メダマちゃん

ある人の留守番電話

『急にごめん。出来るだけ早く家に来てくれないかな？

　熱帯魚がいなくなってるの、全部。

　ほら、ネットでメダマちゃんの出現情報が飛び交ってるでしょ？　わたし、釣りしないし関係ないと思うんだけど、魚が一匹もいなくなってるのが気味悪くて……

　他になくなった物とかなさそうなのに、魚だけいないの。

　忙しいのに、ごめんね……』

ピーーー

11月16日金曜日　午後7時15分

『何回もごめん。

　冷蔵庫の食材が減ってるの。炒め用の肉の残りと、焼こうと思ってた魚が……

　もしかして、昨日勝手に食べた？　そんな訳ないよね……何回もごめんね……』

ピーーー

11月16日金曜日　午後7時23分

『ねえ、何時に来れる？　何となく不安なの。誰かに見られてる気がするの。早く来て……』

ピーーー

11月16日金曜日　午後7時41分

『助けて！　やっぱりメダマちゃんだ！　さっき声がした！　110番したけど、話が通じないの！　信じてくれないの！　逃げようとしたけどドアが開かないの！　出られないの！　ねえ、聞こえるでしょ？『ハラヘッタ』てうるさいの！　頭がガンガンする！　ねえ、助けてお願い！　私も食べられるの？　熱帯魚みたいに？　ねえ、助けてよ！　野菜でもお菓子でもなんでもあげるから、助け……』

ピーーー

11月16日金曜日　午後8時32分

11/16(金)

午後8時50分頃、留守番電話を聞いた恋人が折り返し電話を掛けるが応答なし。

午後9時30分頃に恋人の部屋に到着。合鍵を使って部屋に入るも恋人の姿はなし。争った形跡はないが、食事を終えた食器類がそのままテーブルに残されていたことや、留守番電話に残されたメッセージから、事件の可能性が高いと判断される。