いずれ神の上に立つ者〜勇者から始まる冒険譚〜

第十六話

「くっ！だんだんスピードが上がってきてる」

いくら手加減してるとはいえ、ステータスの差もあってここまで押されることは無いはずなんだけどな、これはちょっとヤバいかもしれない

「はぁっ！」

「っ！もう完璧に僕の動きをマスターしてるみたいだね」

「ええ自分でもびっくりですよ、まさか僕がここまでやれるなんて」

「ふふ言っただろう？君は天才だってね」

「褒めすぎですよ、…それじゃあそろそろ終わらせましょうか」

「そうだね、名残惜しいけどそうしようか」

俺とロディ先生、向かい合い、そして同時に動く

「はああ！」

「うおぉ！」

ダガー同士が勢いよくぶつかる、何度も何度も…

そして先に限界がきたのは俺だった

「ぐっ…！」

身体が重い、全身が痛い。負けるのかここまできて！

「もう身体が限界の様だね、無理もない…今日初めて戦いを経験したんだ。さぁ終わりだ！」

くそ…何か、何か無いのか！あと少しなんだ、その何かがあればロディ先生に一撃を与えられるのに！

ちくしょう俺が魔法を撃てれば…

ん？魔法…？

そうか無属性魔法だ！今の俺なら…！やってみる価値はある！

「…」

手を前に出し、目をつぶる

「…？何をするつもりだ…？だけどもう遅いよ！」

ロディ先生のダガーが迫ってきてるのが分かる

「自分を信じろ…俺は天才だ、天才だと思い込むんだ…」

信じろ…！出ろ…出ろ…

その時本来自分では感じる事の出来ないはずの魔力を

ほんの少しだけ感じた様な気がした

「はああ！」

「っ！これは…！ぐうっ！」

手から見えない何かが放たれたあと、ロディ先生に命中し訓練所の壁へと飛ばされた

「で、でた…はは、やった…！…はっ！ロディ先生は?!」

すぐに壁の方に向かうとロディ先生が炎の壁で防いでいた

「先生…？うわこれ炎か！あちっ！」

「はぁ…はぁ…はは、やっぱり君は凄いな、まさか最後魔法を使うなんて。油断したよ」

「す、すみません…調整が分からず全力で撃っちゃいました…」

「いやいいさ、それより一撃を食らっちゃったし今回の手合わせは君の勝ちだ」

「っ！ありがとうございます！」

「ふふ、それとさっきはすまなかった。君には1度挫折を経験して欲しかったんだ。言い訳にきこえちゃうもしれないけどね」

「先生…いえ、そのおかげで強くなれたので気にしてないですよ」

「そうか…でも僕はリュート君を侮辱してしまった、先生失格だ」

「いえ、それでも僕はロディ先生に教えて貰いたいです」

「…リュート君は優しいな、なら君が良ければこれからよろしく頼むよ」

「はい！」

はは、先生はやっぱり良い人だったな。まぁ戦ってる時めちゃくちゃ怖かったけど、これで初日は終わりだ

あれ…安心したらなんか眠くなって…

「リュート君！」

「ロディ先…生…」

やばい意識が飛ぶ…

…

…

「はっ！知ってる様な知らない様な天井だ」

俺は一体…確かロディ先生と手合わせして勝ったんだっけ？…ああその後倒れたんだった

「初日からハード過ぎるよ…」

「失礼します」

入ってきたのはアリアさんだった

「アリアさん？どうしたの？」

「…！お目覚めになられましたか！リュート様！心配したのですよ！」

アリアに抱きしめられた、鎧を着てないみたいでラフな格好だから大きな胸に顔が埋もれる

「むご?!」

「リュート様全然目を覚まさないので、ずっと待ってたのですよ！よかった…ぐすっ…」

まって窒息しちゃう、今まさに永遠の眠りにつこうとしてるから！

「はっ！す、すみません」

「げほ、いや大丈夫です…むしろありがとうございます」

苦しかったけど初めて子供で良かったと思えま…

ゲフンゲフン

「それより僕はどのくらい寝てたんですか…？」

「1週間です…本当心配したんですからね」

1週間か…やべぇめちゃくちゃ寝てんじゃん、そりゃ結構無茶したけど

「そんなに…すみません心配かけちゃって」

「いえ、謝らなくてもいいですよ。それに悪いのは団長ですから」

アリアさんの目から光が消えた

「ひえ…」

「リュート様をこんなになるまで痛めつけた団長が悪いんですよ、そもそも4歳の子供にいきなり実践の訓練するなんて馬鹿げてます。何か挫折を経験させるためだとか言ってましたけどそんなの知ったことでは無いです。リュート様の綺麗な肌に傷をつけたという事実がある時点で死刑です。団長とはいえその罪は償わせなければいけないですね、どのような刑にしましょうか？溺死？焼死？斬首？ああでもリュート様のお気分が損なわれるかも知れませんから暗殺にしましょう。リュート様のためならどんな事でもやってのけます。そのかわりと言っては不躾ですが私の事を呼び捨てで呼んでくれませんか？別に深い理由なんて無いですからね、いや少しはありますけど。でもリュート様に呼び捨てで呼ばれたのなら私もリュート様を呼び捨てで呼んだ方がいいでしょうかいや。それはやりすぎですよね、すみません嫌わないでくださいね？もしリュート様に嫌われたら生きていけないかも知れません…ああリュート様許してください許してくれるのなら手でも足でも差し上げますからお願いしま」

「わ、わかった！わかったから！」

怖いよ！ヤンデレ怖いよ！めちゃくちゃ早口で言ってるじゃん！あと君の所の団長殺そうとしないで！手と足もいらないからね?!

「すみません…つい頭に血が上ってしまいました」

「とりあえずロディ先生の事は気にして無いですから何もしなくていいですよ…」

「リュート様がそう仰るのなら…」

「それとアリアさんの事は嫌いになんかならないですから安心してください」

「…！はい！ふふ」

アリアさんの顔に笑顔が戻った

ふう危なかった、ロディ先生と手合わせした時より危なかったかもしれない

「あ、あの…」

「ん？」

「よろしければ…わ、私には敬語じゃなくて普通に話してください」

顔を赤くし照れた顔でそう言うアリアさん

「あ、ああうん分かったよ。ええとアリア？」

「はい！」

パァっと明るくなるアリア

くっ可愛い…！ヤンデレだけど…！

「アリアも僕には敬語じゃなくていいよ？」

「いえ、リュート様に敬語以外を使うなんて恐れ多いです」

その目は決して揺るがないと言わんばかりの圧を放っていた

「そ、そうか分かった」

「はい」

「じゃあそろそろ皆に目覚めた事を伝えに行かなきゃ」

「分かりました、では私も着いていきます」

「うん行こうか」

1週間眠ってたし皆に心配かけたこと謝りに行かなきゃ