Bard -世界に嫌われた詩人の物語-
@lettytoukoubajaosoi
第1話 最悪な出会い
これはだいぶ前の物語だ。
私達のいる世界の端の端、そこには美しい自然と年中穏やかな気候を持つ小さな村があるとされた。その村には無くなる事のない食料と平和が存在しているとされ、それを見つけようと多くの人間が旅に出ていた。
この話の始まりは長年の探索も実を結ばず人々がその存在を疑うようになった頃、とある旅の途中の青年がその村を見つけ忌み子と呼ばれる少年と会うところまで戻る。
緑の旅装束を着て大きめの鞄を背負っている青年が自身の背以上があるであろう草をかぎ分け鬱蒼とした森を歩いている。この青年は前までは知的そうな見た目をしていた。しかし、数日前まで世話になっていた村をとある理由で追い出されたおかげで碌な水浴びもできず不潔でいた。
『あーついに自分でも臭いがわかる様になっちまった。…ったく追い出すにしろ前人未踏の木しかない森より川がある方向にしてくれよ』
彼が今いるのは地図の外でだれもその先に向かった事のない森だった。
『まぁだれも向かう事のない方向だから、暗に死んで下さいって事なんだろうなぁ。俺上手くやれてたはずなのにこんなものがあるからって…ほんと酷いよな』
青年はおおきなため息をつき、自身の胸に刻まれた刻印を見る。
彼の脳裏に苦い思い出がよぎる。
青年は追い出される前日にいい雰囲気になった村娘と一夜を過ごそうとしてこの刻印を見せたらその娘に逃げられてしまい、トントン拍子で村から追い出された…というものだ。
この刻印自体いつのまにか彼の胸についていたもので意味はわからない。疑問には思っていたが特に何も起こるわけもなく放置していた。しかしこの刻印のせいで追い出されたからには話も変わってくる。今、彼は理由を知りたいという気持ちで満たされていた。
『理由を教えてくれでも良かったよなぁ〜ただ、デテケ!とか納得出来ねぇよぉ〜だれか俺を納得させてくれーーー!!!』
『ッッッッ!』
彼が歩いてる先から何かの声が聞こえガサガサと共に離れていく。
『お、おい誰かいるのか!?待ってくれ!俺は怪しいやつじゃない、逃げないでくれ!』
青年は音を追いかける。この時点で罠かもしれないという判断は彼には出来ていなかった。全速で追いかける。すると背の丈以上の草の壁も無くなり開けた場所にでた。
『ハァーハァー、や、っと追いついた。だ、第一村人さん』
どうやら先は崖らしく同じく息の切らした子供がいた。
どうしよう凄く怯えてる…
『あ、あの言葉は分かるかな?怖がらせたよね?ごめんね?でも久々の人間で心が浮ついたんだ!許してくれるよね?』
今できる最大限の笑顔を向ける。僕は笑顔は素晴らしいものだと思ってる。言葉が伝わらなくてもコミュニケーションが取れるからね!
だがそんな事とは裏腹に子供はさらに怯えた顔になり、一歩下がった。
まだ混乱してるんだ!そう思い優しい笑顔でジリジリと子供に近寄る。それに合わせて子供も距離を取る。その時だった、いつの間にか崖端だった子供は足場を崩して下へ落ちていってしまう。
『あ、危ない!』
落ちてく子供の手をギリギリで掴めた。もう安心と一息ついたら
自分の倒れ込んでいる崖も崩れて落ちていってしまう。
どうにかこの子だけは…!
加速する景色の中子供を必死で抱きしめて下の木々へ落ちる。
『いっつつ…って無事か?!』
子供は無事だったが気絶していた。無事を確認したところで辺りを見回す、落ちた先は地獄でしたとかは嫌だ。
しかしそんなことも無く、左から木、木、泉、木、木…
『おおお!!水だ!やった!フオオオオオ!!』
久々に水をみた興奮で我を失った。そして鏡のような泉を覗く。そこで子供が逃げてしまった理由を知った。
『俺酷い顔してるな』
土で汚れ真っ黒になった顔は子供なら泣いて逃げ出すような恐ろしさを醸し出していた。
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