『花金作品』 お題: 『矛盾』

皆木 亮

『矛盾』

「キミは…生物学的に矛盾している…。」

 そう……先生…。



 今日…初診しょしんの…。

 心療内科しんりょうないかの担当になってくれた…。

 この先生が話す…。




「でも…私…超えてしまうんです! 次元の壁を…!」

 私を否定する先生に…私は熱く語る…!




「しかしね…。人というモノはね…。


 男性と女性という…二つの性別に作られ…。

 その二つが協力しなければ…。

 新たな可能性の息吹が誕生しない様に作られている。


 だというのに…キミは…女性だというのに…。

 リアルの男性に心動かず…。


 アニメや漫画などの仮装世界の男性に心奪われている…。」

 そう…先生は…困り切った様な表情で…私を見る…。




「いけないですか…先生…?」

 思わず…身を乗り出し…先生に詰め寄る私に…。




「いや…それ自体が悪いとは言わない…。

 人は…アニメや漫画などを通して…。

 リアルでの男女の付き合い方を学ぶ事は多々ある事だからね。」

 そう言いながらも…。

 苦い顔の先生…。




「じゃあ! 何故ダメなんです…⁉

 私は…。とっても『トゥルーハート』で…。

 『彼ら』に…ぶつかってるだけなんですよ…ッ⁉」

 さらる私に…。




「仮装世界の者を好きになり…。

 その世界の者に恋し…。

 男女の恋心の在り方を学ぶのは良い…。


 人は…ジェンダーの壁を超え…。

 男性同士や…。

 女性同士で…。

 結ばれるモノも…確かに居るだろう…。」

 そう目をせ言葉をつむぐ先生に…。




「だったら何故…ッ⁉」

 何故…私の『彼ら』への愛を否定するのか…?

 と、問う私に…。




「だが…キミのは…。

 生産性が無いどころか…。


 生命に必要な成分を…。


 無為むいに大量に失う結果を出している…。


 それは…非生産的であり…。

 日々…生産的ないとなみをする様に作られた…。

 我々…人類の…在り方として…。

 生物学的に…矛盾していると…。

 私は…キミに…言わざるを得ない…!」

 閉じていた目を見開き…先生が強く告げる…。




「『アッチ』の世界の『アダム』と『アダム』たちに心奪われる事は…。

 そんなにいけない事なんですか…ッ⁉」

 なおも強く問う私に…。




端的たんてきに言おう…。


 とにかく…アニメや漫画を見て…。

 『アレ』な『男性と男性』の『いとなみ』を妄想し…。


 大量の『鼻血』を出さないでくれと…キミに頼んでいる…!」

 これが核心だと言わんばかりに…先生の語気ごきさらに強まる…。




「『無理』です!


 私…アニメや漫画を見るだけで…。


 どうしても…『アダム』と『アダム』たちの…。

 『アレ』な妄想が止まないんです!

 

 だからどうしても出ちゃうんです!

 『アレ』が!


 『通常の3倍』以上の勢いで…!

 あの『赤い奴』が出ちゃうんです…!


 止められないんです…!

 妄想が…!


 次元の壁を越えて…!

 向こうの世界に『イ』っちゃうんです…ッ‼」

 と、涙を流しうったえる…。




 その私の返答に…溜息ためいきく先生…。




 ここは心療内科しんりょうないか…。

 病んだ心の患者を救う病院…。


 だけど…私の『アレ』な方向に『病んだ心』は…。

 なおしてもらえそうに無かった…。

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『花金作品』 お題: 『矛盾』 皆木 亮 @minakiryou

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