カードゲームは卒業したのにTCG学園に放り込まれたんだが ~イカサマ王と呼ばれた俺はカードゲームなんかしたくない~

ゼニ平

第01話 イカサマ王

 俺はカードゲームが好きだ。カードゲームをやっている人が好きだ。


 仲間と対戦したり、トレードしたり、パックを開けて出て来たカードのレアリティを見て一喜一憂したり、このカードが強いだの弱いだの言いながらデッキを組んだり。

 みんなで楽しく、仲良く、平和に。カードゲームをやれたら俺は何もいらない。


 ……だというのに。


「ユーマ選手。あなたを失格とします」


 中学3年の夏。うだるような暑さの中、カードゲームの全国大会の決勝の途中、俺は審判ジャッジに突然そう告げられた。


 対戦相手は、同じ年ごろの少年……だと思うのだが、なぜか西洋風のマスクを被っている仮面の男。はっきり言って不気味だし意味不明だ。


 ともかく2本先取の戦いのうち最初の1本取って、あと1本。

 応援してくれている仲間と、幼なじみと。自分を鍛えてくれた師匠のためにも負けられない。

 みんなの歓声を受けながら、このまま勢いに乗って勝負を決めようと気合を入れ直していた矢先のことだった。


 俺の失格がアナウンスされ、会場内にどよめきが起こる。


「ユーマが失格? なんで? イカサマ?」


「え、イカサマだって?」


 そう、イカサマだ。

 カードにしるしをつけたり、すり替えたり、盤外から引き込んだりといった、本来ルールを守って公平に対戦をするゲームにあってはならない、不正を働く行為。

 対戦相手だけではない。参加者全員を侮辱する行為だ。


「はっ? 去年のチャンピオンがイカサマしたって?」「まじかよ、クソだな」「てか、今年だけじゃないんじゃね? 去年もやってたんじゃねーの」「イカサマ野郎が!!」


 ましてや俺は前回大会の優勝者。そんな者が不正行為を行ったとなれば、その名声も、信頼も。天から地に落ち、歓声は罵声に変わる。


 そんな空気にとても耐えられなかった。


「待ってください! 俺は……俺は……!」


 必死に。声を枯らして。叫ぶ。

 だが、会場の空気は冷ややかで、ある者は蔑んだような。ある者はバカにしたような。

 そんな、冷たい目で壇上の俺を見ていた。


「帰れ!!」「出ていけ!!」「二度とカードゲームやるんじゃねぇ!!」


 イカサマを行った者の言う事などに耳を貸す人はいない。

 会場内が本来の熱気とは違う熱さを持つ中、ただ一人、対戦相手の男だけは不気味に微笑んでいた。


 この事件以降、みな俺の事を『イカサマ王ダーティキング』と呼ぶようになった。


 そして俺は、カードゲームをやめた。

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