第二十九話
マリンさんがお風呂に入っている間俺はリビングでくつろいでいた
「明日はマリンさんがパーティーメンバー探してくれるんだよな…」
果たして見つかるだろうか?見た目は子供の俺だ、子守りなど誰もやりたがらないだろう
「1人でも大丈夫だと思うんだけどなぁ?」
マリンさんは超が着くほどお人好しらしい、それはこの状況を見れば誰でも分かることだ。だけど心配してくれる人が居るというのは案外嬉しいもの
「まぁ甘えてばかりじゃダメダメになってしまうけど」
少しは恩返ししなきゃ
「それにしても女性1人で住むには中々広い家だな」
リビングにお風呂にキッチンまで広い、二階建てみたいだし。良くある中世風の異世界だと考えるとかなり良い家だと言える
「誰かと住んでるのかな?」
そんな気配はないけど…っと?これは…
「写真か」
少し幼いマリンさんともう1人小さな男の子が写っている、友達と言うよりは家族だろう。顔がどことなく似ているし
「マリンさんの弟さんなのかな」
「ええ、そうよ」
「うえい?!マリンさん居たんですか?!」
「うん、今上がった所よ」
「そうですか…」
「その子はねレンって言って、私の自慢の弟だったの」
「だった…ですか」
「ええ、ちょうどその写真を撮って1週間後に魔物に襲われて死んだわ」
「そうなんですね…すみません」
「ふふ、なんでリュウ君が謝るのよ」
「はは、なんでですかね」
なんでかは知らないけど凄く申し訳ない気持ちになった、胸が押しつぶされるような…そんな気持ちに
「変なリュウ君だわ、…この写真のレンはちょうどリュウ君と同じ歳ぐらいだったかな」
「マリンさん…」
「レンもね冒険者になりたがってたの」
「レンさんもですか?」
「うん、でも私の親は反対してた。危険な職業だからしょうが無いけどね…でもレンは冒険者になると聞かなかった」
マリンさんの表情が暗くなっていく
「私も反対したわ、弟に危険な目にあってほしくは無かったから。それで喧嘩になっちゃってレンは家を出ていったの」
「…」
「すぐに戻ってくると思ったわ、でもいくら待っても戻っては来なかった。夜になっても戻ってこなかったから私の両親が探しに行ったわ」
マリンさんの声が震えている
「そして翌朝冒険者が訪ねて来てギルドへ向かったらあったのは弟の死体と両親の死体、冒険者が近くの森で魔物に襲われ息絶えてた所を発見したらしいの」
「マリン…さん…」
「私は後悔したわ、あの時レンと喧嘩なんてしなければこうなら無かったんじゃないかって…全て私のせいなんだってね」
「そんな、マリンさんのせいじゃ…」
「ふふ、ありがとうリュウ君…でもきっと私のせいよ。レンの死体が発見された時短剣を持ってたらしいの」
「…!」
「きっとレンは魔物を狩ろうとしたのよ、自分が冒険者としてやっていけると証明したかったのよきっと」
そんなの…あまりにも…報われないじゃないか
「私が冒険者ギルドの受付嬢になったのも罪滅ぼしのためなの」
「罪滅ぼしですか?」
「ええ、私は強くはないから、せめて魔物を倒してくれる冒険者の助けになればと思ってね…それが私なりの罪滅ぼし」
「マリンさん…」
「ごめんなさいリュウ君、もしかしたら私は貴方とレンを重ねてたのかもしれないわ…お節介だったわよね…多分リュウ君はずっと強いのでしょう?」
「…そうですね」
「そうよね…ごめんなさい、迷惑だったわよね…今日はこのまま泊まっていっていいから。明日はちゃんと宿を紹介するわね」
悲しそうに微笑むマリンさん
そんな表情のマリンさんを見ると考えるより口が勝手に動いていた
「俺は…お節介なんて思ってませんよ」
「えっ…」
「心配してくれて嬉しかったし家にまで止めてくれてご飯もめちゃくちゃ美味しかったです!」
「リュウ君…」
「別にレンさんを重ねられても全然迷惑じゃないです!むしろ最高に優しくて素敵なマリンさんに弟扱いされるならこっちからお願いしたいぐらいです!」
キョトンと呆気に取られるマリンさん
「だから…だから、そんな悲しい顔をしないでください…!マリンさんは笑顔でいて欲しいです!」
「姉ちゃんにはずっと笑顔でいて欲しいからさ!」
遠い日の記憶を思いだす
「…!」
レン…!
「わっぷ」
抱きしめられた
「ぐすっ…ごめんなさい、でもしばらくこうさせて欲しいの」
「マリンさん…ええ、いくらでもどうぞ」
悲しそうなマリンさんを見てたら勢いに任せて恥ずかしい事言っちゃった気がするな
まぁいっか、これで少しでも…
俺の罪を償えるのなら
…?俺の罪ってなんだ?
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