サイコパスな僕が征く異世界冒険記 〜皇太子に生まれ変わっても殺人衝動が収まりません〜

水底 りゅう

第1話プロローグ的な何か

「おい、こっちにもお宝がたんまりあるぞ!」

「これで一生遊んで暮らせるなー!」



 ここまでは長い道のりだった。

 焼けるような暑さ、凍死するような寒さ、地を壊すかのような嵐が襲った。

 


 船が大破するたびに遭難に追い込まれ、何度も飢餓に陥った。百人いた仲間は何人も死に、最後に残ったのはわずか六人だけだった。



 そして遂に俺たちは見つけたのだ。

 この世の全ての海賊が探し求めた二つなぎの大秘宝ツーピースを。



 「いやーあの麦わら帽子のガキはかなり強かったなぁ」

 「団長、あの自称世界一の剣豪にも苦労しましたよ」

 「てめぇ、あれくらいで泣き言いいやがって。足技使いの方が手こずったぞ」

 「そいつは相性の問題ですよー」



 目の前には天まで届く程の金銀財宝に巨大な古代兵器が無造作に置かれている。この財宝があれば今後百年どころか数千年、数万年後まで生きていけるいや、この古代兵器があれば世界を人質にし、でき得る限りの贅を尽くすことができるかもしれない。



 「おい、てめぇらー運べ運べ!」

 「うひょひょひょー大漁、大漁」

 「うっしゃー!」

 「よっこらせー」

 「うきゃうきゃ、うきゃきゃきゃー」



 最後の貨物が船に運ばれようとした時、誰かのうめき声が上がった。



 「おい!何があったんだ?」

 「団長、それが、それが…」

 「どうしたんだー!」



 また一人また一人と胴体から首が離れ血飛沫が舞っていく。鮮やかに、そして流れるように。



 そして団長と呼ばれていた男も遂にその命を散らそうとしていた。


 「お、お前一体何が目的だってん、の、か…」


 そこには嬉しみに満ちたような、悔しさに悶えるような、理解ができないという様な、複雑な表情を浮かべた顔が五つ転がっていた。



 「くっくっくっ、海賊ごっこも楽しかったなぁー夢を叶えて死んでいくあの表情もなかなかに見応えがあったよ」



 その男は血で濡れた剣をしまい財宝が山のように積まれた船には目もくれず、笑い声をあげる。すると突如現れた光の中に身を委ねる。



 「「転生」」という言葉だけがそこに響いた。

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