第5話 ♣雨の匂い

長靴を履いてドアを開ける。

休日の雨。

家の中まで漂ってくる匂いにつられて外に出た。

オレンジの傘を広げて雨を受け止める。

ポツポツと雨を弾く音がする。


傘は色があるものがいい。人混みの中で色とりどりの傘を眺めるのが楽しい。

透明な傘はすべてを映してしまう。隠していたいものだってあるのに。

土と草の湿っぽい匂い。

緑と茶の重い匂い。

懐かしくてしめやかで煙たい香り。


雨溜に広がる波紋が美しい。

木々が濡れてしなだれているのが艶やかだ。


傘を閉じてボタンを止める。手についたしずくを服の裾で拭った。

私は虹を探して歩き始めた。

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