら殴って剥がして行く、頭では魔法を解く方法を考えながら


「ふぅ…あらかた剥がし終わったな」


謎の達成感があるぜ


「う…うう…」


「さ、次は魔法を解くぞ」


「は…はは…無理だね…」


魔法を解く…今の俺が持ってる知識や経験で出来るだろうか、こういう時はまず魔法を解くというのを色んなアプローチで調べていくか


「魔法を解く…うーん、魔法を解除する?いやかかっている魔法を引き剥がす…?うんそれが近いな」


「考えたって無駄だよ…私のかかっている洗脳魔法はかけた相手の魔力と同化して操ってるんだ…引き剥がしたり解いたりなんて出来ない。はは…は…」


「ヒントどうも」


「ああ…また言ってしまった…」


これもう逆に解いて欲しいのかと思ってくるぐらいヒントくれるなコイツ、ありがたいけど


「敵に言うのもあれだけど、お前黙っといた方がいいんじゃない…?」


「う…うう…」


だがほとんど答えを教えてくれた様なものだ、問題はどうやって相手の魔力に干渉するかだな


俺、何か相手に干渉する魔法使えたかな…


うーん



あ、あったわ



「光魔法:小癒回復」


回復魔法だ、回復魔法は相手に干渉して傷を癒す。それを魔力そのものを扱う無属性でやったらいけるんじゃなかろうか?


「な、私を回復してるの?!やっと私に罪悪感が芽生えたんだね…!あはっ」


「この感覚…忘れないうちに…」


回復をやめ無属性魔法に切り替える


「無属性魔法:魔力干渉」


名前は適当でいいか、そのまま過ぎるけど


「な…私の中に違う魔力が…流れて…!やめろ!嫌だ!クソっ!離して!」


なんかちょっと罪悪感が芽生えたけど気のせいかな


うーん…レミシアの魔力を探って…っと


「ああ…やめて…そこは…ダメ…」


「お願いだから黙ってくれ…いけない事をしてる気分になるから!」


集中が乱れたが再び魔力干渉に集中する


どこだ…混ざってる部分…あった!ここだ!


「いやぁ…」


「見つけたぜ…レミシアの魔力と混ざってる別の魔力をな!」


「や、やめて…!」


見つけた魔力は…光魔法で追い出せるかな、なんか悪そう奴には光って効きそうだし?現にアイツは光魔法の縄はちぎれずにいる


「いやまて…そうなると無属性魔法と光魔法を両方同時に使わなきゃいけないじゃないか」


つまり複合魔法だ、俺複合魔法なんて見た事も無いぞ…どうする…


「ふふ…どうやら無理だったみたいだね!あはは!やっぱり私の方が強いのよ!」


コイツ…俺が出来ないと分かったら急に調子に乗ってきやがった



魔力干渉で魔力の循環ぐちゃぐちゃにしてやろ


「ぎゃあああ!何をするんだ!やめろ!変な感覚だ…!うう…あ…」


大人しくなったな、それで複合魔法のやり方だけど…レディッサ先生なんて言ってたっけ…?くそ…もっと詳しく聞いときゃ良かった!


「うう…でもなんか癖になってきたかも…ああぁ…」


やっぱりコイツ色々な意味でヤバいな…?!


コイツは置いといてレディッサ先生の言ってた事を思い出せ…確か…


「2つの魔法の調整が大事って言ってたっけ…」


こればっかりは試すしか無いな、ごめんレミシア。ミスって身体爆発とかしたら…そうならないように頑張るよ


「よし…いくぞ!」


「ああ…えっ?何をするの?!」


ベースは無属性魔法だ、そこにほんの少しの光魔法を混ぜる感じだ…俺は天才…俺は天才…俺なら出来る!


「調整間違えたらごめんなレミシア!」


「えっ…いや…やめ…ぎゃあああああああ!!!」


無属性魔法8で光魔法5の割合でやったけど案外いけそうだ!流石黄金比!


「くっ…レミシアから出てけ!」


「があああ…!やめろぉ!私は!お前を殺す…!勇者を殺…す!」


もう少し…もう少しで追い出せる!…早く出ていきやがれ!


「クソっ…!こんなはずでは…俺の計画が…!ちくしょうおお!!」


この魔法の名前をつけるなら…そうだな


「複合魔法:洗脳解除」


安直だけど気にしない気にしない、それよりもうアイツを追い出せそうだ…!


「…よし!レミシアの魔力から剥がれた…!そのまま光魔法で消し去ってやる!」


「クソっ…こいつはここまでか…次は…魔王に…」


「複合魔法:光聖魔弾!」


「が…ああああああああぁぁぁ!!!」


最後に光魔法7:無属性魔法3の複合魔法でアイツは完全に消えた



勝った…!俺やったんだ…!



「よっしゃあ!!俺皆を救えたんだ!誰も死なせずに…!」


嬉しさに涙が零れる、やればできるんだな俺…!はは、これが最初の勇者としての1歩だ!俺はやれる…勇者として皆を救ってやるんだ!


「でも流石に疲れた…はぁ…最近いつも疲れてる様な気がするな」


まぁそれで済んでるから良しとしよう


「あ…ああ…私は…なんて事を…」


レミシアも元に戻ったはずだ、でも様子が変だな


「レミシア…?」


「ごめんなさい…ごめんなさい…私リュート君になんて事を…ああ…」


どうやら操られていた時の記憶は残っているみたいだ


「別にレミシアは操られていただけだし気にしなくてもいいよ」


「でも…やったのは私…うっ…うぐ…ごめんなさい…私が人界に来なければ…こんな事には…」


自分を責めてるのか、なんだかさっきまでの俺みたいだ。前回も今回もレミシアは操られていた。それだけの事だ、別にレミシアを恨んではいない。悪いのはアイツだ


「本当気にしなくていいって、悪いのはアイツだし」


「でも…」


ふむ…確かに謎の声が面倒くさがるのもわかる気がするな、もう強行手段で行こう


俺はレミシアの側まで行き、優しく抱きしめた。前回のマリン姉ちゃんがしてくれた様に


「リュート君…?」


「大丈夫、別に俺は怒ってもないし憎んでもいない。それにレミシアが来なくても違う誰かがいずれこうなってた、アイツは俺を殺す為なら絶対にそうする」



「うう…ぐす…そうかな…」


「きっとそうさ」


「私リュート君に酷いことしたのに怒ってない?」


「うん、全然」


「ありがとう…優しいね…リュート君…本当にごめんなさい…」


「いいさ、それより美味しいもの食べるんだろ?」


「うん…そうだったね…」


「買ってくるからさ、今度こそね」


「分かった…ありがとう…!リュート君!」


少し元気になったな、それでいいんだ


「さ、行ってきますか」


「待ってるね」


「おっけ」


俺は街へと戻った、前回と同じくボロボロだけど。1つ違うのは誰も失っていないという事だ



今度は逃げずに俺は前に進む



もう失敗は許されないのだから

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