第9話 ♦夢の中へ
今日もまだ生き残ったと、家に帰り着いた瞬間に倒れ込む。
人生もセーブできればいいのに、間違ったと思ったときに戻ることができたなら、といつも思う。
「甘えるな」、「夢に逃げるな」という言葉が毒となって体に染み込んでいく。
体と脳が麻痺していき、次第に自分でじぶんに「これは甘えだ」「もっと頑張らないと」と暗示をかけて、悲鳴を押し殺して、自分は生存している。
吐き気を飲み込み、震えを無視し、体温の上昇を息を吐いて切り抜けるとき、
目の前がぐにゃりと歪んでも、平気なふりをして歩き続けているとき、
自分が死んでいるのか、生きているのか分からなくなる。
夢の中へ
避難しても許してほしい。逃げていると思わないでほしい。
自分を守るために、必要な「避難」なのだと、声を大にして言えたらどんなに楽だろう。
痺れた身体を引きずって、言葉にできぬ悲鳴を抱えて、今日もまた人混みの中に紛れ込む。
花束の詩集 暁 のち @forest0326iris
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