第二十四話

Episode レディッサ


小さい頃の記憶は殆どない、だがここまで魔法にのめり込んだ理由は鮮明に覚えている


オレは騎士の家系に産まれた、代々騎士を出しておりこの家の人間は皆騎士になる事が存在意義と思っていやがった


だが騎士は男にしかなれなかった。そんな中女として生まれたオレは、人として扱われなかったんだ…


幾度も後悔した、女として産まれたことを。少しでも男に思われるように口調も荒っぽくした。だけどそんな事をしただけでは何も変わらなかった


そんな時適性の儀で5属性の適性を授かったのだ、その時初めてオレは人になった、初めて親に褒めてもらったんだ


そこからオレはずっと魔法を研究してきた、適性の儀を受け5属性の適性を授かってからずっと


周りからは化け物だの魔法に呪われた女だの好きかって言われてきたがそれでも良かった、魔法だけがオレの存在意義だから


成長すると家を出て、更に研究を続けた。研究していくと色々な魔法を発見した、理論的には誰でも使える無属性魔法も複数の魔法を組み合わせる技術も…


だが同時に孤独になった、皆オレを化け物扱いして近寄らなかった。強がっていたが、多分心は傷ついていたのかもしれない


研究してるうちに弟子も出来た、オレに教わろうとは中々物好きな奴だったが魔法の才能はずば抜けていた


オレが教えた事をどんどん吸収していきしばらく経ったあとエルシュラ国の城にある研究所の団長になった


忙しそうにしながら、だけど楽しそうに魔法を研究しているあいつを見ると自然とオレも嬉しくなった


だがある時あいつは勇者の仲間になると言うのだ、オレは止めた。弟子を危険な目にはあわせたくはなかったから


何度止めてもあいつの決意は揺るがなかった、最後に旅立つ時、もしも自分の身に何かあったらオレに研究所の団長を継いで欲しいと言ってきたんだ


最初は断ったが…あいつの悲しそうな顔を見ると頷くしかなかった


魔族との戦争は悲惨なものだった、オレはあいつの故郷のこのエルシュラ国だけはなんとしてでも守ろうとした。あいつの帰る場所を無くさないように


魔族との戦いがしばらく続いたあと、魔族達が退却していった、勇者が勝ったのだ


だが勇者は魔王と相打ち、他の仲間も死にあいつだけが帰ってきた、オレは…声をかけることが出来なかった。あいつは心が壊れていたんだ、あの戦いの中で


それから数年が経ち、国の復興も一段落した時…


あいつは死んだ…


自ら命を絶ったのだ、隣には1冊の本と遺書が置いてあった


遺書を読むと、自分が弱く、仲間が救えなかった後悔が書かれていた。そして最後の方はオレへの謝罪と団長の件をよろしく頼むと書いて終わっていた


オレは悔やんだ、あの時声をかけてやれば良かったと、でも遅かった。もうあいつは居ない…後悔しても遅いのだ


その後オレは頼まれた通り魔法研究団の団長になった

部下を取らないという条件で


オレは1人がいい、もうこれ以上後悔はしたくないんだ、だから魔法を教えるのも弟子をとるのもあいつで最初で最後なんだ、そう思っていた


ルーデルクが訪ねてくる、なんでも光の適性者が現れてそいつに魔法を教えて欲しいと頼まれる


すぐに断った、オレに教わっても不幸にしかならないと


だがルーデルクは貴方が教えて欲しいと聞かなかった

どうやら光魔法の必要魔力が多すぎて魔法を放つことが出来ないようだ。だからオレじゃないとダメらしい


オレからしちゃそんなものは知ったことではない、何度も断るがルーデルクは引き下がらない


とうとう研究費用をカットするとまで言い出した、それでは今の研究が出来ない。ムカつくが光魔法が使える間までという条件で了承した


そしてそいつが来た、名はリュートと言うらしい。まだまだ子供だ。こんな奴が勇者になるのか?なんかムカついたので体を調べようとしたら騎士のアリアに止められた


ちっ、だから騎士は嫌いだ。私は正義ですって顔をしてやがる


次の日あいつが教わりに来た、適当に無属性魔法を教えて放置した。まず出来ないだろう、あのエリーですら2ヶ月かかったのだ、あわよくば嫌気がさして先生を変えてもらおう


…オレを放っておいてくれ


それから1週間が経った、あいつは来ない。なんでも体力を鍛える訓練で無茶をしたらしい、オレとしてはどうでもいいがそれでも少し心配な様な気がする


リュートが来た、どうやら何ともないようだ。心配して損したので体を調べさせてもらった


体を調べて満足していたら、あいつが無属性魔法を使えたと言ってきやがった、信じられない。あんなに適当に教えて、それを初日で使っただと?


顔を見るからに本当の事のようだ、だとしたらとんでもない才能だ。まだ子供だって言うのに、下手をすればオレやエリーよりも…


頭を撫でてやるとリュートは少し照れていたが嬉しそうだった。エリーとリュートが重なる



ダメだ、こんなオレに教わるとリュートも不幸になってしまう…無属性魔法は教えたんだ次会った時に先生を変えてもらう様に言おう



それから5年が経ってしまった、何回も言おうとするが言い淀んでしまう、リュートと過ごす日々は悪くなかった


もしかしたらリュートなら不幸にならずに済むんじゃないかと思ってしまう


だがリュートはオレのことをどう思っているのだろう

心の中では化け物と思っているのだろうか?そう思うと何故か心が苦しい


いつものようにリュートが来た、心臓が高鳴る。それを誤魔化すように少しからかった


…リュートがオレを綺麗だと言ってくれた、女の扱いをしてくれた。心臓がうるさい、やっぱりオレはリュートの事を…


自分の気持ちに気づいてしまった、だけどオレといると不幸になってしまう…どうすれば?


いいや不幸にさせなければいいのか、エリーのように1人にはさせなければ…もう後悔はしない


今度は絶対に手離さないと決める、オレも前に進む時なんだ


そう決意し、気合を入れた





その時ふとエリーが微笑んでくれたような気がした







今回はレディッサの過去のお話でした

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