顔をみせて

@chocolateparfait

第1話

新学期


クラス替え後の教室は、年に一度しか味わえない独特な雰囲気だ。

仲の良い人と同じになれば天国、嘘だろと疑いたくなるくらい知り合いがいないと地獄。もともとぼっちで存在感を消滅しているやつもいる。中学から変わらないその光景。


しかし、今年はいつもと違う。


君と言う存在がそうさせていたのは一目瞭然だった。


「え、あれ転校生?」

「でもあの席って…」

「うっそ、あの子?!」


皆の視線の先には一人の生徒がいた。


ロングヘアに透き通った髪、大きな瞳に長いまつげ。横顔から分かる高い鼻筋、控えめなピンクの唇。そして短めのスカートから伸びる白い肌。


こんな美少女、この学校にいたっけ?!?!


誰もがそう思っていた。


そう、本来ならその席には


相澤あいざわりん


が座っているはずだ。


昨年まではぶ厚い眼鏡に長めの前髪、スカートも作られた制服のままの長さで、休み時間はマンガを読んでいる所謂いわゆるオタクといった印象の子だ。


すると美少女が席を立ちこちらに向かって歩いてきて、僕の前で止まる。


「井口くん、ちょっと来て」


僕、井口いぐちわたるは驚いてきょとんとしていた。

すると腕を引っ張られ、廊下に連れ出される。


「あっ、ホームルーム始まっ…」


そう慌てていると、美少女は急にこちらを振り向き


「私、ずっと気になってたの」


そう言って人気のない廊下で突然抱きついてきた。


「ちょ、え、え、君は一体…」


気がつくと彼女の顔が近くにあった。眼を閉じてこちらに唇を向けている。


こ、これは…!!!

彼女の肩に手を置き、少しづつ距離を近づける。その可愛らしい顔は誰かに似ていた。


ゴクリ


意を決してそのピンクのその唇に自分の唇を重ねようとする。


ドキドキドキドキドキドキ


心臓が高鳴る。




その時




ドンッ




鈍い痛みが背中に走った。




ピピピピッ


ピピピピッ


ピピピピッ


「渉ー!今日から新学期でしょ〜さっきから目覚まし鳴ってるわよー!」


ベッドから落ちている自分に気付く。


「ゆ、夢かぁ…ビックリした…そうだよな、相澤さんがあんな可愛い訳がない…」

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